こちらは「エリダヌス座」の方向約46億5000万光年先(赤方偏移z=0.441)の銀河団「MACS J0417.5-1154」の一部を拡大した画像。中央には弧状に大きくゆがんだ天体が写っていますが、これは銀河団の重力レンズ効果によって像がゆがんで見えている遠方の銀河のペアだといいます。


【▲ 銀河団「MACS J0417.5-1154」に現れた“宇宙のクエスチョンマーク”。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の「近赤外線カメラ(NIRCam)」で取得したデータをもとに作成(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Vicente Estrada-Carpenter (Saint Mary's University))】

この画像は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope: JWST)」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」で取得したデータをもとに作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています。


重力レンズ効果とは、手前にある天体(レンズ天体)の質量によって時空間がゆがむことで、その向こう側にある天体(光源)から発せられた光の進行方向が変化して、地球からは像がゆがんだり拡大して見えたり、時には分裂して見えたりする現象のこと。この画像の場合、MACS J0417.5-1154の重力が背後にある遠方銀河のペアの像をゆがめ、5つに分裂させています。全体では「?」の形にも見えることから、ウェッブ宇宙望遠鏡を運用するアメリカの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)は「Cosmic Question Mark(宇宙のクエスチョンマーク)」と表現しています。


【▲ 銀河団「MACS J0417.5-1154」に現れた“宇宙のクエスチョンマーク”(注釈付きバージョン)。遠方銀河のペアの像がA〜Eの5つに分裂して見えている。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の「近赤外線カメラ(NIRCam)」で取得したデータをもとに作成(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Vicente Estrada-Carpenter (Saint Mary's University))】

STScIによると、この遠方銀河のペアは宇宙の星形成が盛んだった約70億年前に存在していたもので、赤外線を捉えたウェッブ宇宙望遠鏡の観測データと紫外線を捉えた「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の観測データを組み合わせたところ、星形成領域の場所が明らかになりました。どちらの銀河も広い範囲で星形成が起きていて、あまり崩れた形態をしていないことから、銀河どうしの相互作用が始まった段階を観測しているとみられています。


冒頭の画像はSTScIから2024年9月4日付で公開されています。


【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の「近赤外線カメラ(NIRCam)」で観測された銀河団「MACS J0417.5-1154」。冒頭の画像は中央付近を拡大したもの(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Vicente Estrada-Carpenter (Saint Mary's University))】

 


※記事中の距離は天体から発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています。


Source


STScI - NASA's Webb Reveals Distorted Galaxy Forming Cosmic Question Mark

文・編集/sorae編集部