新型コロナ変異株「KP.3」が猛威振るい“第11波”到来、再び全国で感染者が増加中
新型コロナウイルスの感染者が全国的に増加していることが、厚生労働省が発表した統計で明らかになりました。1定点あたりの感染者数は前週の1.39倍に増加しており、9週連続で増え続けています。この内容について中路医師に伺いました。
≫【イラスト解説】新型コロナ変異株「KP.3」の特徴・夏に“第11波”が来る理由監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
新型コロナウイルスの感染状況は?
新型コロナウイルスの感染者数が増加傾向にありますが、現在の状況について教えてください。
中路先生
2024年7月1日~7月7日までの1週間に、全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナウイルスの患者数は、前週から1万4147人増えて3万9874人となりました。また、1医療機関あたりの平均の者数は8.07人で、前週の約1.39倍となりました。去年の同じ時期は、1医療機関あたりの平均患者数は9.14人だったので去年より感染者数は少ないですが、過去9週連続で増加しており注意が必要な状況です。
1定点あたりの患者数を都道府県別に分析すると、沖縄県が29.92人で最も多くなっています。次に多くなったのが鹿児島県で23.13人、次いで宮崎県が19.74人、熊本県が18.24人、佐賀県が16.31人などとなっており、 全ての都道府県が前週より増加しています。
こうした状況から「流行の第11波が到来したのでは?」という声も上がり始めていますが、林官房長官は「過去の状況を踏まえると、一定の感染拡大が夏の間に生じる可能性がある」と警戒感を示しています。さらに、「政府としては国民の皆様に対しまして、せきエチケットや手指の消毒などの感染対策を周知しておりまして、引き続き先々の感染動向を見据えながら適切な感染対策に努めております」と対策について説明しています。
流行している変異株「KP.3」とは?
感染が拡大している新型コロナウイルスですが、最近は「KP.3」という変異株の感染が増えていると聞きます。KP.3について教えてください。
中路先生
KP.3株は、2023年12月~2024年1月にかけて流行をしていたJN.1株の流れを受けた変異株です。KP.3株については、東京大学医科学研究所システムウイルス学分野の研究グループがウイルス学的特性を明らかにしており、学術誌「The Lancet Infectious Diseases」で研究成果が公開されています。研究グループによると、KP.3株は親系統株であるJN.1株と比べて、自然感染やワクチン接種によって得られた中和抗体に対して高い逃避能を持つことがわかっています。また、JN.1株よりも高い実効再生産数を持つ、つまり特定の状況下において、1人の感染者が生み出す二次感染者数の平均が高いことも明らかになっています。
KP.3株がどれほど流行しているかについて、東京都の新型コロナウイルス感染症情報によると、2024年5月の時点でKP.3株が70.4%となっており、6月中旬には、KP.3株の割合は81.1%となっています。
新型コロナウイルスの感染状況への受け止めは?
新型コロナウイルスの感染状況への受け止めを教えてください。
中路先生
インフルエンザウイルスは冬がピークであることに対して、新型コロナウイルスは夏と冬の二峰性のピークを呈します。今年も夏のピーク、つまり「第11波」が来たと考えることができ、その主役はKP.3株となるでしょう。
日本では、春に新型コロナウイルスの定期接種がおこなわれなかったことも加わり、ある程度の感染拡大の波が来ることが指摘されています。予防対策としては、換気をすることや、感染リスクのある状況では、少なくともマスクをすることが重要です。インフルエンザに感染しても後遺症は残りませんが、新型コロナウイルスに感染した場合は後遺症が問題となります。「感染後、早期に抗ウイルス薬を内服することにより、ウイルス量を低下させることが後遺症予防に有効である」という報告があります。
まとめ
新型コロナウイルスの感染者が全国的に増加し、7月1~7日に報告された新型コロナウイルスの新規感染者数は3万9874人、1定点あたり8.07人になっていることがわかりました。全ての都道府県で増加しており、今後も警戒が必要です。
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