10月16日、訪中したチリのボリッチ大統領(左から4人目)と北京で会見した青山控股集団の項光達・董事局主席(右から4人目、同社ウェブサイトより)

中国の民営金属大手の青山控股集団が、南アメリカのチリに2億3300万ドル(約348億円)を投じて車載電池用の正極材料の工場を建設することがわかった。

同社の子会社の永青科技が事業主体となり、2025年5月の生産開始を目指す。新工場では、リン酸鉄リチウムの正極材料をフル稼働時に年間12万トンの生産する計画だ。

創業トップがチリ大統領と会見

「チリは、世界最大級のリチウム資源国であり輸出国の1つだ。チリ政府から支援してもらえるなら、将来はリチウムイオン電池の(材料から電池まで一貫生産できる)工業団地を建設し、周辺国の資源もあわせて取り入れていきたい」

青山控股集団の創業トップの項光達・董事局主席(会長に相当)は10月16日、中国を訪問中のチリのガブリエル・ボリッチ大統領と北京で会見した際にそう述べた。

チリ産業振興公社(CORFO)が同日付で発表した声明によれば、青山控股集団の現地工場には年間1万1244トンの電池用炭酸リチウムの供給を2030年まで優遇価格で受けられる権利が与えられた。

リチウム資源の優遇価格での供給は、チリ政府が2022年8月から始めた外資誘致政策の一環だ。それと引き換えに、チリ政府は国内に(外国の電池メーカーによる)車載電池関連の工場建設を求めている。


世界最大級のリチウム産出国のチリは、優遇政策を講じて電池工場の誘致を図っている(写真はチリのリチウム生産大手SQMのウェブサイトより)

中国のEV(電気自動車)最大手の比亜迪(BYD)は、青山控股集団に先んじてこの優遇政策の適用を受けた。BYDはチリに2億9000万ドル(約434億円)超を投じてリン酸鉄リチウムの正極材料工場を建設し、その見返りに年間1万2500トンの電池用炭酸リチウムの供給を2030年まで優遇価格で受けることになっている。

チリとFTA結ぶアメリカに輸出

車載電池工場の建設地としてのチリの強みは、リチウム資源の豊富さだけではない。チリはアメリカとFTA(自由貿易協定)を結んでおり、電池材料をチリで生産してアメリカに輸出すれば、アメリカの「インフレ抑制法」に基づく優遇措置の対象になる。

2022年8月に成立したインフレ抑制法には、アメリカの消費者が条件に適合したEV(電気自動車)やPHV(プラグイン式ハイブリッド車)を購入する場合に、1台当たり最大7500ドル(約112万円)の税額控除が受けられる優遇措置が盛り込まれた。


本記事は「財新」の提供記事です

車載電池に関しては、材料となる(リチウムなどの)重要鉱物の40%以上をアメリカ国内またはアメリカとFTAを締結した国で生産することが条件だ。これを満たせば、1台当たり3750ドル(約56万円)の税額控除が適用される。

(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は10月17日

(財新 Biz&Tech)