Microsoftが中国に住む数百人の従業員をアメリカや同盟国に移転させようと試みていることが判明
アメリカと中国の対立が深まる中、Microsoftが中国を拠点とする従業員数百人に対し、アメリカやその他の同盟国に転勤するオファーを申し出ていたことを、経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルが報じました。
Exclusive | Microsoft Asks Hundreds of China-Based AI Staff to Consider Relocating Amid U.S.-China Tensions - WSJ
Microsoft asks some China staff to relocate amid Sino-US tensions | Reuters
https://www.reuters.com/technology/microsoft-asks-hundreds-china-based-staff-relocate-amid-us-china-tensions-wsj-2024-05-16/
Microsoft offers relocation to hundreds of China-based AI staff
https://www.cnbc.com/2024/05/16/microsoft-offers-relocation-to-hundreds-of-china-based-ai-staff-.html
ウォール・ストリート・ジャーナルは、Microsoftが中国に住みクラウドコンピューティングおよびAI事業に携わる従業員に対し、国外への転勤を検討するよう求めたと報じました。
事情に詳しい関係者によると、国外移転のオファーを受けたスタッフの大半が中国国籍であり、転勤先はアメリカやアイルランド、オーストラリア、ニュージーランドといった国々だとのこと。オファーを受けたのは約700〜800人程度で、従業員は2024年6月上旬までに決断するよう求められているそうです。スタッフはこのオファーについて、「この移転がクラウドコンピューティングにおけるMicrosoftのグローバルな野心を強化し、さまざまな場所におけるAIエンジニアのニーズを満たすために役立つ」と、Microsoftから聞かされたと関係者は述べています。
Microsoftの広報担当者はロイター通信の問い合わせに対し、「社内に機会を提供することは、私たちのグローバルビジネスを管理するための一般的な慣行です。このプロセスの一環として、私たちは一部の従業員に任意の社内異動の機会を提供しました」と回答。オファーを与えた従業員の数には答えませんでしたが、Microsoftは引き続き中国市場にコミットして事業を継続していくと述べました。
Microsoftはその他のアメリカの大手テクノロジー企業と比較すると、中国と歴史的に密接な関係を築いてきました。たとえば、Google検索は中国国内で使えませんが、MicrosoftのBing検索は中国でもサービスを維持しています。また、中国ではFacebookやYouTubeといったSNSやネットサービスが使えない一方で、MicrosoftのWindowsやOfficeソフトは中国で大きなユーザーベースを抱えています。
さらに、アジアの研究拠点であるMicrosoft Research Asiaのオフィスが北京と上海にあり、中国で最も優秀なAIおよびテクノロジーリーダーの育成にも貢献してきました。記事作成時点では、Microsoftはアジア太平洋地域の研究開発グループで約7000人のエンジニアを雇用しており、そのほとんどが中国に拠点を置いているとのこと。
ところが近年はアメリカと中国の間の緊張が高まっており、AI関連アプリケーションの開発に必要な高性能チップの中国への輸出を制限しているほか、半導体開発に関する中国への輸出規制やサービス停止に協力するよう日本などの同盟国にも働きかけています。
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こうした2国間の対立は両国の企業にさまざまな影響をもたらしており、今回のMicrosoftのオファーも、一連の動きに対処するためのものとみられています。業界のアナリストによると、トップクラスのエンジニアリング人材が世界的に不足している中で、中国のAIへの野心に間接的な悪影響を及ぼす可能性があるとのことです。