歩道によく店の看板が置いてありますが、実は違法だと聞きました。通報していいですか? どうして取り締まらないのですか?

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日常にあふれる「道路法」

 道路に沿って、いろいろな店が商売をしています。
 
 多くの店では客を呼び込むため、それぞれ店が看板を出していて、中には歩道にメニューの立て看板や、電飾スタンドを置いているところもあります。
 
 じつはこの「歩道上の看板」には、法律に関わる微妙な問題があるといい、気を付ける必要もあります。どういうことなのでしょうか。

店先の看板は、歩道上に置かれていることも多い(画像:写真AC)。

 道路上に電柱を立てるなど、道路の敷地内に「道路としての機能」以外のものを置くには、道路管理者に対して「道路占用許可」を受ける必要があります。

【画像】えっ…!これが「罰金1億円」の恐ろしい警告看板です(30枚以上)

「道路占用」の規定は道路法第32条にあり、郵便ポストや公衆電話、ベンチのほか、地下街や水道管、電線など、地中・地上にかかるものも道路占用許可が必要となってきます。

 当たり前ですが、道路占用許可が「不許可」、つまり申請しても却下された場合、道路上にそのモノを置くことはできません。

 許可が無いまま道路上をモノで占拠している場合、罰金が課される可能性もあります。道路法102条には「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」との記載があります。

 では街角にあふれる「歩道上の看板」は、店が許可を受けているかというと、実は簡単な話ではありません。多くの自治体では「道路上への商品置き場、のぼり、看板などは許可できません」という方針だからです。

 たとえば道内の国道を管轄する国土交通省 北海道開発局は、Webサイト上で「道路の路面に直接置くものは、許可できません」とはっきり書いています。その理由について、

「道路、特に歩道は歩行者が通行するためのものです。当然、お年寄りや小さな子供、体の不自由な方も通行します。歩行者が安全に通行できる唯一の場所が歩道です。

 限られた歩道の幅を狭める個人のための物件は、通行者の安全を脅かすものですから許可することができません」としています。

 しかし、ごく日常風景として、歩道上には至るところに看板が見受けられます。なぜそれらが許されているのでしょうか。また、通報したらただちに撤去されるのでしょうか。

でも街中で見かける…その理由は?

 地方自治体で道路管理に携わっていたOBは、「そもそも法律とは、社会の秩序を保つために作られるものだという背景があります」と話します。

「誰かが困ったり、苦しんでいる状況が起きていなければ、そもそも社会は法律を必要としないのです」(道路OB)

 道路OBによると、道路法第32条の一般的運用としては、明らかに交通を阻害して、著しい迷惑となっている場合、あるいは潜在的な危険があったり、社会問題を生みかねない物件があった際に、「言うことを聞かない持ち主に対して強く是正を求めるためのバックボーン」として用意されたものだといいます。

 それゆえ、一般的には道路法第32条を「完全徹底」することはなく、その立場によって現在の街の賑わいが保たれているといいます。

 もちろん、普段が平穏だからといって、大事故や社会問題が起きてしまってからでは手遅れです。そのため、道路管理者は基本的に毎日、管轄の道路をパトロールしています。そこで「これは危ないだろう」という案件があれば、迅速に持ち主に改善するよう要請するとしています。

 もし危険な立て看板を放置し、そこで事故が起きてケガ人が出たりすれば、「見逃していた行政にも責任がある」として、道路管理者に莫大な賠償責任が発生しかねません。それを防ぐため、道路管理者は決して立て看板類を放置しているわけではなく、きちんと危ないかどうかを見極めているのです。

 そして持ち主に改善要請した際に「うるさい。お前に指図される言われはない。他にも看板置いている店はあるだろう。それを全部無くしてから来い」などと言って指示に従おうとしない場合、いよいよ最後の手段が道路法102条の出番で、刑事告訴となるわけです。

 もちろん、法律は法律ですので、道路管理者の担当者が「法律徹底論者」だった場合、管轄の道路沿線からこうした立て看板類が「一掃」されることもあり得ます。

 しかし、そうだとしても「案件をすべて対応するのはかなりの負担であって、指導がなかなか徹底できていないのも実情」(別の道路OB)といいます。

 もっとも、あくまでそれを行うのは法に従って職務を行う道路管理者側のみです。私たち一般市民が勝手に「天誅」「法律の代執行人」として、街角の看板を蹴とばしたり、持ち主に危害や脅迫を加えることは許されていません。それらには別途、刑法や各種条例などによる罪に問われる可能性があります。