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東京は約60万円、熊本は約36万円と地域差が大きい出産費用。政府は、2026年度からの保険適用に向けて検討に入りました。格差をなくすのが目的の1つですが、出産育児一時金をなくす影響や、多様な出産ニーズにどう応えるかなどの課題もあります。

■地域や施設の「格差」なくす狙い

藤井貴彦キャスター
「政府は少子化対策の一環として、再来年度からの出産費用の保険適用に向け、検討に入りました。26日に厚生労働省などによる初めての会議が行われましたが、なぜ保険適用が検討されているのでしょうか?」

小栗泉・日本テレビ解説委員長
「出産における地域や施設の格差をなくすため、というのが大きな目的の1つです」

■「実質自己負担なし」とするよう検討

小栗委員長
「現在の出産費用はどうなっているのでしょうか。いわゆる自然分べんは、病気やけがの治療ではないとして、保険は適用されません」

「厚労省によると、費用は全国平均で48万2294円(2022年度)。ただ、医療機関ごとに自由に価格を設定できるので、最も高い東京都は60万5261円、最も低い熊本県は36万1184円と地域差も大きくなっています」

「そこで政府は2026年度をめどに出産費用に保険を適用し、さらに3割の自己負担分も別途補助することで、『実質自己負担なし』とする検討を始めました。これによって、地域の格差をなくすというメリットにつなげようということです」

■出産育児一時金の扱いと課題は?

藤井キャスター
「一方で、今は政府から出産育児一時金が出ています。これはどうなるのですか?」

小栗委員長
「現在、出産育児一時金が50万円支給されていますが、政府はこれをなくし、その財源を保険適用や補助に充てようとしています。そのため、課題も見えてきました」

「例えば、50万円より安く出産できる病院の利用者は、一時金の余ったお金をミルクやオムツ代などに充てられましたが、それができなくなる可能性があります。26日の検討会でも『一時金の残りを他の費用に充てていた人はどうなるのか』という意見もありました」

■多様な出産ニーズにどう対応?

小栗委員長
「もう1つの課題が、多様なニーズに応えられるのかということです。無痛分べんについては、保険診療になるのか自己負担になるのか、まだ見通しは立っていません」

「こうした状況で、都内のある産婦人科医は『保険になると、医療機関としてはもうけが出づらい。東京だと人件費なども高く、経費がかかるので、つぶれる病院も出るのではないか。そうなると患者の選択肢も逆に狭まることになる』と話していました」

「今回、政府は出産を『社会全体で支える』としていますが、出産には多様なニーズがあるのも事実です。それをみんなが納めた保険料でどこまでをカバーするのか、線引きは難しいです」

板垣李光人さん(俳優・『news zero』水曜パートナー)
「正直、まだ実感がないということもあり、子どもを持つ上でどれぐらいお金がかかるのか、どんな制度があるのか、調べたことがなかったです。ただ今後、僕たちの世代に大きく関わってくる議論なので、注目していかなくてはいけないなと思いました」

藤井キャスター
「出産には多様なニーズがありますから、『これなら安心して産みたい』と思える場所をどう整えるのか。少子化対策のためなら、保険診療と自己負担を組み合わせて無痛分べんや産後ケアのニーズにも応えられるような選択肢を作ってもらいたいと考えます」

(6月26日『news zero』より)