AMDの最高経営責任者(CEO)であるリサ・スー氏がテクノロジーアナリストのベン・トンプソン氏のインタビューに応じ、IBMやAMDなどこれまでのキャリアを通じて関わったゲーム機のプロセッサなどについて語りました。

An Interview with AMD CEO Lisa Su About Solving Hard Problems - Stratechery by Ben Thompson

https://stratechery.com/2024/an-interview-with-amd-ceo-lisa-su-about-solving-hard-problems/



スー氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)で電気工学の博士号を取得した後、Texas Instrumentsでキャリアをスタートしました。その後スー氏はIBMへ転職し、12年の勤務の中でCEOのルイス・ガースナー氏の技術アシスタントやPlayStation 3のCellプロセッサの開発指揮を担当。Freescale Semiconductorの最高技術責任者を経て2012年にAMDへ入社し、2014年よりAMDのCEOを務めています。

PlayStation 3に搭載されたCellプロセッサはソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)、ソニー、IBM、東芝の4社で開発されており、スー氏はIBMの代表でした。Cellプロセッサは並列化に重点が置かれており、1つの汎用(はんよう)コアと7つのシンプルなプロセッサコアを備えたヘテロジニアスマルチコアを採用することでチップ全体のスループットを当時としては驚異的な水準へと引き上げました。

しかしアーキテクチャの複雑性によりゲームの開発や移植の難易度が上がった影響で、任天堂の安価なWiiや扱いやすい北米市場のXbox 360を相手に苦戦。開発者がハードウェアの扱いに習熟した後はPlayStation 3でしか表現できない高いグラフィック性能を売りにするゲームが登場したものの、PlayStationシリーズの中で売上はあまり伸びませんでした。



インタビューの中で、トンプソン氏は「PlayStation 3に搭載されていたCellプロセッサは驚異的だったものの、PlayStationシリーズの中で一番失敗したハードウェアとなったことについて、その経験から何を学びましたか」と質問。

PlayStation 4および5ではAMD製の汎用プロセッサが採用されており、スー氏はPlayStation 3以降ずっとPlayStationシリーズと関わっていることに触れた上で、「Cellプロセッサは非常に野心的なものだったが、ビジネス面では間違いなく成功だった」と振り返りました。

トンプソン氏が「画面が高画質化してHDへ移行する際にアセット作成コストが大きく増加したことや、ゲームエンジンが登場して多数のプロセッサをサポートする難易度が低下したことでゲーム制作時に複数のプロセッサをサポートすることが一般的になった」と分析し、「開発者たちはCellに対応するコストを払わずに、ただCellで実行したかったわけですよね」と述べると、スー氏は「後から振り返ってみるとプログラミングのしやすさは非常に重要だった可能性がありますね」と述べました。

また、スー氏はPlayStation 4および5へAMDがプロセッサを供給している点について、「ハードウェア面で毎回新たな飛躍を遂げることができた事について非常に誇りに思っている」とのこと。



2000年代に登場したPlayStation 3やWii、Xbox 360にはPowerPCプロセッサが搭載されていましたが、2013年に登場したPlayStation 4およびXbox oneにはAMD製のCPUやGPUが搭載され、その後のシリーズにもAMD製品が採用されており、スー氏の方針の正しさを伺うことができます。

元のインタビューではさらにAIの発展に伴う影響やNVIDIAとの競争について語られているので、気になる人は確認してみてください。

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