[9.5 W杯最終予選 日本 7-0 中国 埼玉]

 6-0の大勝ムードで試合が終わろうとしていた後半アディショナルタイム5分、日本代表はMF久保建英(ソシエダ)が鮮やかな一撃でゴールラッシュを締めくくった。

 この日の久保は攻撃陣のサポート役としてすでに2アシストを記録していたが、ボレーシュートや直接FKが枠を外れるなど得点はなし。「途中から得点の掲示板みたいなので、あれ俺の名前ないなって……」。それまでは黒子役に徹していた印象もあったが、最後は自らゴールを狙いに行った。

 周囲もその気持ちは理解していた。左に流れたMF伊東純也はシュートの選択もあった中、懸命に呼び込んだ久保にパス。「伊東選手も『打とうと思ったけどタケだから』って言ってくれた。そこは嬉しかったですね」(久保)。最後は「ファーストタッチで相手の前に入れたので余裕を持ってシュートを狙うことができた」と完璧なキックでネットを揺らした。

 A代表では今年1月のアジア杯バーレーン戦以来3試合ぶりの得点。出場時間の大半で攻撃の突破口を開く役割を担い、第2次森保ジャパン最多の10アシストという結果を残しながらも、これで新体制4点目と着実にゴールの数も増やしてきた。

 その先には世界的スターとしての立場を見据えている。試合前日の4日には世界年間最優秀選手を表彰する「バロンドール」のノミネート選手が発表。その中には女子でMF長谷川唯が2年連続の候補入りを果たしたものの、日本人の男子選手は久保を含めて名を連ねることができなかった。

「そろそろ来年、再来年あたりには欲を言えばあの30人の中に入りたいかなと思いますね。それこそ女子では長谷川唯選手が2年連続で入っていますし、あそこに男子も、僕も含めて食い込んでいける時代になっていると思うので」

 今年7月には同賞を主催する『フランス・フットボール』誌の単独インタビューを受けるなど、注目に値する選手になっているのは確か。ただ、そこからもう一つ壁を打ち破っていくためには、日本代表とラ・リーガの両方でさらに結果を積み重ねるしかない。

「それこそ圧倒的な2強(メッシとC・ロナウド)も(ノミネート選手の中に)いなくなりましたし、寂しい気持ちもしますけど、僕らみたいな伸び代ある若手にはチャンスだと思うので、どんどん数字を残してあそこに選ばれれば。去年のラ・リーガのライバルもたくさん選ばれているし、レベル的には何か劣っていると思わないので数字やインパクトを重視していけたらなと思います」

(取材・文 竹内達也)