公式戦21試合ぶりのゴールを挙げた鈴木章。右足のアウトサイドにかけて縦に落とす、見事なシュートだった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 7月10日、湘南ベルマーレは天皇杯3回戦で東京ヴェルディとホームで対戦し、1−0で勝利した。

 チームを4回戦へ導く決勝点を挙げたのは、FW鈴木章斗だった。65分、右サイドからのクロスのこぼれ球を押し込みネットを揺らすも、オフサイドで取り消しに。しかし直後の66分、敵陣のペナルティエリアの左角付近から右足を振り抜くと、シュートは鋭い軌道で飛び、ゴールに吸い込まれた。

 試合後、鈴木章はネットを揺らしたふたつのシーンをこう振り返った。

「オフサイドになったところは、もし自分の位置だったら修正しないといけません。ゴールになった場面はインフロントで巻いたシュートではなく、アウトサイドにかけて縦に落とすイメージで打ちました。良いコースに飛んでくれました」
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 鈴木章はシーズン序盤に先発の座を勝ち取り、2節の京都サンガF.C.戦(2−1)で決勝ゴールを決めて湘南を今季初勝利に導くと、4節の浦和レッズ戦(4−4)でも2得点をマーク。類稀なシュートセンスを活かし、チームの得点源となっていた。

 だが、4月22日の練習中に左膝窩筋損傷を負い、離脱を強いられた。怪我は2週間程度で完治し、すぐに戦線復帰したものの、コンディションを本来の状態に戻すまで苦労した印象だ。

 本人は「怪我は言い訳にできない」と前提を語りつつ、東京V戦での公式戦21試合ぶりのゴールにいたるまでの苦労を明かした。

「リーグ戦ではルキ(ルキアン)と(福田)翔生が好守で結果を残していて、スタメンも少なくなっている。そのふたりに負けたくない気持ちは常に持っています。ここまでのゲームを振り返ると、自分のなかでも“ちょっと違うな”というか、思い切りやっているつもりでも物足りなさがある試合が続いていた。最近は“またイチから頑張ろう”と、新しい自分を作るような気持ちで取り組んでいたので、今日は結果につながってよかったです」

 鈴木章が話した通り、近頃のゲームではボールタッチが大きくなったり、守備のスライドが遅れたりと、流れの中でのプレーで精彩を欠く場面が散見した印象で、FWのライバルであるルキアンや福田翔生にスタメンの座を空け渡す試合も少なくなかった。

 ただし、東京V戦の鮮烈なゴールは、苦しいトンネルを抜け出すには十分な一発だったと言える。苦難の時期を過ごした20歳のストライカーは、天皇杯での躍動をリーグ戦につなげられるか。7月14日の第23節・ジュビロ磐田戦にも注目だ。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)