友だち作りが苦手な子にアドバイスしたい「言い方」「考え方」をご紹介します(写真:YUMIK/PIXTA)

学校生活であまり親しくない人と話さなければならなかったり、グループで遊んでいる子たちの仲間に入りたくて、どう切り出したらいいかと迷ったり。こんな場面に悩む子どもに親が何かアドバイスはできるでしょうか。

子どもの小学校生活で、「仲間に入りたい」「嫌なことを言わないでほしい」「教えてほしい」「意見を言いたい」など、シチュエーションにあわせた言い方と、その考え方を紹介している齋藤孝さんの新刊『こんなときどう言う?事典』より一部抜粋、再構成してお届けします。

まずは自分から話しかけてみて

<あまり親しくないクラスメイトと遠足のバスでとなり合わせ。沈黙の時間になりそうで心配>

基本)とにかく最初に話をしよう

できる!)共通点を見つけよう(「ゲームは何かやってる?」「好きな音楽とかある?」)

これだけでもOK)「遠足、どこが楽しみ?」と今起こっている共通のことについて話そう

<目の前で起こっていることを話題にして話そう>

だれかといっしょにいるときに、だまったままでいるのって、けっこう疲れるよね。そうなる前に少しだけでも会話ができると、とても楽になります。

遠足のバスでとなりの席になった子と、あまり親しくなかったとしても、「ねえねえ、今日の遠足さ、どこが楽しみ?」と、まずは聞いてみてほしいんだ。それで、「公園が楽しみ」「お弁当かな?」と返ってきたら、「公園で何しようか?」とか「今日はどんなお弁当なの?」と、さらに聞いてみると、話は続きますよね。

これはかんたんにいうと、「お互いに共通していることを話す」ということなんです。今いっしょに見ていること、いっしょにやっていること、二人が好きなことを探して話をしてみるのです。

たとえば、「いっしょにバスに乗っている」ことも、共通している部分だから、「わたしはバスに乗ると乗り物酔いしやすいんだけど、あなたはしないの?」と話してもいいよね。「乗り物酔いはしない」と言われたら、「乗り物酔いしないコツとかあるの?」みたいに、質問してもいいですね。


『こんなときどう言う?事典』より引用

それに、遠足に行くバスでとなりになるということは、「クラスがいっしょ」という共通点があるんだから、クラスのことを話題にしてもOKです。「うちのクラスって、ほかのクラスよりにぎやかだよね」「この間の学級会で先生が話していたことはおもしろかったね」といった話題を、あらかじめいくつか頭に入れておいてもいいんじゃないかな?

相手がまったく話してくれないときは?

どんなに話しかけても、相手が反応してくれなかったり、ちょっとめんどうそうな態度をとられたりすることもあるよね。そういう場合には、放っておいてもいいと思います。

無視されたときには、「きらわれてるのかな?」なんて考えずに、「具合が悪いのかもしれないな」「疲れているのかな?」と考えて、そっとしておいてあげてください。

話しかけてもだまっている子の中には、言われたことにうまく反応できないタイプの子もいるんだよね。

体調が悪かったり決まったことにしか関心をもてない子もいます。そういう子は、決して意地悪なわけでも、冷たいわけでもないということは、理解しておきたいよね。

それに、どんなに反応がなくても、少しずつ話をしていけば、「この人、悪い人じゃないんだな」とわかってくるものです。だから、相手の反応があまりよくなくても、あまり気にせずに、いくつかの話題について話してみてほしいんです。そのうち、とつぜん話にノッてくることもありますから。

POINT 相手と「同じ」ことを見つけてみよう!

<グループで遊んでいる子たちの仲間に入りたいけど、ふだんはあまりいっしょに遊ばない子たちばかりで声をかけづらい>

基本)「入れて」って言おう

できる!)断られたらそのときはあきらめて他の子と遊ぶ

これだけでもOK)やさしそうな子に声をかけてみよう

<だれか一人にでも「入れて」って言ってみよう>

仲間に入りたいときには、「入れて!」と言うのが基本なんだ。

こればかりは、勇気を出して声をかけるのがいいと思います。

でも、なかなか声をかけにくいこともありますよね。とくに、グループの子たちの仲がよさそうだと、入りにくそうでもありますし、「声をかけちゃ悪いな」なんて思ったりもするよね。

そんなときには、グループの子たちをよく見てみてほしいんです。その中に、グループのメンバーじゃない子にもやさしく接していたり、気づかいができていたりする子がいないかな? そういう子を探してみて、その子に「入れて」と言ってみてください。きっと「いいよ」と言ってくれると思うよ。

じつは、大人でも、何かのグループに入る場合には、グループの中のだれか一人に声をかけて、その人に、ほかのグループのメンバーに紹介してもらう……なんていうことは多いですから。

そして、もしきみ自身がグループの一員で、だれかが入りたそうに見ているのに気づいたら、積極的に声をかけてあげたり、「入らない?」とさそってあげるようにしてほしいな。

断られたら、どうしよう??

さて、きみが勇気をふりしぼって、グループの子に「入れて」と言ったとしても、断られることもあるかもしれない。「仲のいい子たちだけでやってるから、ちょっと無理」みたいにね。

たとえそう言われたとしても、必要以上に落ちこんだり、悲しんだりする必要はありませんよ。

大人の世界では、よく「縁」という言葉を使います。これは、人と人との関係を表す言葉ですが、「入れて」と言ったのに、入れてもらえなかったら、「この人とは縁がなかった」と表現するんです。

縁がないというのは、かんたんにいうと「もともとつながりがない」という意味です。外側から見ていたら、よさそうなグループで、自分も入りたいとは思うけれど、じつはあまり合わない人たちだった可能性が高い、ということなんですね。


だから、「お願いだから入れて!」と頼みこんで、無理やりグループに入れてもらったとしても、あまり楽しくなかったり、自分と合う人が一人もいなかった……なんてことが起こりやすいんです。

それに、断ってきた側にも、それなりの事情があるかもしれないよね。グループ内でしか話せないことがある人の集まりかもしれないし、もしかしたら、「自分たち以外の人はぜったいに入れない!」なんて、ものすごく意地の悪い人たちの集まりかもしれないしね。

どんな状況にせよ、拒否されたり、合わない人たちのグループに入ったりしても、あまりいい結果にはならないでしょう。だから、とりあえず「入れて」と言ってみて、断られたら、きみに合う友だちやグループを見つけて、いっしょに遊んだほうがぜったいに楽しいし、いいこともたくさんあるはずですよ。

POINT 断られても気にしない。「入れて」って言ってみよう

(齋藤 孝 : 明治大学教授)