どうしてもモチベーションが上がらない……そんなときはモチベーションの源泉を掘り下げてみましょう(写真:nonpii/PIXTA)

なかなかモチベーションが上がらず、やるべきことに着手できないという状態は誰にでもあるもの。しかし、人気のタイムコーディネーター・吉武麻子さんは「モチベーションは上げようとするのではなく、できるだけ下がらないようにするべきです」と言います。本稿は、吉武さんの著書『目標や夢が達成できる 1年・1カ月・1週間・1日の時間術』より一部抜粋・再構成してお届けします。

目標達成へのモチベーションをキープする秘訣

「モチベーションさえ続けば、目標達成できるのに」

この言葉の裏を読むと、「目標達成するためにはモチベーションが必要だ」と思っていることがわかります。

実際、「モチベーションを上げるためには、どうしたらいいですか?」という質問を私もよく受けます。そういった質問を受けたときは、「モチベーションは上げる意識よりも、下がり続けないためにはどうすればいいか、という意識を持ってください」とお伝えしています。

そもそも、モチベーションの源泉は何でしょうか? 

モチベーションの源泉は2種類あります。1つが、興味、関心から湧きおこる「内発的動機」。そしてもう1つが、評価や罰などをきっかけとする「外発的動機」です。

内発的動機は、物事に対する強い興味や、探求心から生まれるやりがいや達成感です。そのため、質の高い行動が持続しやすく、高い集中力も発揮されやすくなります。

それに対して外発的動機は、報酬や罰といった、外からの働きかけによる動機です。「結果を出せたら報酬を与える」「結果を出せなかったら罰則を与える」といった、わかりやすい動機なため、短期間で効果が表れます。ところが、効果が持続しないことも特徴です。

そのため、外発的動機をタネとして、内発的動機へつなげていくと、モチベーションは持続しやすくなります。「やりたい」という気持ちになるまで、「なぜやるのか」「何のためにやるのか」「それを達成したら、どんな未来が待っているのか」など、内発的動機を掘り下げてみましょう。

このような例もあります。

数字を出せばボーナスを多くもらえるとひたすらがんばっていた営業マンのDさんは、数字で評価が左右されることに疲弊してしまい、相談にこられました。

「このままでは自分がダメになってしまう」と言うので、数字を除外して、自分がやっていて楽しいことや、嬉しいことを書き出してもらいました。すると、経験を積み重ねたことで自分なりの営業手法がわかってきたこと、商品を使っているお客様が喜んでいる姿を目にして嬉しくなったことに気づいたのです。

その後、営業手法を後輩に伝えていくことで役に立ちたい、商品を多くの方に届けたいという気持ちになり、主体的に動けるようになったのです。

このように外発的動機から内発的動機につなげていくと、やる気が出てくることがあります。

モチベーションが下がる3大要因

また、モチベーションは上がったり、下がったりするものです。この上がったり下がったりをジェットコースターのように繰り返すと、それだけで疲弊してしまいます。下がったモチベーションを上げるには、エネルギーが必要だからです。ですから、できるだけモチベーションが下がらないようにしなくてはなりません。

モチベーションが下がる3大要因として、

・続けられない

・無茶な計画を立てる

・人と比べる

が挙げられます。ですから、達成可能な計画を立てることが、モチベーションの維持のためにも重要です。


『目標や夢が達成できる 1年・1カ月・1週間・1日の時間術』P.186より

モチベーションが下がるポイントとして、注意しておくべき点がもう1つあります。それが「習慣化」です。習慣化するまでは、「まずはこのタスクに取り組み、その次はこれをして……」と、タスク1つひとつに対して意識がいきます。

ところが、習慣化されると、意識しなくてもできるようになるので、やることが当たり前になり、やっていても特におもしろみを感じることがなくなってしまいます。

だから、習慣化したタスクばかりやっていると「あれ? 毎日同じじゃない?」と停滞感が出てきてしまうのです。

習慣化したタスクは、毎日やる、いわばやって当たり前のタスクです。その習慣化したタスクをこなしていくことだけに時間をかけるのは、いつまでも基礎準備運動にだけ時間をかけるのと同じです。

基礎準備運動は確かに大事ですが、例えば試合に勝つためであれば実践の時間も必要ですし、資格試験合格のためにはインプットだけでなくアウトプットの時間が重要となります。つまり、習慣化したタスクだけで目標を達成できるわけではありません。

未来のための種まき、目標達成に向けた、アウトプットや実践の時間をしっかり確保していきましょう。

また、モチベーションが下がりそうになったときの対応策を持っておくといいでしょう。普段から、楽しいこと、落ち着くこと、気分が上がること、気分が晴れること、心地よいこと、好きなことなど、自分がポジティブな気持ちになることをリスト化しておきます。そして、モチベーションが下がりそうなときは、意識してそれを実行する時間を取ります。

趣味のことをする、映画を観る、ジムに行く、おいしいごはんを食べる、お気に入りのカフェに行く、お気に入りの香りをかぐ、お花を飾るなど、手軽にできるものをピックアップしておきます。

そして、普段から、こうした自分にとって心地よいことで時間を埋めていくと、あまり大きくモチベーションが下がることはありません。日ごろから意識してその時間を組み込んでいきましょう。

自分への期待値を下げる

私がこの仕事を始めてから一番驚いたことは、無意識に自分にムチ打っていることにまったく気づいていない方が多いということです。私からすると、十分にがんばっているのに「まだまだ」と口をそろえて言います。

皆さんもぜひ、セルフチェックをしてみてください。次の設問の中に当てはまるものがいくつありますか?

□ がむしゃらにがんばってきたけど、このがんばり方はもう限界と感じている
□ 常に緊急案件に時間を使っていて、未来のために時間を使えていない
□ もっと行動スピードを上げて、生産性を高めたい
□ 好きなことをしているはずなのに、いつの間にか時間に追われて毎日疲弊している
□ やりたいことがありすぎて、つい睡眠時間を削ってしまう
□ 仕事時間とプライベート時間の切り替えがうまくいかない
□ 「経験のため!」と思って踏ん張ってはいるけど、実は心がついていかないことを何年も続けている
□ まだまだ、もっとがんばれると思っている

3つ以上当てはまる方は、無意識に自分にムチ打つ「隠れがむしゃらさん」かもしれません。

個人的にも、何かやると決めたら、やはり最後まで努力をしたいと思うので、つい自分にムチ打ってしまうのはわからなくもありません。しかし、それをわかった上でがんばっているのであればいいのですが、気づいていないというのは要注意です。

自分で気づかぬうちに、心身ともに負荷をかけています。せっかく目標に向かって行動していても、途中で倒れてしまったら元も子もないのです。

「隠れがむしゃらさん」は自分への期待値が高いのが特徴です。自分に期待しているということ自体、とても素晴らしいことです。「まだまだもっとできる!」と自分を鼓舞できるのは、目標達成に向けて行動の継続のためにも必要な要素です。

しかし一方で、「これじゃまだ足りない」「こんなんじゃダメだ」と、「今」の自分を否定していることにもなります。この状態でいると、思ったような結果が出なかったり、行動が止まってしまったり、計画通りにできなかったりしたときに、「やっぱりまだダメだ」と自分への否定を積み重ねていくことになります。

大切なのは、達成する体験を重ねること

「今」の自分も十分がんばっています。自分で自分のことをねぎらってあげましょう。

私は苦しい局面に立ったとき、明石家さんまさんの名言「生きてるだけで丸儲け」を思い浮かべます。そう、生きていること自体が奇跡だし、やりたいことがあることも幸せなことだし、生きていたらいくらだってチャンスはあります。


上げすぎた自分への期待値を下げる方法を3つ挙げるので、試してみてください。

1つ目は、振り返りの際にまずはできたことに目を向けることです。できたことに対して当たり前と思うのではなく、できたこと自体を素直にほめてあげましょう。

2つ目は、現実的な目標を設定して、達成する体験を重ねることです。達成意欲を満たしていくことが、自分への信頼を高めることにつながります。

3つ目は、睡眠、運動、食事の時間をしっかり取ることです。体の健康は心の状態も左右します。疲労感を取るだけでも、ポジティブな考え方ができるものです。

目標に向けて走るためには、心身の健康もとても重要です。無理して自分を追い込むより、睡眠、運動、食事の時間をしっかり取ってください。私も睡眠は7時間以上、毎日ウォーキング、週3回のピラティス、外食は最小限に抑えることを意識しています。

ぜひみなさんも参考になさってください。

(吉武 麻子 : TIME COORDINATE(株)代表取締役、タイムコーディネーター)