5月10日(金)、お笑いタレント大竹まことがパーソナリティを務めるラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・月曜~土曜13時~15時30分)が放送。講談社現代新書から発売中の『正義とは何か』を著した、一橋大学名誉教授の森村進がゲストに出演。本の内容について、正義とはなにかを伺った。

大竹「ちょっと私には難しい本でございました。僕たちがよく知っているのは、マイケル・サンデルさんの講義、『「正義」の話をしよう』とかですが、森村さんはサンデルさんの意見だけだとちょっと方向が見えづらいんじゃないかと、おっしゃっていますね」

森村「そうですね」

室井佑月(パートナー)「分かる! ちょっとムカッとくるって言うか、違うな、みたいなところがあったもん」

大竹「この本の目次を見ると、序章のあとにいろんな哲学者の章があります。プラトン、アリストテレス、ホッブズ、ロック。それからヒューム、スミス、カント、ロールズ。カントはほんのちょっとだけ聞いたことがある、ぐらいなんですが。いろんな人が正義について哲学的なことをおっしゃっていますが、森村さんは1つだけの意見だと色鉛筆の1本だけを見ることになるんじゃないかと」

森村「そうですね。いい比喩だと思います」

大竹「そうですか、ありがとうございます。お礼を言っておきます(笑) 色鉛筆は全部の色をまとめて俯瞰しないと見えてこない、こういうふうに先生はおっしゃっています」

森村「比較対照することで、それぞれの説の特徴がよく分かってくる、というのが私の考え方ですね」

大竹「マイケル・サンデルさんの考え方に、注文をつけてるのは一体どういった点に、ちょっと不透明なところがあるとおっしゃってるんですか?」

森村「サンデルの考え方は、いわゆる共同体主義という考え方で、それ自体に私はあまり賛成しないわけですけど、その点はむしろ二次的なもので。むしろ、ロールズ以降の最近半世紀ぐらいの正義論ばかりを中心に考えていて、それ以前のもっと古典的な正義論をあまり重視していないんじゃないか、というのが私の疑問ですね。この本にはあまり書いてなかったんですが、現代アメリカの問題ばかり取り上げて、ということも1つの不安でした」

大竹「なるほど…少し分かんなくなってきました」

室井「知らないもんね、私たちね」

大竹「お前、よくそんなに元気に話せるな。それで私たちの日常から、この正義っていう問題について、どういうふうに寄り添っていけばいいっていうか、アタックしていけばいいっていうか」

森村「今、私が言ったサンデルやロールズの考え方というのは、何よりもまず政治的正義というものが第一であって、社会全体がどういう目的を目指すべきか、社会全体はどういう構造をしているべきか、という非常にマクロレベルから考えるわけですよね。でも、われわれは毎日そんなことを考えてるかというと、めったにそういうことは考えてなくて、むしろ日常的な対人生活の中で、あの人に対してこんなことを言ったらいけないんじゃないかとか、まあこのぐらいのことは言ってもいいなとか、そういう自分の行動の正しさについて考えているはずだと思うんですよね。トップダウンの発想よりは、ボトムアップの発想の正義論のほうが適切ではないか、我々の日常的な考えに近いんじゃないか。そういう考え方のほうがむしろ伝統的な正義論のアプローチだったんじゃないか、そういうふうに考えて、現在では軽視されがちな伝統的な正義論のいろんな考え方をこの本でできるだけ分かりやすく紹介したわけです」

このあと、正義についてさらに深く掘り下げます。大竹は、自分でも難しいと言った正義の話にどこまでついていけるのか? トークの続きはradikoのタイムフリー機能でご確認ください。