結婚の素晴らしさ、改めて考えてみます(写真:StudioR310/PIXTA)

近年、婚姻率の低下と未婚率の増加が騒がれている。

一昔前の、「結婚してこそ一人前」といわれていた時代は終焉し、人それぞれの生き方が尊重され、人生の幸せは個人が決める時代となった。そして、SNS上では、結婚することに賛同するよりも、否定的な見方をする記事が多く取り上げられている。

仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく連載。今回は、あえて“結婚の素晴らしさ”をつづりたい。

大失恋からの大逆転劇

9月14日配信の「仲人はミタ」の記事で登場したよういち(32歳、仮名)が、成婚をした(関連記事:引きこもりをやめ婚活にかけた30代男性のその後)。

入会から成婚退会までに要した期間は、約5カ月。記事にも記したが、入会面談にやってきたのは、初めて恋をした女性に失恋をしたからだ。そのときは、「失恋がこんなにつらいものだとは思わなかった」と、この世も終わりという顔をしてうなだれていた。

そして、それまでの人生を聞くと、当時のタイトルにあるように、引きこもっていた時期が8年ほどあった。

子どもの頃は努力しなくても勉強ができた優等生で、中高一貫の進学校に進学。ところが、進学した先は地方の公立小とは違い、レベルの高い生徒が集まってきているので、一気に落ちこぼれた。

その状況で6年間を過ごし、仲間たちが有名大学に進学していくなか、よういちが合格したのは名もない私立大学。そこから自分にダメの烙印を押し、引きこもり生活が始まった。結局、大学にはほとんど行かずに、留年を続けて8年で除籍になった。

その後も地元でくすぶり続けていたのだが、「このままでいいのか。ここで自分が変わらなければ、廃人のような人生になる」と一念発起。環境を変えるために地元を離れて、上京した。現在の会社に就職をし、休みの日はジムに行って汗を流したり、友達の輪を広げたりするようになった。

そんななかで出会った女性に恋をした。

そのときのことを、入会面談のときに筆者にこんなふうに話してくれた。

「デートに誘ったらオーケーしてくれたので、彼女も自分に気があるのだと思ってしまった。食事に行って恋人気取りで話していたら、彼女はだんだんと無口になって、『電話をかけに行く』と中座したまま、帰ってこなかったんです」

のちに「ごめんなさい。先に帰ります」というLINEが来て、自分が大きな勘違いをしていたことに気づいた。生まれて初めての失恋。

そんな失意のどん底から出発した婚活だったのだが、結婚相談所サイトに登録してからのよういちの奮闘ぶりは、目覚ましかった。

筆者は、複数の相談所協会に属しているので、各サイトによういちを登録すると、彼は合計で150件のお見合い申し込みをかけた。そのうち成立したのは10件。お見合い後は数名と交際に入り、のちに2人に絞り込み、最終的にみずえ(38歳、仮名)と真剣交際に入り、成婚を決めた。

みずえは交際に入った女性のなかで、唯一年上だった。

上手な舵取りが2人の距離を縮めた

男性は、結婚する女性に若さを求める傾向にある。ことに、40代後半以上になると、できるだけ若い女性との結婚を望む。なかでも初婚者は子どもを授かりたいと思っているので、50代、60代になると、親子ほど年齢の離れた女性にお見合いを申し込んでいる。

当然のことながら受けてもらえるケースは、ほとんどない。

結婚相談所では、よういちのように男性が年上女性を選ぶのは、珍しいケースだ。ただ男性が若ければ、年上女性を選んでも出産の可能性は十分にあるし、恋愛経験のない(少ない)男性は、舵取りを女性に任せられるので、交際がスムーズに進む。

よういちがみずえを選んだのも、「一緒にいて自分が自然体でいられる」という理由からだった。

恋愛初心者のよういちにとって、デートは終始緊張の連続。そんななかでみずえは年上の余裕からか、上手に彼の緊張をほぐし、気持ちを掴んでいったようだ。

ある日のこと。1日のデートを終えて夕方に別れた。その日のデートは、よういちの地元の近くだったという。別れたあとに彼は夕食の惣菜をコンビニで調達して、1人暮らしの部屋に帰ろうとしていた。

そのとき、携帯が鳴った。みずえからだった。「まだ時間が早いし、もう少し一緒にいたいな」。

彼にとっては、飛び上がりたいくらいうれしい電話だった。そして、コンビニで夕食を調達したことを告げて、「それを僕の部屋で食べない?」と誘ってみた。みずえが初めてよういちの部屋を訪れたその日を境に、2人の距離が急速に縮まったのは、言うまでもない。

彼女の誕生日にプロポーズ

真剣交際に入って1カ月が経った頃、よういちからこんな相談の電話が来た。「みずえさんが38歳になる誕生日に、プロポーズをしようと思います」。

そこからは、筆者とどんなプロポーズをしたら喜んでもらえるのか、いろいろと話し合った。恥ずかしがり屋のよういちは、「2人だけの空間でプロポーズをしたい」と言う。

そこで、ホテルの部屋を取り、そこでプロポーズをするプランを立てた。その日泊まるホテルのレストランで、まずは誕生日祝いのディナーをする。そして、そのときに誕生日プレゼントのアクセサリーを渡す。

ディナーを終えた2人が部屋に向かう前に、ホテルのスタッフにバラの花束と冷えたシャンパンを部屋の中に用意しておいてもらう。

バラは12本。プロポーズでは定番のダズンローズだ。1本1本に違った意味「感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠」がある。

プロポーズが成功したときのことを、よういちは後日こんなふうに話してくれた。

「鍵を開けて真っ暗な部屋に明かりをつけたら、バラの花束と冷えたシャンパンがテーブルの上に置かれていたんです。花束を差し出して、『結婚してください』とストレートに言いました」

サプライズに驚きながらも、みずえは喜んでプロポーズを受けたという。

その話を聞いて、筆者はよういちに言った。

「入会面談に来たときは失恋して暗い顔をしていたのに、こんな日が来るなんて。これもすべてよういちさんが、頑張って自分の力で手に入れた幸せですね。ただ結婚は、ここがゼロのスタート地点だから、2人で力を合わせていい関係を築きながら、家族になっていってくださいね」

そんな言葉に、「はい、頑張ります」と、よういちの声はどこまでも弾んでいた。

一生、大切にしていこう!

それから数週間後。成婚退会の手続きを進めるにあたって、また連絡を取り合ったのだが、そのときによういちがこんなエピソードを話してくれた。

「この間、みずえさんの部屋で2人で結婚雑誌を読んでいたんです。あるページを私が声に出して読んでいたら、『なんかイントネーションがヘンだよ』って、みずえさんが笑い出して。私もつられて笑って、2人で大笑いになったんですよ」

ところが、ややあって、みずえが急に泣き出した。

「こんなふうに好きな人と笑える日が来るなんて、婚活を始めたときには思ってもみなかった」

そんなみずえを本当に愛おしいと思い、心に誓ったそうだ。

「この女性を一生、大切にしていこう!」

現在、よういちは結婚の準備を進めながらも、会社の資格試験を受けるために勉強中だ。

「みずえさんは仕事が好きで、自立している女性。そういうところも尊敬できるんですけど、これからもし子どもを授かったら、今のペースでの仕事ができなくなるかもしれない。そうなったときに、私が家族を守っていかないといけない。今回試験に合格したら、役職がつくし、給料も上がるんです」

男性は、“結婚して家庭を築くと、仕事のパフォーマンスが上がる”というのは、よくいわれることだ。人は守る者ができると、戦う力が湧いてくるし、強くなれる。やっぱり結婚は、素晴らしいものではないか!

仲が悪くなる夫婦の特徴

こうした成婚物語を書くと、「そんなのは今だけ」と言う人たちがいる。数年後には新婚時代の気持ちを忘れて、いがみ合ったり、ケンカしたり、不倫したり……。

そうしたカップルも、世の中には確かにいる。では、愛し合っていたはずのカップルが、時を経てなぜそうなってしまうのか。

夫婦が離婚するときの理由で多いのが、「性格の違い(価値観の相違)」なのだそうだ。

ただ、そもそもまったく違った環境で育ってきた男性と女性が夫婦になるのだから、性格は違って当たり前。また、男性と女性という性差から生まれる考え方の違いもあるだろう。

筆者はこれまで多くの成婚者を送り出してきたが、そのなかには離婚したカップルもいる。離婚したのは、相手の言動を否定したり、けなしたりすることでコミュニケーションを取っていたカップルに多い気がした。

「よく食べるなぁ。だから太るんだよ」「本当にファッションセンスがないわね」……。親しいがゆえの冗談まじりの会話なのだが、言われたほうは心地よくない。けなし合ってコミュニケーションを取ることが日常になっていくと、相手への愛情もどんどん薄れていくだろう。


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「ムダ遣いが多いよ」「きれいに部屋を片付けろよ」「いつも服を脱ぎっぱなしね」……。相手の金銭の使い方や生活習慣に注文をつけるのも、だんだんと愛情がなくなっていく要因だ。

夫婦間の愛情が冷めていけば、そこからセックスレスになったり、浮気に走ったりすることにつながっていくのではないか。

夫婦にとって大切なのは、自分とは違う相手の価値観や考え方を受け入れて、認め合うこと。相手が間違いをおかしたとしても、許すことだろう。

よういちとみずえには、どんなときもお互いをリスペクトする気持ちを忘れずに、いつまでも仲のいい夫婦でいてほしいと思っている。

(鎌田 れい : 仲人・ライター)