5代目となった新型スイフト。CVT車は2023年12月13日、5MT車は2024年1月17日に発売(写真:スズキ)

「ヤリス」や「MAZDA2」とともに、国産コンパクトハッチバック市場を形成する1台、スズキ「スイフト」がフルモデルチェンジを実施し、2023年12月6日に発表となった。


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先代(4代目)スイフトは発表から7年近くが経過し、10月末〜11月頭に開催されたジャパンモビリティショー2023で「スイフト コンセプト」として市販車同然のクルマが公開されたので、このタイミングでの新型スイフト登場は既定路線だった。

とはいえ、スイフトといえばヨーロッパやアジアを含めたグローバルで展開する、スズキの旗艦車種の1つである。その内容は、示唆に富むものだ。

「一目見たら印象に残るデザイン」を目指して

新型スイフトについて、スズキは次のように説明する。

「新型『スイフト』は、『エネルギッシュ×軽やか 日常の移動を遊びに変える洗練されたスマートコンパクト』をコンセプトに、歴代のスイフトで培ってきたデザイン性や走行性能に加え、安全装備や利便性の高い装備が充実したことで、スイフトの魅力であるデザインと走りに『クルマと日常を愉しめる』という新たな価値が加わり、進化した新型小型乗用車です」

同時に、「デザインは、一目見たら印象に残るデザインを目指して開発しました」としており、やや曲解すると「正常進化のキープコンセプトで、デザインを特徴とした」といえる。


フロントまわりが特にユニークな新型スイフト(写真:スズキ)


直線的な部分がなく、曲面的なデザインだった先代スイフト(写真:スズキ)

実際に新型スイフトを見てみると、ひと目でスイフトだとわかる雰囲気を残していながら、他の何にも似ていないユニークなデザインだ。まず目につくのは、円弧を描くクラムシェル型のボンネットと、前端につきだしたグリルだろう。

グリルとヘッドライトの位置関係については、よく見れば先代モデルと変わっておらず、先進性をもたせた形状やディテールにアレンジされたことが見て取れる。一方、ボンネットは、先代がヘッドライトを頂点に低く設置されていたのに対し、ヘッドライトよりも一段高くしたことで、大きくイメージを変えた。

円弧を描くボンネットのラインは、そのまま車体をぐるりと一周しており、これが新型スイフトのデザインを印象づけている。ブラックアウトしたAピラーは、2代目以降スイフトの伝統ともなっているモチーフだが、新型ではCピラーもブラック化。ルーフが浮いているように見えるデザイン(フローティングルーフ)とした。ブラックまたはガンメタリックの2トーンルーフを選べば、よりこのスタイリングが際立つ。


ピラーをブラックアウトしてボディ上部と下部を明確化する(写真:スズキ)

なお、ボディサイズは全長3860mm×全幅1695mm×全高1,500mmで、先代とほぼ同じ。全幅1700mm未満の5ナンバーに収まっていることに、安堵する人もいるだろう。

マイルドハイブリッドには5速MTも設定!

「インパネとドアトリムを繋げ、ドライバーとクルマの一体感を表現しています」というインテリアは、時流に合わせてディスプレイを大型化(9インチ)したうえで設置位置を上部に移動。先代でダイヤル式としたエアコンの操作は、ボタン式に戻された。


内装色はガソリン車がブラック、マイルドハイブリッド車が写真のグレー2トーン(写真:スズキ)

スズキとしてのウリは、フロントドアトリムクロスやインパネの一部に施した3Dテクスチャーで、見る角度や光の加減により立体感を演出する役目を果たす。


シート形状なども見直されたインテリア。荷室は幅を拡大(写真:スズキ)

パワートレインは、ベーシックグレードの「XG」は純ガソリン仕様、中上級グレードの「HYBRID MX」「HYBRID MZ」がマイルドハイブリッド仕様で、いずれも新開発のZ12E型高効率エンジンを搭載。トランスミッションは、基本は全車CVTだが、マイルドハイブリッドのみ5速MTを選べるのがおもしろい。なお、4WDはCVTとの組み合わせのみとなる。

「HYBRID MZ」の4WDのみ車重1020kgと1トンを超えるが、900kg台に収まる軽量さは継承された(最軽量は910kg)。

キープコンセプトでもしっかりアップデートされているのは、安全装備や運転支援機能である。

ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせた「デュアルセンサーブレーキサポートII」を採用し、画角・検知エリアを拡大。自転車や自動2輪車、交差点検知にも対応した。また、前方だけでなく後方の壁などに衝突の可能性があると判断した場合、被害軽減・衝突回避を試みる低速時ブレーキサポート(前進・後退)をCVT車に新採用している。

上級グレードに「HYBRID MZ」には、車両前方の状況を認識してハイビームの照射範囲を制御するアダプティブハイビームシステムや、停止保持機能付きの全車速対応ACCを装備する(ACCは5MT車を含め全車に装備)。


停止保持機能付きの全車速対応ACCが付くHYBRID MZは電動パーキングブレーキを採用(写真:スズキ)

特にプレスリリースなどでは触れられていないが、斜め後方を走るクルマを検知して死角を補助するブラインドスポットモニターが全車標準装備となっていることに、注目したい。

有効な機能であるにも関わらず、コンパクトクラスで全車標準装備としているのはMAZDA2のみで、ヤリス、「フィット」「ノート」ではオプションなのだ。フィットでは、装着可能なグレードも限られる。

オススメは「HYBRID MZのナビなし」か?

新型スイフトの価格は、以下のとおり。

■XG:172万7000円(FF)/189万2000円(4WD)
■HYBRID MX:192万2800円(FF)/208万7800円(4WD)
■HYBRID MZ:216万7000円(FF)/233万2000円(4WD)

※HYBRID MXのFFのみ5速MT(192万2800円)あり

一般的に販売の主力は中級グレードとなり、スイフトにあてはめるとHYBRID MXとなるが、これにメーカーオプションのナビゲーションシステムをつけると、25万800円高となり、217万3600円(FF車の場合)となる。

一方、上級グレードのHYBRID MZではディスプレイオーディオが標準装備である関係から、ナビゲーションシステムの価格は13万3100円となり、230万100円(FF車の場合)と価格差が縮まるところが悩ましい。コストパフォーマンスを考えると、HYBRID MZのナビなしを選んで、スマホの地図アプリを利用するのも一考だ。


5万5000円高となるクールイエローメタリック/ガンメタリック2トーンルーフ(写真:スズキ)

ボディカラーは、新色の「フロンティアブルーパールメタリック」と「クールイエローメタリック」を含めて、全9色13パターン。個性の強いスタイリングを持つクルマだけに、ボディカラーを選ぶのも楽しそうだが、一部塗装色はメーカーオプションとなり、その価格は3万3000〜9万9000円と意外と高いので注意したい。

スイフトといえばスイフトスポーツの存在も欠かせないが、じつはこちらは2023年10月に法規対応のための一部改良を実施したばかり。しばらくはそのまま継続生産するようだ。とはいえ、日本国内では”普通のスイフト”よりも売れていたというだけに、スイフトスポーツの続報も楽しみにしたい。

(木谷 宗義 : 自動車編集者)