ソーシャルメディアプラットフォームのX(旧Twitter)に偽情報や違法コンテンツがあふれている点が、欧州委員会(EC)が定めるデジタルサービス法(DSA)に違反している可能性があるとして、ECが正式な調査手続きを開始しました。

Commission opens formal proceedings against X under the DSA

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_6709

X to be investigated for allegedly breaking EU laws on hate speech and fake news | X | The Guardian

https://www.theguardian.com/technology/2023/dec/18/x-to-be-investigated-for-allegedly-breaking-eu-laws-on-hate-speech-and-fake-news

DSAは2023年8月に施行されていて、Xを含むソーシャルプラットフォームはこの法に従い人種差別やフェイクニュース、違法なコンテンツを排除するよう行動する必要があります。

2023年初め、Facebook、TikTok、Google、Microsoftなどのテック企業はDSA施行に備えてEUが定めた行動規範に署名していますが、Xは行動規範を脱退していました。それでもEUでサービスを展開するにはDSAに従わなければいけないため、EUおよびECメンバーはXに対してコンテンツの精査努力を行うよう呼びかけていました。



Xは、独自のファクトチェックシステム「コミュニティノート」を設けた点や、Xの規約に違反するテロ・暴力的組織のコンテンツをリアルタイムで削除していることなどを努力の結果としてアピールしていましたが実らず、ECから直々に調査開始の号令が発せられました。EC市場・サービス担当のティエリー・ブルトン委員は、調査開始について「違法コンテンツや偽情報に対抗する義務違反の疑い、透明性義務違反の疑い、ユーザーインターフェースの欺瞞的デザインの疑い」を理由にしていると述べています。





「欺瞞的なデザイン」についての調査は、「青いチェックマーク」の使用に関するもの。記事作成時点ではお金を払った人だけが利用できるようになっていますが、以前は閣僚や著名人など、公の場で認証されたユーザーのみにチェックマークが与えられていたため、かつて情報発信者の正当性を担保するものとして見なされていたマークが一般のユーザーに配布されたせいで情報の混乱を招いたことがかねてより批判されています。

EUは2023年10月10日、ハマスとイスラエルの戦争に伴いXがEU域内で違法なコンテンツや偽情報を広めるために使用されているという指摘を受け、Xに正式な書簡を送信。これに対し、Xの最高経営責任者であるリンダ・ヤカリーノ氏はブルトン氏に手紙を送り、同社はニーズに対処するために積極的に取り組んでいると返していました。

しかし、そのような措置は有効ではない可能性があると見なされたため、今回の調査手続き開始につながりました。EUは、手続きのスケジュールは決まっておらず、調査には時間がかかるものの、必要とあらば調査終了前に「暫定措置」を適用することができるとも指摘しました。仮にXのDSA違反が判明した場合、収入の6%の罰金を科せられるか、EU全域での事業を禁止される可能性があります。

EUの発表を受け、Xは「引き続きDSAの順守に務め、規制プロセスに協力します。Xは表現の自由を保護しながら、プラットフォームのすべてのユーザーにとって安全で包括的な環境を構築することに重点を置いており、この目標に向けてたゆまぬ努力を続けます」と述べました。