世界最高のサッカー選手の一人、リオネル・メッシが、米MLSのインテル・マイアミに移籍することになりました。メッシ選手は現在35歳。この年齢はサッカー界では「超ベテラン」になるかもしれませんが、この移籍の裏ではサウジアラビアが米国に挑戦状を叩きつけているようです。

↑サウジではなく米国を選んだメッシ

 

メッシ選手の移籍が決まった一方、フランスのスター選手、カリム・ベンゼマ(同じく35歳)がスペインのレアル・マドリードからサウジアラビアのアル・イテハドに移籍することが発表されました。2022年からサウジアラビアのアル・ナスルに所属するクリスティアーノ・ロナウド選手に続いて、新たなベテランのスター選手がサウジアラビアのクラブに移籍した格好です。

 

大ベテランのスター選手を次々に獲得するサウジアラビアの動きは何を意味するのでしょうか? スポーツ経済学を専門とするステファン・シマンスキー教授(米ミシガン大)は、MLSにとって痛手であると見ています。

 

これまでにも米国や日本、中国などが引退間際の世界的選手を獲得することで、国内リーグのレベルと認知度の向上を図ってきました。例えば、最近までJリーグのヴィッセル神戸には元スペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手が在籍していました(神戸を退団することになった同選手はサウジアラビアへの移籍が取り沙汰されています)。MLSでは2007年にデビッド・ベッカムがロサンゼルス・ギャラクシーに移籍。それ以降、数々の大物選手が欧州から米国に渡り、MLSの人気は拡大したと言われています。

 

しかし、ここに来てMLSにサウジアラビアというライバルが出現。MLSもロナウドやベンゼマを狙っていた一方、サウジアラビもメッシが欲しかったと言われています。サウジアラビアの出現で、これからMLSは引退間際のスター選手を獲得するために、いままで以上に多くのお金を支払わなければならなくなるとシマンスキー教授は論じています。

 

スポーツ経済学から少し視点を変えれば、米国とサウジアラビアの関係は外交面でも転換期を迎えています。サウジアラビアは米国と距離を置き、中国やロシアに接近していると言われています。この世界の「多極化」とサッカー界の動向は重なっている部分があるように見えますが、MLSもサウジアラビアのプロリーグも、サッカー界で覇権を握る欧州に対抗することはすぐにできないとシマンスキー教授は示唆。とはいえ、サウジアラビアはサッカー界の勢力図を塗り替えるかもしれません。

 

【出典】
Stefan Szymanski. Messi is heading to the US as Saudi Arabia kicks off bidding war with MLS for aging soccer stars. The Conversation. June 7 2023