故・郄田賢三氏の遺作となった衣裳による、東京二期会オペラ『蝶々夫人』を上演 演出は宮本亞門
2020年10月新型コロナウイルス感染による合併症で惜しくもこの世を去った世界的デザイナー郄田賢三氏。公益財団法人東京二期会は、郄田氏の最後の作品となった衣裳によるオペラ『蝶々夫人』を、2024年7月18日(木)~21日(日)の4日間、東京文化会館大ホールにて開催する。
東京二期会オペラ劇場7月公演『蝶々夫人』トレイラー映像公開!
オペラ『蝶々夫人』は、日本の長崎を舞台とした感動の名作。イタリアオペラを代表する大作曲家ジャコモ・プッチーニの傑作のひとつで、1904年ミラノ・スカラ座で初演された。時代は明治初期。没落した藩士の娘・蝶々さんとアメリカ海軍士官・ピンカートンとの悲恋が描かれる。日本民謡の旋律などが随所に取り入れられた色彩豊かなプッチーニの音楽は、とてもドラマティックかつ抒情的で、オペラ初心者の方でもなじみやすく楽しむことができる。イタリアオペラにして、日本の文化風土との融合を豊かに感じられる貴重な作品だが、同時に、その物語のテーマは普遍的で、蝶々さんたちの、愛を信じることの強さと苦悩には、多くの人が深い感動を覚えるだろう。
衣裳:郄田賢三氏 (C)MASARU MIZUSHIMA
郄田氏は、生前「『蝶々夫人』は私によって憧れのオペラ」「“蝶々さん”でオペラの真の魅力を知った」と語ってた。その衣裳デザインが初めて舞台に降り立ったのは2019年10月東京。ミュージカル、ストレートプレイだけでなく、オペラ演出においても、ドイツ、オーストリア、フランス、アメリカとグローバルな活躍をみせる宮本亞門の演出で、郄田氏のほか世界的クリエイターが集結して、ワールドプレミエ(新制作世界初演)を迎え、大きな評判を呼んだ。
2019東京公演写真 撮影:三枝近志
2019東京公演写真 撮影:三枝近志
2019東京公演写真 撮影:三枝近志
その後、2022年4月には、ドイツの名門オペラハウス、ゼンパーオーパー・ドレスデンで欧州プレミエ、翌年6月にはサンフランシスコ歌劇場で北米プレミエが果たされ、各地で絶賛を浴びた。そして、2024年7月、再び東京に。本公演の演出は、宮本亞門。指揮は、東京フィルハーモニー交響楽団桂冠指揮者のダン・エッティンガー。東京二期会のキャストも、全世界で100公演以上にわたり蝶々さん役を重ねてきた国際的ソプラノ大村博美の題名役をはじめ万全の布陣で、この度の凱旋公演をおくる。
演出:宮本亞門
指揮:ダン・エッティンガー (C)Froehlingsdorf
【ものがたり】
舞台は長崎。港を見下ろす丘の上に十五才の少女、蝶々さんの家があった。没落した武家の娘である蝶々さんは、今は芸者として暮らしていた。そこに、若いアメリカ海軍士官ピンカートンが現れ、蝶々さんに優しく愛を語った。辛い境遇にいた蝶々さんは、救われる気持ちで彼に惹かれて、二人は結婚式を挙げるのだった。
やがてピンカートンは日本での配属を終えて帰国する。蝶々さんはピンカートンの帰りを信じて待っていた。そして、三年の月日が流れた……
キャストコメント
■蝶々夫人役:大村博美
大村博美
2019年の初演の時の、公演後の関係者全員の輝く笑顔を昨日の事のように思い出します。大好きな賢三さんの唯一無二の、美しく可愛く気品ある衣裳を身に着け、亞門さんの斬新な演出で、また再びこの蝶々さんができるのを心から嬉しく光栄に思います。今回は東京公演の後、賢三さんデザインの緞帳のある姫路のホールでも公演できることも楽しみです。天国から賢三さんも喜んで応援してくださる事でしょう!
■蝶々夫人役:郄橋絵理
郄橋絵理
敬愛する役である蝶々さんを、東京二期会の公演で出演させていただくことになり大変嬉しく思います。15歳の女の子とは思えない蝶々さんの神聖な言葉の数々は、何度歌っても心が震えます。世界各地で上演され東京へ帰ったこの熟成されたプロダクションで、凛とした女性を生き抜きたいと思います。ぜひ会場で、生の息遣いをご体感ください!
■ピンカートン役:城 宏憲
城 宏憲
理想のピンカートン像を求めて、この役を演じる時は常に自分に向けて「これで良いのか?」と問いかけてきました。その豊かさ、無邪気さ、そしていつも頭を悩ませるのが愚かさの表現です。今回は、宮本亞門さんが描く、また新しいピンカートン像に触れる事が出来ます。これまでの舞台の経験と合わせて、まるで星条旗で全身を包まれている様なオーラを放つ、より強烈な若きアメリカ人士官を作っていきたいと思っています。
■ピンカートン役:古橋郷平
古橋郷平
東京二期会で『蝶々夫人』ピンカートン役をさせていただくのは、2017年以来の2回目になります。その時演出していただいた栗山昌良先生はお亡くなりになってしまったので、もう二度と先生の舞台を経験できないと思うと、本当に貴重な経験をさせていただいたのだと感謝しています。今回は宮本亞門さんの演出ということで、宮本亞門さんとは、今回が初めてご一緒させていただきますので、楽しみにしております。共演者の皆さんと素晴らしい舞台を創れたらと思います。