新宿副都心から約25キロメートル圏に位置する稲城市。多摩丘陵の緑や多摩川の清流などの自然環境に恵まれ、豊かな水資源を活かした梨の栽培が盛んな街です。JR南武線、京王相模原線で周辺都市と結ばれ、土地区画整理事業を中心に暮らす街として発展しています。今回は、稲城市の魅力と住宅事情について紹介します。

稲城市向陽台の紅葉(画像提供 PIXTA)

豊かな自然を抱く街が、都市開発で暮らしやすい街へ発展

若葉台の住宅街(画像素材:PIXTA)

南多摩地区の東端に位置する稲城市は、南東部より西部にかけて神奈川県川崎市、北は多摩川を隔て府中市、調布市、西部は多摩市とつながっています。東西、南北とも約 5.3キロメートルのほぼ三角形のかたちで、17.97平方キロメートルの面積があります。稲城市の南側には、標高約45から80メートルのなだらかな多摩丘陵があり、中央を流れる三沢川によって北西部と南東部に二分されており、豊かな自然が残っています。

三沢川沿いの桜並木(画像素材:PIXTA)

1889年に、矢野口村、東長沼村、大丸村、百村、坂浜村、平尾村の六か村合併によって稲城村が誕生。1929年に南武鉄道(現JR南武線)の川崎-立川間が開通し、1957年に町制がスタート。1971年に東京都25番目の市として稲城市の市制が始まり、多摩ニュータウン稲城地区の事業が承認されました。

多摩ニュータウン内に位置する若葉台の街並み(筆者撮影)

多摩ニュータウンは東京都西南部の多摩丘陵に位置するニュータウンで、その大きさは八王子、町田、多摩及び稲城の4市にわたる総面積2,853ヘクタール、東西14キロメートル、南北2~3キロメートルの広さ。1974年には京王相模原線が多摩センターまで開通し、稲城駅、若葉台駅が開設。1988年に多摩ニュータウン向陽台地区の入居が始まり、1999年には多摩ニュータウン若葉台地区の入居が始まりました。

土地区画整理事業が進められているJR南武線稲城長沼駅(筆者撮影)

稲城市内では、土地区画整理事業や都市計画道路整備事業が行われ、都市の基盤を整備。稲城駅周辺の第一地区や中央地区など、土地区画整理事業による整った街区が市内各所にあります。1993年には矢野口駅、稲城長沼駅、南多摩駅周辺で区画整理事業認可され、現在、土地区画整理事業が進められています。こうした街づくりによって、1971年の市制スタート時に人口3万6,800人、世帯数1万1,999世帯だった稲城市は、2024年4月1日時点で、人口9万3,823人、世帯数4万3,037世帯の成熟した街へと発展しています。

土地区画整理事業が行われている稲城長沼駅周辺(筆者撮影)

【稲城市のデータ】
総面積…17.97平方キロメートル
人口…9万3,823人
世帯数…4万3,037世帯
※2024年4月1日時点

自然環境を楽しむサイクリングロードもある住みやすい街

若葉台公園(画像素材:PIXTA)

令和元年度稲城市民意識調査によれば、稲城市の住みやすさについて、「住みやすい」と回答した人が45.9%、「どちらかといえば住みやすい」と回答した人が42.8%と、合わせて88.7%の人が稲城市について住みやすさを感じています。今後の居住意向については、「ずっと住み続けたい」が43.8%、「当分は住み続けたい」が42.6%と、86.4%の人が住み続ける意向を示しています。

稲城市役所庁舎(筆者撮影)

住み続けたい理由としては、「自然環境が良い」が77.0%と最も高く、次いで「買い物など生活が便利」が46.0%、「道路やまちなみなど生活環境が整っている」が45.8%、「通勤や通学に便利」が40.3%と高評価。次いで、「地域の人間関係が良い」が25.9%となっています。多摩川を水源とし市内を網目状に流れる大丸用水、豊かな水資源を活用し栽培される特産品の梨、遠景にのぞむことのできる緑地など、市民生活に水と緑が深く係わっています。

稲城北緑地公園の桜(画像素材:PIXTA)

「稲城市緑の基本計画」によれば、公園緑地は104.6ヘクタールあり、それ以外の緑地と合わせた緑の面積は982.2ヘクタールで、稲城市のみどり率は54.6%にもおよびます。また、都市公園は2022年時点で159箇所、102ヘクタールが整備。市民一人当たりの整備面積は、11平方メートルで、東京都平均の5.74平方メートルを大きく上回ります。豊かな自然が身近にあるのは、稲城市のいちばんの魅力といえるでしょう。

稲城中央公園(画像素材:PIXTA)

稲城中央公園は、稲城市のほぼ中心に位置する総合公園。武蔵野の自然林が残され、自然林の中に散策路があり市民の散歩コースにもなっています。総合グラウンドや稲城市総合体育館、野球場等の運動施設も用意されています。南多摩尾根幹線道路はサイクリングコースとしても人気があり、くじら橋などがある稲城中央公園を含んだ街路は、東京2020オリンピック競技大会自転車ロードレースのコースにもなりました。

上谷戸親水公園の水車小屋(画像素材:PIXTA)

上谷戸川の周辺を、自然観察や水遊びができる親水公園として整備した上谷戸親水公園や武蔵野の自然林を生かした向陽台にある城山公園など、街づくりと一体で各所に公園が整備されています。

若葉台公園内のテニスコート(筆者撮影)

多摩ニュータウンの若葉台地区にある若葉台公園には多目的広場やテニスコートがあり、ナイター設備も用意されるなど地域のスポーツの場にもなっています。また、三沢川沿いは、1キロメートル超にわたって桜が咲く花見スポット。多摩川沿いの稲城北緑地公園や大丸親水公園など春を彩る場所が豊富にあります。

多摩川梨(画像素材:PIXTA)

稲城市は東京都でもっとも梨の生産が多い地で、市内各所に梨農園が点在しています。こうした自然と触れ合える環境も稲城市に暮らす魅力といえるでしょう。

新宿駅へ約30分程度でアクセス可能、立川駅や川崎駅方面にもつながる

高架化が完了したJR南武線矢野口駅(筆者撮影)

次に交通アクセスを見てみましょう。稲城市内にはJR南武線と京王相模原線が東西方向に通っており、JR南武線では矢野口駅、稲城長沼駅、南多摩駅、京王相模原線では京王よみうりランド駅、稲城駅、若葉台駅の合計6駅があります。京王相模原線では、新宿まで約30分程度でアクセス。JR南武線では、立川駅方面や川崎駅方面と結ばれています。

JR南武線では東京都が事業主体となり、稲城市とJR東日本が連携して稲田堤駅から府中本町駅間約4.3キロメートルについて、道路と鉄道との連続立体交差化を実施。2013年に事業区間の高架化が完了し、踏切もなくなり街の回遊性が大きく高まりました。

稲城市交通網図(出典:稲城市ホームページ)

広域幹線道路としては川崎街道が市域の北側を東西に通り、鶴川街道が市域の中央を南西方向から北東方向に向けて貫通しています。稲城大橋を渡ると稲城インターチェンジで中央自動車道につながり、都心方向への車でのアクセスも良好です。

京王相模原線稲城駅(筆者撮影)

京王相模原線は新宿方面へ直通アクセスできるだけでなく、渋谷駅などへのアクセスも良好。JR南武線は登戸駅、武蔵溝ノ口駅、武蔵小杉駅などでほかの沿線に接続できます。多摩地区には大学などのキャンパスも多く、通学にも便利でしょう。

京王相模原線若葉台駅(筆者撮影)

稲城市民意識調査で「買い物など生活が便利」が46.0%、「道路やまちなみなど生活環境が整っている」が45.8%と評価されているように、買い物しやすく便利で整った生活環境も稲城市の特徴です。土地区画整理事業やニュータウン建設でつくられた街が多く、若葉台駅や向陽台などでは商業施設などがバランスよく街区に配置されています。若葉台駅ではフレスポ若葉台などの商業施設が駅前に集まっていて、買い物環境がとても便利です。

若葉台駅の街並み(筆者撮影)

土地区画整理事業で誕生した街区は、歩道が整備され安心して歩ける場所が多いのも魅力。視認性が高いので、防犯面でも抑止につながっています。沿道の街路樹で四季の移ろいも感じられます。

次に稲城市の住宅事情について見てみましょう。

土地区画整理事業による整った街区と美しい街並み

稲城駅の戸建街区「プラウドシーズン稲城南山」の高台からの街並み(筆者撮影)

稲城市では土地区画整理事業によって整備された街区と、農地などが市街化されて街となった場所が混在しています。多摩ニュータウンのように街区整備が完了した場所と、土地区画整理事業が現在進行中の場所があります。その中でも注目なのが、稲城駅から南側に広がる稲城南山東部地区の土地区画整理事業です。

稲城南山東部地区の土地区画整理事業地内の分譲マンション(筆者撮影)

2006年4月に組合設立が認可され事業がスタートし、約87ヘクタールもの新しい街づくりが始まっています。小学校が開校するとともに、マンションや戸建て住宅の分譲も行われました。街区内には、スーパーマーケットもオープンしています。戸建て分譲が継続的に行われており、注目のエリアと言えるでしょう。また、稲城小田良土地区画整理事業が施行中で、新築戸建てが分譲されています。

若葉台公園からの見晴らし(筆者撮影)

若葉台などの多摩ニュータウン内では、新築住宅の供給は限られる一方、中古マンションなどの流通は活発です。若葉台では100平米を超えるような広い住戸の流通もあり、ゆとりある広さを求める家族に好適です。また、新築戸建てはJR南武線沿線で分譲が活発で敷地面積を抑え4,000万円で購入可能な物件も。5,000万円程度の予算があれば、駅徒歩圏の一戸建てに十分手が届くでしょう。なお、土地や中古戸建ての流通件数は少なくなっています。

次に稲城市のおすすめの街を紹介します。

多摩ニュータウン内にある若葉台駅は、商業施設や公益施設が充実 

若葉台駅のマンション群(筆者撮影)

一つ目は、多摩ニュータウンに位置する京王相模原線若葉台駅です。魅力は、若葉台公園などの豊かな自然と、駅を中心とした商業利便性の高さ。京王リトナード若葉台、フレスポ若葉台、フレスポ若葉台イーストなど多彩な商業施設が豊富です。さらに、スーパー三和も入るユニディ若葉台店やヤマダ電機が入るアクロスプラザ若葉台など買物施設も充実しています。

フレスポ若葉台イースト(筆者撮影)

2020年には、稲城小田良土地区画整理事業の開発にあわせて地域密着の商業施設ソコラ若葉台が開業。「プラウドシーズン稲城若葉台」の新築戸建てが分譲されています。若葉台駅からはやや駅距離があるものの、幅員を確保した美しい街並みを形成しています。

稲城市立鄯プラザ(筆者撮影)

多摩ニュータウン内では中古マンションの流通が一定数あり、90平米を超えるようなゆとりの広さの住戸が5,000万円台から検討可能です。若葉台公園などの自然も豊かで、稲城市立鄯プラザなどの公益施設も立地。ゆとりと利便を求める家族におすすめです。

新宿方面へのアクセス良好な稲城駅 大規模な戸建て分譲がスタート

プラウドシーズン稲城南山の街並み(筆者撮影)

二つ目は、稲城市の中心エリアである京王相模原線稲城駅です。稲城市役所があるほか、三沢川の桜並木などもあり自然も豊かな場所です。注目は、稲城南山東部地区土地区画整理事業地内で分譲が行われているプラウドシーズン稲城南山です。

ヤオコー稲城南山店(筆者撮影)

総戸数531戸の大規模分譲地で、2024年4月時点で第9期の販売予定となっています。6メートルの舗道を確保し、統一感のある美しい街並みが広がっています。プラウドシーズン稲城南山の分譲街区の近くにはヤオコーなどの買い物施設もあり、稲城市外からの来訪も一定数あるようです。

稲城駅では中古マンションストックもあり、70平米の広さで4,000万円台から検討可能です。新築戸建ては様々な不動産会社が分譲しており、4,000万円台で手が届く物件も。京王相模原線は新宿方面のアクセスも良いので、都心通勤層にも便利でしょう。

多摩川が身近な自然豊かな場所・南多摩駅

南多摩駅(筆者撮影)

三つ目は、JR南武線南多摩駅です。多摩川を是政橋で渡れば府中市にアクセスできる場所にあります。多摩川に加え、大丸公園や城山公園といった憩いのスポットが豊富にあります。稲城市立病院のような医療施設や稲城市立中央図書館などの公益施設も備わっています。

南多摩駅の市街地(筆者撮影)

南多摩駅から城山通りを抜けて南に広がる向陽台は、稲城市初の多摩ニュータウン。多摩丘陵の斜面と街が織りなす美しい景観で、1995(平成7)年度都市景観大賞を受賞しています。

向陽台の街並み(画像素材:PIXTA)

南多摩駅周辺は住宅用の市街地が少なく、新築マンションの供給は限られます。新築戸建ての分譲は一定数あり、駅からやや離れた場所で4,000万円台から5,000万円台の物件が流通の中心です。

自然豊かで美しい街並みが広がる稲城市ですが、留意したいのは洪水や土砂災害などの災害リスクです。多摩川が流れ多摩丘陵があるため、洪水リスクの高い場所や急傾斜地で土砂災害の危険がある場所もあります。稲城市では、洪水ハザードマップの提供や土砂災害警戒区域を公開しているのでよく確認しましょう。

よみうりランド(画像素材:PIXTA)

稲城市ではよみうりランド遊園地の隣接エリアで東京ジャイアンツタウンの工事が進められています。国内初の水族館一体型の新球場で、敷地面積約7万6,000平米の広さ。スポーツ関連施設や飲食施設などができる予定です。事業を進める読売新聞東京本社、読売巨人軍、よみうりランドの3社と稲城市は、2023年8月に地域の活性化や魅力ある街づくりに協力して取り組んでいくための包括連携協定を締結しています。完成すれば、稲城市の新たな魅力になりそうです。

子どもが健やかに育つ豊かな自然と、よみうりランドなどのレジャー施設も身近にある稲城市の暮らし。若いカップルや子育てファミリーにおすすめです。

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