「自分から動いてくれる人」と「勝手に仕事を進めてしまう人」では、どう違うのでしょうか(写真:Taka/PIXTA)

仕事ができる人と言われると、指示がなくとも自分から動いている人を想像する人が多いのではないでしょうか。しかし、中には、指示を待たずに勝手に仕事を進めてしまうため、「問題児」だと思われている人もいます。自分から動ける人と自分勝手な問題児になってしまう人にはどのような違いがあるのでしょうか。安達裕哉氏が上梓した『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』から、「自分から動ける人」と「自分勝手な人」の違いについて紹介します。

「自分から動く人」と「勝手に動く人」の違い

行動にはどうしても摩擦が伴う。組織のなかであればなおさらだ。どうしたら摩擦を少なく、よりうまく仕事を進めることができるだろう。

1つのエピソードを紹介したい。

ある会社の社長から「社員に1人、問題児がいる」との相談があった。だが、問題児はどの会社にもいるので、さほど珍しくない相談だ。

そこで、「どんな問題を起こすのですか?」と聞いたところ、「まわりの意見を聞かず、勝手に仕事を進めてしまう」とおっしゃっていた。

私はそれを聞き、1つの疑問が浮かんだ。

社長は、ふだんから、「社員がなかなか自分から動かない」と言っていた。

「指示を待たずに、もっと自分から動いてくれるといいのに」とも言っていた。

しかし、実際にそのような人が出てくると、今度は「まわりの意見を聞かず、勝手に仕事を進めてしまう」と言う。

では、その境界はどこに存在するのか? これはぜひ聞いてみたい。

私はその社長に、「『自分から動いてくれる人』と、『勝手に仕事を進めてしまう人』との差とは、なんですか?」と聞いてみた。

社長は考え込んでいたが、ゆっくり話し始めた。

社長:うーん、はっきりとした言葉にするのは少し難しいけれど、こちらの安心感があるか、ないかの違いかな。

著者:と言うと?

社長:指示を待たずに自分から動いてくれ、というのはもちろん条件がある。1つは与えられている権限をきちんと理解しているか。勝手に契約などされては困る。この人は権限をきちんと理解している、という安心感があれば、こちらの指示を待つ必要はない。

著者:なるほど。それはそうですね。

社長:あとは、まわりの人への配慮ができる人かどうか、かな。勝手に動く、ということは人によっては反感を持つ人もいる。私がどんなに「自分から動いてくれ」と言っても、一定数は保守的な人がいるものだ。そういう人に配慮しつつやってくれるといいのだが。もめごとを起こせば、まわりからその人が孤立してしまう。それは困る。

著者:なるほど。ということは、結局「自分から動いてほしい人」と、「勝手に動いてほしくない人」がいるということですね?

社長:その通りだが、平等という観点からはそのように社内にアナウンスはできないだろう。

「指示待ち」が増えるメカニズム

実際、この話のように「自分から動け」を真に受けないほうがいいことは賢い大人なら誰しも知っている。

ただ、自分が「自分から動いてほしい人」にカテゴライズされているか、「勝手に動いてほしくない人」にカテゴライズされているかを知るのは難しい。

さらに、「勝手に動く人」はそういうことを気にするほど繊細ではない。

ということは、賢い人は、その賢さゆえに「指示待ち」となり、勝手な人はその鈍感さゆえに「問題児」となる。会社員としては、結果的に「指示待ち」が増え、一部の問題児が浮き彫りになるのは必然だ。

自分から動き、変化を起こすには、社長が言うように、次の2点をキッチリ押さえることに尽きる。「報告・連絡・相談」が重要視されるゆえんだ。

「自分から動ける人」になるための2つのポイント

・ 自分自身の権限を知ること、すなわち「会社のルール」を熟知すること。公式のルール、暗黙のルールを含め、誰に情報を持たせるかを考えること。

・ 保守的な人物への配慮を怠らないこと。ルールを守っていても反感を持たれるケースは多い。したがって、保守的な人物に対する感情面のケア、付き合いなどを利用すること。

また、会社によっては、会議の場で議論する前に関係者全員に対して個別に話を通しておく、現場や仲のいいクライアントに味方になってもらう、といった、いわゆる「根回し」が効果的なことも多い。状況をよく見て、仲間を増やそう。

見えないところで必ずしていること

会社のルールを熟知して、「自分から動いてほしい」と思われる人になる


(安達 裕哉 : ティネクト代表取締役)