家族団らんの定番メニューのひとつ「カレー」。今でこそ子どもから大人まで幅広い世代から大人気のメニューですが、1960年代頃まで は辛いカレーが主流だったことから、“大人”の食べ物でした。そこで、カレーを家族みんなで楽しめるようにと開発されたのが、今年60周年を迎えた「バーモントカレー」です。

発売から60周年!「バーモントカレー」の裏側に迫る

しかし、なぜ大人向けだったカレーを子どもも食べられるものにしたのでしょうか? その秘密を探るべく、今回はハウス食品 食品事業本部 チームマネージャー光安真佐子さんにお話を伺いました。

●家族みんなでカレーを楽しめるように

バーモントカレーの誕生は1963年。当時、カレーは辛くさらっとしていて、大人の食べ物でした。しかしながら、各家庭では子どもでも食べられるようにと、牛乳やハチミツ、果物を入れてマイルドな味わいにする工夫をしていたそうです。

「この時代は高度経済成長期で、これからはお子さんが食卓の中心になっていくだろうという背景もありました。そこで、“家族みんなでカレーを楽しんでもらいたい”という想いからバーモントカレーの商品開発はスタートしました。

ポイントとしては『辛くない』カレーですが、辛さはカレーの基本となる部分です。辛さをとってしまうと、どうしても味の輪郭がぼやけてしまうんですよね…。そこでどんなものがいいのか試行錯誤した結果、リンゴとハチミツを加えることにたどり着きました」(光安さん、以下同)

当時としては挑戦的だったまろやかなカレー。それゆえ、最初はなかなか受け入れられなかった部分もあったそうです。しかし、CMや試食などで宣伝活動を行った結果、一躍品切れ状態が続くほどの人気商品に! 今では、まろやかなカレーの存在も当たり前になりましたよね。

「ハウス食品ではほかにもルーカレーのブランドがあるんですけど、やっぱり中辛がいちばんの人気なんです。でも、バーモントカレーは甘口と中辛が競っているような状態で、根強い人気が甘口にはありますよ」

また、バーモントカレーでは「辛口」も販売していますが、少し驚きの事実も。

「カレーの辛さを5段階評価で表しているのですが、バーモントカレーの辛口は真ん中の3に設定しているんです。だから、辛口の中でも初心者向けの商品。『食べやすいほどよいスパイス感の辛さ』というところがこだわりで、どんな方のお口にも合うのかなと思っています」

ちなみに、“バーモント”という名前は、アメリカのバーモント州に民間療法として伝わるりんご酢とハチミツを使った「バーモント健康法」に由来して名づけられたそうです。

●時代に合わせて変化していく味

60年の歴史の中で、少しずつ味も時代に合うものに変化し、これまで15回のブラッシュアップを行っています。今の時代に重視されているものを光安さんに尋ねると「味のコク」だと教えてくれました。

「野菜をたくさんとりたい、ご飯をたくさん食べたい、というところでコクを大事にされているのかなと思います。商品の味を変化させていくときも、『食べ飽きないおいしさ』を追求するために、試食の際は毎回必ずご飯と一緒に食べるようにしています。カレーだけで食べておいしくても、もしかしたらご飯と食べたときにものたりなさを感じてしまうかもしれない。だから、カレーとご飯の組み合わせで考えるように気をつけています」

また、時代に合わせて、白米だけではなく、ブロッコリーライスやカリフラワーライスと合わせたり、具材を豆腐にしてみたり、といろいろと工夫を凝らしたアレンジレシピも公開されているそうです。

「おうちによってカレーのつくり方は少しずつ違う。だからそれぞれのご家庭のおうちカレーの味が出来上がると思うんです。ただ、私はレシピどおりにつくった味がおいしいと思っています。裏面のレシピどおりにつくったバーモントカレーのおいしさをぜひお試しいただきたいですね」

●ありそうでなかった“レトルト”のバーモントカレー

バーモントカレーといえば、“ルー”のイメージがありますが、そのラインナップはニーズに合わせて少しずつ広がりを見せ、現在では5タイプ販売しています。

「こちらの『プライムバーモントカレー』は、カロリーが50%オフで脂質も控えめの商品のため、ダイエット中の方はもちろん、カレーが少し胃に重いと感じる人にもぴったりです。また、パウダータイプなので、野菜炒めやチャーハン、スープなどにもご使用いただけますよ」

カロリーオフのカレーということもあって、ご飯もブロッコリーライスやオートミールと組み合わせて食べている方も多いのだとか。そして、少し意外な商品が、60周年のタイミングで満を持して登場した“レトルト”です。

「じつはこれまでレトルトのバーモントカレーはなかったんですよね。というのも、ご家庭で具材を煮込んでつくる味わいをレトルトカレーで再現するのが難しく、課題だったんです。

別のグループがレトルト製品の開発を担当してくれていたんですけど、調理型担当の私としてもバーモントカレーの譲れないおいしさというものがある。だから、やっぱり妥協できない部分もあって…。でも、何度も何度も試作を重ねて納得のものができたので、このタイミングで発売させていただきました!」

このほかにも、食物アレルギー(※)をもたれている方でも楽しめて、お子さんの初めてカレーにもぴったりな「特定原材料7品目不使用 バーモントカレー」や、料理に振るだけでカレー味になる「味付カレーパウダー バーモントカレー味」といった商品が発売されています。

※特定原材料7品目

●みんなで楽しめることを目指して

60年経っても変わらず愛されるバーモントカレー。おいしさの秘密は「甘さと辛さ、香りのバランスが調和されたルー」だと光安さん。

「最初に食べたときには甘さが、そのあとにカレーの香りがふわっと広がって、最後に辛さで終わるバランスが食べやすいポイントです。ほどよいスパイス感がないとご飯の甘さに負けてしまったり、野菜との相性が悪かったりしますが、バーモントカレーは、そのバランスがとれているんだと思います」

そして、長く愛される秘訣はやはり、「みんなで楽しめる」ということ。

「小さなお子さんから大人までおいしく楽しめるのがいちばんのポイントですかね? おいしい即食は山ほどあるんですけど、みんなでおいしいよね、と言えるものはじつは少ないように感じます。そこの部分にうまくフィットしているのではないでしょうか」

最後に今後の目標をお伺いしたところ、「家族構造や世帯構造が変化していくにつれて、嗜好の変化も広がっていっているのでその点に対応をしていくようなことを今後も考えていきたいですし、バーモントファンの方たちをどんどん広げていくような活動をしたいですね」と笑顔で答えてくれました。

60年間愛され続けながらも先を見据えて進化していく「バーモントカレー」の今後の展開が楽しみです。