広汽集団はEVのコア技術に積極投資を続けている。写真は広州モーターショーで全固体電池の搭載計画を発表する馮興亜・総経理(同社ウェブサイトより)

中国の国有自動車大手の広州汽車集団(広汽集団)は11月17日、EV(電気自動車)の性能を大幅に高める全固体電池を2026年から車両に搭載すると発表した。同社の総経理(社長に相当)を務める馮興亜氏が、広州モーターショーでのプレゼンテーションで計画を明らかにした。

全固体電池は、リチウムイオン電池の電解質を液体から固体に置き換えたものだ。従来型の電池よりエネルギー密度を大幅に高められると同時に、(液体を使わないため)液漏れや発火、破裂などの心配がなく、EVの安全性を改善できる。

広汽集団の説明によれば、同社が開発中の全固体電池セルは(十分な)安全性と信頼性のマージンを確保したうえで、1キログラム当たり400Wh(ワット時)のエネルギー密度を達成したという。液体電解質を使う車載電池のエネルギー密度は、現在主流の製品で同200〜300Whであり、その1.3〜2倍に相当する性能だ。

出資先が2025年の量産を計画

「全固体電池の市販車への搭載は、3つのステップを経て進められる。第1ステップは、技術開発と(電池の)生産体制の立ち上げ。第2ステップは、自動車メーカーとの協業を通じたチューニングと小ロットでの試験搭載。第3ステップは、量産技術の確立と市販車への搭載だ」

そう解説するのは、全固体電池の研究開発を手がけるスタートアップ企業「清陶能源(チンタオ・エナジー)」の総経理を務める李峥氏だ。広汽集団は戦略投資家の一社として、清陶能源に出資している。

広汽集団が発表した「車両への搭載」が、上述の3ステップのどれに当たるかについて、同社は明確にしていない。なお、清陶能源は全固体電池の量産を2025年に開始する計画だ。

全固体電池は次世代の車載電池の本命であり、電池メーカーだけでなく自動車メーカーも研究開発や量産計画を競っている。

例えば、国有自動車最大手の上海汽車集団は前出の清陶能源と協業し、2025年上半期から全固体電池を搭載する複数車種のEVを投入、同年末までに合計10万台を販売する計画を打ち出した。

ただし世界に目を転じると、全固体電池の技術開発では日本メーカーが最も先行しているとの見方が主流だ。

「日本のトヨタ自動車は(全固体電池に関する)膨大なノウハウを蓄積している。全固体電池の量産は、トヨタが最初に実現する可能性が高いだろう」。電池技術の専門家である上海交通大学教授の薄首行氏は、財新記者の取材に対してそう述べた。

超高速充電技術も開発

広汽集団は全固体電池のほかにも、EV関連のサプライチェーンに幅広い布石を打っている。

例えば、研究開発部門の広汽研究院で超高速充電技術を開発していたチームをスピンオフさせ、2020年9月に「巨湾技研(グレーター・ベイ・テクノロジー)」を設立。同社は超高速充電に対応した新型電池の量産を2023年10月に開始した。


広汽集団傘下の因湃電池科技は大規模な電池工場を建設中だ(写真は広汽集団のウェブサイトより)

また、広汽集団の子会社で独自ブランドのEVやPHV(プラグインハイブリッド車)を生産・販売する広汽埃安(アイオン)は、車載電池および蓄電システム用電池の新会社「因湃電池科技」を2022年10月に設立した。


本記事は「財新」の提供記事です

因湃電池科技は広東省広州市内に大規模な工場を建設中で、2024年3月までに量産を開始。さらに、2025年末までに年間生産能力をEV60万台分に相当する36GWh(ギガワット時)に拡大する計画だ。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は11月18日

(財新 Biz&Tech)