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アニメ化、実写映画化もされて、男女問わず人気を博している『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社)。明治時代の北海道を舞台にした冒険マンガで、先住民族「アイヌ」の文化や歴史も詰まった傑作だ。

そのエピソードの1つに、主人公たちが「野生のリス」をワナで捕まえて食べるシーンがある。皮を剥いだリスを骨ごと「チタタプ」(アイヌ語で「刃物で叩く」)して、肉団子の汁にしておいしくいただく。

野生の鳥獣の肉を食べる「ジビエ」がブームになって久しいが、SNS上では「リスのチタタプ、食べてみたい」という声もある。はたして、現代日本において、野生のリスを捕まえて「チタタプ」してよいのだろうか。

●野生の鳥獣を許可なく捕獲することは禁止されている

日本列島には、主にニホンリス、エゾリス(キタリス)、エゾシマリス(シマリス)が生息しているとされる。時間帯にもよるが、ゴールデンウイーク中にキャンプや登山をしたり、公園で遊んでいれば、リスを見つけるチャンスはあるはずだ。

環境省・鳥獣保護管理室は、弁護士ドットコムニュースの取材に「鳥獣保護法では、ネズミなど衛生動物を除いて、野生の鳥獣を許可なく捕獲することは禁止されています」と回答した。つまり、野生のリスも鳥獣保護法の規制対象となる。

一方、区域や期間、猟法に制限はあるが、狩猟免許を取得している人は「狩猟鳥獣」を捕獲することができる。

環境省の資料によると、シマリスは「狩猟獣」とされているが、ニホンリスとキタリスは「狩猟獣」から外されている。また、シマリスの亜種エゾシマリスも北海道で捕獲できない。

これらのルールに違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるおそれがある。

一口にリスと言っても、すぐにどれがシマリスで、どれがニホンリスと答えられる人はそう多くないだろう。

環境省も「誤認捕獲は違法です。狩猟鳥獣ではない鳥獣の捕獲は、鳥獣の生息状況に悪影響を与える恐れがあります」と注意を呼びかけている。

●リス肉って食っていいものなのか

では、なんとかうまく「狩猟獣」として、合法的にリス(タイワンリスなど)を捕獲できたとしよう。その場合は衛生的に食っていいものなのか。環境省からは、捕まえたあとのことは「農水省と厚労省に聞いてほしい」と案内された。

たしかに農水省のウェブサイトでは、ジビエの利用拡大を促すような言葉がおどっている。また、厚労省のウェブサイトでは「ジビエは中心部まで火が通るようしっかり加熱して食べましょう!」と呼びかけている。

そこで農水省と厚労省に問い合わせたところ、いずれも「こちらではお答えできかねる」と回答された。また、弁護士ドットコム本社のある東京都港区の保健所にも聞いたが、「わかりかねる」と言われてしまった。

どうしてもリスのチタタプを食べたい、という人もいるかもしれないが、そのような場合は、無理して捕獲せず、合法の流通ルートで仕入れたジビエを提供する料理店もあるようだから、そちらに連絡してみるほうが無難といえるだろう。