ガソリン価格が過去最高水準を更新するなど、日本株をとりまく状況は必ずしもバラ色とはいかない。だが外国人投資家が超強気になっているのはなぜだろうか(写真:ブルームバーグ)

前回の「日経平均4万円への上昇相場がいよいよ始まった」(9月4日配信)では、結論として「10月よりも前に買いの作業を終えてほしい」と訴えた。

もちろん、先行きの日経平均株価を「4万円だ」「5万円だ」と唱えたところで、目先は今年の7月3日につけた33年ぶりの高値3万3753円を抜かなければ何も始まらないのは明らかだ。「10月よりも前に買いを終えてほしい」としたのは、逆に言えば「7月高値を抜くのは10月だ」という意味を含んでいた。

しかし、先週の木曜日と金曜日、9月14〜15日の強さは予想以上だった。日経平均はこの2日間で826円高となり、3万3000円台に一気に乗せ、前出の7月高値に迫った。

銀行などバリュー系の大型株が主導する相場が続いているということもあり、すでにTOPIX(東証株価指数)は日経平均よりも早く今年の高値を更新している。だが、ハイテク系銘柄が多い日経平均で、今の経済環境を考えると、「不安はあっても明確な買い材料がないのに、なぜこんなに高いのか?」と、兜町では議論沸騰である。

日経平均は「明確な買い材料がなくても安心」?

こじつけようと思えばいくらでも材料はあるのだが、意見の大半を占めつつあるのが「安全パイ」というキーワードだ。

つまりは「日本に対する相対的優位性を再認識した外国人投資家が、夏休みを切り上げて市場に戻って、先物買いに動いたのではないか」ということだ。確かに「景気低迷の中国」「スタグフレーション(景気停滞下の物価上昇)の欧州」「利上げ継続のアメリカ」に対して、日本には大きな不安がない。

しかも13日は岸田政権での内閣改造が終わったが、このあとは解散総選挙を勝つための経済対策・強力な補正予算編成、2015年に政策として掲げられた「名目GDP600兆円」達成、さらには「デフレ脱却宣言」まで期待できる。このようにして2024年への相場の流れを考えると、外国人投資家が「日本株は安全パイだ、大丈夫だ」と考えても不思議ではない。

「日経平均が今年の高値を抜けてくるのは10月」という話をしたが、もちろん9月相場もあと約2週間残っており、今月中の高値更新の可能性も大いにある。ただ、安いところを待っていた逆張りの個人投資家などは、思うような買いタイミングがつかめず、焦っている向きも多いと思う。相場には高い日もあれば安い日もある。このあとの2週間、焦らずに行きたい。

今回は大相場、株価が下がったときの心得は?

この局面で避けてほしいのは、株価が安い日があったときに「ああ、高いところで売っておけばよかった」と後悔しないことだ。そんな気持ちでいると、次に株価が高い日が来たときは、つい売ってしまいがちだ。

もちろん、そのあとに大きな下げがあれば、売ってしまった株を再び買うこともできる。だが、高い日が何度かあると、やはり売ってしまいたくなる。もし、そこで終わらず「2段上げ相場」が明らかにスタートしたときに「手持ち株が残っていなかった……」ということになりがちだ。

もっとも、もしそうなった場合でも、最初に売った水準よりも高い水準で買う勇気(投資の力量)があれば、今回の大相場はそれほどの問題でもないのだが……。

さて、ECB(欧州中央銀行)理事会はすでに14日に終了したが、今週は20日にアメリカでFOMC(連邦公開市場委員会)の結果が、21日には英国の金融政策委員会を筆頭に、インドネシア、トルコ、スイス、スウェーデン、ノルウェー、南アフリカの中央銀行による政策が発表される。もちろん、21〜22日は日本銀行の金融政策決定会合があり、終了後は植田和男総裁の記者会見へと続く「中銀ウィーク」だ。

さらに、22日には欧米9月のPMI(購買担当者景気指数)が相次いで発表される。16時15分以降、フランスを皮切りにドイツ、ユーロ圏、英国、アメリカの順番となるが、これらがわれわれに最新の欧州の景気実態を知らせてくれる。

「欧米PMI」「日銀会合」後波乱でも「買い姿勢」変わらず

PMIは文字どおり経済現場の責任者からの情報(アンケート)で、今後の景気動向を予測する先行指数として最もタイムリーでホットな景気指数であることから、筆者はこの指標を極めて重要視している。すなわち「製造業」「サービス業」「製造・サービス2つを足した総合」の3つで成り立ち、まさに現場の匂いを伝えてくれるのだ。

とくに欧州の総合PMIを例にとると、今回は直前8月の改定値が仏46.0(7月は46.6)、独44.6(同48.5)、ユーロ圏46.7(同48.6)、英48.6(同50.8)だった。これらは景況感が上向きかどうかを測る基準である50をすべて下回っているだけでなく、7月からすべて減速している中で、9月の数字が発表されるのだ。

低下傾向にある数字が、一段と悪化するのか。それとも、底入れの兆しが見えるのか。折しも14日のECBでは来年のインフレ率を3.2%と、6月予想の3.0%から引き上げたこともあり、欧州のスタグフレーション進行を印象づけないかと懸念している。

最後に、日銀金融政策決定会合や植田総裁の記者会見をどう予想すればいいだろうか。先週は一部のメディアで「政策変更の可能性あり」の報道がなされたが、午後に否定的な報道もあり、結局は銀行株が乱高下する、激しい値動きとなった。

三井住友フィナンシャルグループを例にとると、14日の終値7459円から、15日は7667円の高値のあと、14時過ぎには7317円の安値をつけるといった具合だ。このことからもわかるように、今回の植田総裁の記者会見は市場サイドではかなり神経過敏になっている。

このように、日経平均は高値を前にして、ごく短期では波乱もありの情勢だ。だが、「下げたら買い」の投資姿勢は変えることはまったくないと思っている。どうせなら、ある程度大きく下げて、目一杯買わせてくれないか、などと言ったらちょっと言いすぎだろうか。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(平野 憲一 : ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト)