出来たてがおいしい「揚げ出し豆腐」の作り方を伝授します

料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作る方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は「揚げ出し豆腐」です。

揚げ出し豆腐は「揚げたて」がおいしい

今日は「揚げ出し豆腐」の作り方をご紹介します。居酒屋の定番おつまみの1つで、人気の高いメニュー。サクッとした衣と豆腐のやわらかさに、だしが絡むとたまらないおいしさになります。家でつくれば揚げたての極上のおいしさが味わえる一方、自分でつくるにはなかなか難しい料理でもあります。

よくある失敗は「豆腐が崩れてしまう」または「豆腐から衣がはがれてしまう」というもの。お店のフライヤーであれば豆腐が油につかっている状態をつくりやすく、崩れたり、衣がはがれたりするリスクを減らせますが、たくさんの油を使いづらい家庭では難しい手法です。

一般的なレシピではその解決策として崩れやすい絹ごし豆腐ではなく、もめん豆腐を使う場合もありますが、絹ごし豆腐のなめらかさは捨てがたいもの。そこで今回は絹ごし豆腐を使って上手に揚げるコツを伝授します。

揚げ出し豆腐の材料(2〜3人分)
豆腐     1丁(350g)
塩      小さじ1/4
片栗粉    適量
水      250ml
しょうゆ   大さじ2
みりん    大さじ2
鰹節     2g
なめこ    1パック(100g)
青ネギ    適宜
揚げ油    適量

まず豆腐の下処理から。


おとうふ工房いしかわの「究極のきぬ」を使用しました

豆腐は1丁を6等分に切ります。豆腐は小さく切ったほうが衣とのバランスがよくなりますが崩れやすくなり、逆に大きくても扱いづらくやはり崩れる原因になります。

もう少し小さく切ることもできるかもしれませんが、作りやすさを優先すると6等分といったところ。慣れてきたら8等分にしてもいいでしょう。


豆腐を切るときは小さいまな板があると扱いが楽です

豆腐の両面に塩小さじ1/4を振り、キッチンペーパーで挟んで冷蔵庫で15分以上置きます。この工程がこのレシピの最大のポイントで、豆腐の水気をある程度切り、崩れにくさを確保します。キッチンペーパーの上におくと豆腐の水気はある程度切れますが、塩で下味がつきますし、表面の水気を除去することで衣がつきやすくなります。


豆腐の水切りには重しなどを使う場合も多いですが、なめらかさを優先します

その間にかけだしを準備しましょう。水250mlにしょうゆ大さじ2、みりん大さじ2、鰹節2gを準備します。


鰹節ではなく和風だしの顆粒を入れてもかまいません

すべての材料を鍋に入れて、沸いたら火を弱火にし、30秒煮ます。みりんのアルコール分を飛ばしたら出来上がりです。今回は細かい鰹削り節を使っているのでそのまま使いますが、だし用の鰹節の場合はこしてもいいでしょう。


好みの濃度にうすめた市販のめんつゆを使ってもかまいません

とろみ付けと味の補いとしてスーパーに行くと真空パックの状態で販売されているなめこを使います。なめこがパックで販売されているのは、水分が多く、鮮度が落ちやすいから。ときどき、古くなると酸味が出てきますが、乳酸菌が増えているだけなので食べてもただちに健康に影響が出るわけではありません。ただ、味は落ちるので、開封しない状態で、冷蔵庫で3〜4日間くらいが保存期間の目安です。


なめこの扱い方を覚えておくとみそ汁などにも便利です

なめこは袋から出したら、軽く洗ってから使います。ぬめりには栄養や風味が含まれているので、水で洗うときはぬめりを落としすぎないように、とよく言われますが、なめこの表面のぬめりは表面の細胞と結びついているので少々洗ったくらいでは落ちません。神経質にならなくても大丈夫です。

【2023年9月16日21時00分追記】初出時から一部文言を修正しました。


なめこのとろみがつくことで味を濃くすることができます

キノコは生では食べられないので、先程作ったかけだしで1分ほど火を通します。これでかけだしの完成。


なめこの代わりに大根おろしを加えてもおいしいです

いよいよ豆腐を揚げていきますが、その前に青ネギを刻んでおきましょう。フライパンに揚げ油を1cmほどの高さまで張り、中火にかけて170℃くらいまで加熱します。


薬味は青ネギではなく白ネギやミョウガ、オクラなどでもいいでしょう

豆腐のまわりに片栗粉をまぶします。水切りしたことで豆腐は崩れにくくなっていますが、やはり作業は丁寧に。衣をまぶしてから時間を置くと、豆腐から水が出てきて衣がはがれるので表面にまぶしたら揚げ油に入れていきます。


片栗粉はまんべんなくつけるようにします

火加減で油の温度を保ちながら豆腐を揚げていきます。この時、豆腐の4面を揚げようと箸で触ると豆腐が崩れるので、表と裏の2面を揚げるようにします。そのためには油の量の調節が必要です。油が足りなければ豆腐の高さの半分まで足すことで、失敗を防げます。


揚げ油には米油を使っています

油に接している部分が固まったら箸で裏返していきます。反対側も加熱し、衣を固めるように加熱していきます。


箸も断面が四角いものを使うと豆腐にかかる圧力が分散するので作業がしやすいです

カリッとしてきたら引き上げ、軽く油を切ります。加熱しすぎると豆腐から水分が出てきて、やはり衣がはがれるので箸で慎重に触ってみて、全体が固まっていればOKです。


揚げたてに塩を振って食べると至福の味です

盛り付けていきましょう。


皿は少し深いものを使い、スプーンを添えると食べやすいでしょう

だしをかけ、青ネギを散らせば出来上がり。かけだしは鰹節だけで仕上げていますが、昆布のうま味を加えてもいいでしょう。三つ葉や青じそ、ミョウガ、青唐辛子、柚子など季節にあわせて薬味を変えれば年中楽しめる料理です。だしをかけてから時間を置くと衣のサクサク感がなくなるので出来たてを味わうのがベスト。


だしに水溶き片栗粉でとろみをつける場合はしょうゆの量を少し減らすといいでしょう

この揚げ出しという技法は豆腐だけではなく、さまざまな食材に応用できます。例えば、かぼちゃや里芋をゆでてから粉をまぶし、揚げたものにだしをかけるとたまらないおいしさ。

アボカドなども揚げ出しにするとおいしい食材です。アボカドは半分に切ってから種をとり、6等分にして皮をはいたものを準備します。やはり、薄く塩を振ってから片栗粉をまぶして揚げましょう。


多少硬めのアボカドでもおいしくできます

大根おろしを添えてかけだしを注ぎます。


やはり揚げたてのアボカドに塩を振っただけでも美味です

豆腐の揚げ出しが定番だとすれば新定番にしたいのがこういった種々の食材の揚げ出し。揚げ物はハードルが高い調理法ですが、加熱時間が短いため上手に使うと日々の食事が豊かになるでしょう。


アボカドの濃厚さを大根おろしがやわらげます

(写真はすべて筆者撮影)


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(樋口 直哉 : 作家・料理家)