Androidの中には、位置などの条件に応じて設定を自動で変更できる端末がある。写真はPixelの「ルール」とGalaxyの「ルーチン」(筆者撮影)

着信音やWi-Fiのオン・オフは、場面に応じて切り替えている人が多い。

例えば、家の中では電話やメッセージにすぐ気づけるよう、着信音をオンにしているが、外出時はマナーとしてバイブレーションのみにするといった具合だ。Androidの場合、こうした設定は通知の上に表示されるクイック設定で変更できるが、毎回、画面のロックを解除してタッチ操作するのは骨が折れる。ほかにすることがないにもかかわらず、都度、端末を取り出して操作するのは面倒だ。

手間を省ける設定の「自動化」

このようなときに設定しておきたいのが、設定の「自動化」だ。端末にもよるが、PixelシリーズやGalaxyシリーズなどには、条件に基づき、一部の設定を自動で変更する機能が搭載されている。あらかじめこれを設定しておけば、毎日定期的にやっていた操作を省略することができて便利だ。設定を忘れてしまうこともないため、うっかり電車の中で着信音を爆音で鳴らしてしまうといった失敗も防げる。

ただし、これら端末に搭載されている機能で設定できる自動化は、ある程度限定されている。Pixelのように、最小限の機能しか備えていないものもあり、かゆいところに手が届かないのが残念だ。一方で、バックグラウンドに常駐し、こうした自動化を適用するアプリも存在する。1つ1つの操作はすぐに終わるとしても、何度も繰り返しやるのは時間の無駄。ここでは、そんな手間から解放されるAndroidの裏技を紹介していこう。

Pixelシリーズには「ルール」と呼ばれる機能があり、場所や接続しているWi-Fiなどの条件を元に、着信音などの設定を変更することができる。設定できる項目は限られているが、シーンごとに変えるのが面倒な着信設定が自動で変更されるのは便利だ。普段はバイブレーションだけが動作するようにしておき、家や会社内など、着信音が鳴っても問題がないような場面でだけ、それを解除するような設定にしておけばいいだろう。

着信音設定を変更できるPixelの「ルール」

会社でプライベートの端末から音が鳴ってしまうのを避けたい時には、そこでだけバイブレーションも動作しないサイレントモードに切り替えることも可能だ。「ルール」は、次のように設定する。まず、「設定」で「システム」を選択してから、「ルール」をタップする。この画面で、「位置情報へのアクセスを常に許可」をオンにしておこう。これで、位置情報に基づいた設定の変更が可能になる。

次に、同じ画面で「ルールの追加」をタップする。次の画面では、「Wi-Fiネットワークまたは場所を追加」を選択。自宅ではWi-Fiに接続している場合、「Wi-Fiネットワーク」を選び、アクセスポイントのSSID(Wi-FiのID)をタップする。会社でWi-Fiにつなげないような場合の設定をしたいときには、「場所」をタップして、住所を入力する。次の画面でスライダーを動かし、範囲を選択する。これで、円の範囲内にいる時だけ、設定が有効になる。


特定の場所に入ったときだけ、着信音や通知音をサイレントに切り替える設定(筆者撮影)

あとは、「以下の設定を行う」という項目から、その時に変更したい設定を選ぶだけだ。自宅で着信音を鳴らす設定にしたいときには、「デバイスの着信音が鳴るように設定」を選択する。逆に、会社では一切音を鳴らしたくないような場合、「サイレントモードをONにする」か「デバイスをサイレントに設定」にチェックをつける。設定が終わったら、「追加」をタップすればいい。設定できるのはこれだけと非常にシンプルだが、着信設定を都度変更する手間は省ける。

メーカーによっては、独自にカスタマイズを加え、似た設定を実現していることもある。Galaxyシリーズの「ルーチン」は、その1つだ。この機能を使えば、上記のPixelと同様、場所や接続しているWi-Fiに応じて着信音を制御することが可能になる。Galaxy Z Fold5の場合、「設定」の「モードとルーチン」で、「ルーチン」タブを選択。「+」ボタンをタップして、条件と実行内容を選択する。条件に「場所」や「Wi-Fiネットワーク」を設定し、実行内容には「サウンドモードと音量」を選択すると、Pixelよりも細かく音量まで調整できる。着信音のオン・オフは頻繁に変更する可能性が高い項目なだけに、自動化の恩恵は大きいと言えるだろう。

Galaxyの「ルーチン」は、多彩な組み合わせが可能

バイブレーションのみやサイレントモードへの変更だけしかできなかったPixelに対し、Galaxyシリーズのルーチンはできることが多彩だ。例えば、条件に関しては、場所や接続しているWi-Fiだけでなく、時間やWi-Fiの電波強度、接続しているBluetoothデバイスといった項目に加え、モバイルデータ通信がオン・オフになった場合や、バッテリー残量、折りたたみの状態などなど、幅広い項目を指定することができる。

また、その条件下で実行できる内容も多彩で、着信音の変更にとどまらない。一例を挙げると、画面の点灯時間やディスプレーの明るさ、省電力モードのオン・オフ、音楽の再生、アプリの起動など、さまざまな動作の自動化が可能だ。すべての操作を自動化するのは難しいが、その組み合わせは数えきれないほど。うまく設定しておけば、操作をかなり簡略化することができる。


Galaxyの「ルーチン」は、多彩な項目が用意されている。写真は、特定のイヤホン接続した際に通知を読み上げるように設定したところ(筆者撮影)

例えば、筆者はオーディオグラスの「HUAWEI Eyewear 2」を使用している。これは、ツルの部分がイヤホンになっているメガネ型の周辺機器。見た目は、一般的なメガネとほぼ変わりなく、耳に指向性のある音を届けるというものだ。このHUAWEI Eyewear 2に接続したときだけ、通知を読み上げるよう設定している。イヤホンと違い、メガネをかけているだけなので常時身に着けられる。その状態で通知が読み上げられると、スマホの画面を見ずにある程度の情報を音で把握することが可能だ。

条件に「Bluetoothデバイス」を選び、HUAWEI Eyewear 2に接続した場合を設定。実行内容には、「通知の読み上げ」を選択する。すると、BluetoothでHUAWEI Eyewear 2が接続されているときだけ、通知を読み上げる機能が起動する。メガネをかけるたびに本体を操作するのはなかなか手間がかかるため、自動化しておきたい仕組みと言えるだろう。同様のルーチンは、他のBluetoothイヤホンを接続した場合にも設定できるため応用の範囲が広い。

もう1つは、Samsung Notesという手書き可能なアプリの起動を条件にしている。このときの実行内容は、画面のタイムアウトの時間を10分に延ばすというもの。PDFなどに注釈を加える際に、途中で画面が消えてしまうのを防ぐためのルーチン設定だ。

同様に、銀行のアプリも、Galaxyで取引内容を見ながらPCの帳簿ソフトに転記することが多いため、画面のタイムアウトを10分に延ばしている。ただし、Galaxy Z Fold5を閉じたまま使う時は、振り込みなど、すぐに終わる操作が多い。そこで、「折りたたみ状態」の条件も加え、「完全開いた状態」の時だけ、この設定が実行されるようにした。Galaxyシリーズ限定の機能だが、細かな設定変更を自動化でき、作業効率が大きく上がる。同シリーズを持っている人は、活用することをお勧めしたい。

ただ、すべての人がGalaxyを使っているわけではない。日本ではソニーのXperiaやシャープのAQUOSなども比較的シェアが高く、海外市場ほどのシェアは取っていない。Pixelのように、自動化する機能は搭載している一方で、設定できるのが着信音関連だけにとどまる端末もある。このような端末で自動化設定をしたい場合は、アプリを導入するのが手っ取り早い。筆者がPixel 8にインストールしているのは、「MacroDroid」というアプリだ。

自動化機能がない端末ではアプリを活用

サードパーティアプリながら、自動化できる項目が非常に多彩なのが特徴。登録できる項目が5つに制限されたり、広告が表示されたりするが、無料で利用できるのもうれしいポイントと言えるだろう。こうした制限は、800円をアプリ内課金で支払うだけで取っ払うこともできる。Pixel 8の場合、先に述べたように、着信音関連しか自動化ができない。設定できる条件も、Wi-Fiネットワークか位置情報に限定される。

ただ、Pixel 8でもGalaxy Z Fold5のように、特定のアプリを開いたときだけ画面がタイムアウトする時間を延ばしたい。リアルタイムの文字起こしに対応した「レコーダー」は、そんなアプリの1つだ。相手が英語で話しているような場合、画面上に文字で表示されると“アンチョコ”になる。日本語でも、数字などを聞き逃してしまった際に文字起こしを確認することがある。通常だと15秒や30秒などの短い時間で画面が消えてしまうため、それが難しい。


「ルール」や「ルーチン」といった機能のない端末でも、アプリで自動化をすることが可能。画像は「MacroDroid」というアプリ(筆者撮影)

MacroDroidを使えば、そのような自動化も簡単に設定できる。アプリを起動し、「マクロを追加」をタップ。「トリガー」の「+」ボタンをタップしたあと、「アプリ」を選んで「アプリを起動/終了」を選択する。次にオプション画面が表示されるので、「アプリを起動時」を選び、「OK」をタップ。「アプリを選択(複数可)」を選択した状態で再び「OK」をタップし、「レコーダー」を追加する。次に、「アクション」の「+」をタップして、「画面」という項目の中にある「画面OFFまでの時間設定」を選択する。

次の画面で、「画面タイムアウト」を「なし(OFFにしない)」を選び、「OK」を押すと、トリガーとアクションが設定される。あとは名前をつけ、このマクロを保存するだけだ。これで、レコーダーを起動した際に、画面が自動で消灯しないように設定が自動で変更される。ただし、このままだと使い終わった際にタイムアウトの時間が元に戻らないため、アプリ終了時に画面のタイムアウトを15秒に変更するマクロも作っておく。これで、自動化は完成だ。

ここでは一例の紹介にとどめておくが、MacroDroidでは、Galaxyのルーチンにないような項目も用意されている。例えば画面ロックの解除に失敗した場合に写真を撮るようなマクロや、動画再生アプリを起動したときだけ画面を横表示で固定するマクロなども組むことが可能だ。設定には少々知識も必要になるが、どのようなマクロを組めば操作が簡略化できるかを頭に描きながら、トリガーとアクションの組み合わせを試してみるといいだろう。


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(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)