「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」の症状・原因・受診の目安はご存知ですか?

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日常生活の中で、集中力がない・失敗が多い・人間関係でトラブルを起こしやすいなどの困りごとを抱えていませんか。

このような悩みを調べた際に、注意欠陥・多動性障害(ADHD)に行きついた人も少なからずいらっしゃるでしょう。

最近よく耳にする注意欠陥・多動性障害(ADHD)という障害は一体どのようなものなのでしょうか。

今回は注意欠陥・多動性障害(ADHD)の特性・原因・受診の目安などについて詳しく解説いたします。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)が疑われ詳しく知りたいと考える方は、是非ご参考になさってください。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状と原因

注意欠陥・多動性障害(ADHD)とはどのような症状ですか?

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は子供から大人まで幅広い世代にみられます。症状は年齢や性別によってさまざまですが、以下のようなものが代表的です。

集中できず注意力散漫

課題を終わらせるのに時間がかかる

物事に取り掛かるまでに時間がかかる

整理整頓が苦手

空間や時間の概念が薄い

感情が高ぶりやすく周囲とのトラブルが目立つ

落ち着きがなくじっとしていられない

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は自閉スペクトラム症や限局性学習症などの精神障害や、発達性協調運動症などの身体疾患と併発するケースもあるため、専門家による検査や相談を行ったうえで診断や治療に移ります。
幼少期から特性が表れる場合もあり、子供の育てにくさから養育者が医療機関などで相談した結果、診断されることも少なくありません。診断される割合は、子供の場合では男女比が3~5:1と男の子のほうが多く、大人の場合では男女間での差はほとんどありません。

原因を教えてください。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)の原因は一つだけではなくさまざまな要因が組み合わさっていると考えられていますが、はっきりとは解明されていません。脳の遺伝的な異常や生物学的な異常など、いくつかの要因が挙げられていますが、未だ研究段階であるといえるでしょう。
また、母親が妊娠中に飲酒喫煙高濃度ホルモン剤の摂取を行うと、子供がADHDになるリスクを高めてしまうことが分かっています。

病院を受診する目安を教えてください。

注意力が散漫・感情が高ぶりやすい・じっとしていられないなどの状態で、学校や仕事などの日常生活に支障をきたしている場合には、病院で受診するようにしましょう。
当事者が困りごとに気づいていない場合もあるため、家族や学校など周りの人が受診を勧めることも大切です。しかし、注意欠陥・多動性障害(ADHD)を含む発達障害は非常にデリケートな問題のため、本人への伝え方には十分な配慮が必要となります。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)の診断と治療

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は何科を受診すればよいですか?

注意欠陥・多動性障害(ADHD)が疑われる場合には、大人であれば精神科、子供であれば小児科で受診します。しかし、注意欠陥・多動性障害(ADHD)は専門医による診断や治療が必要なため、受診する際には発達障害に関する専門医がいる病院を選ぶことをおすすめします。
発達外来のある精神科または小児科が望ましいです。また、年齢や症状によっては対応できない場合もあるため、受診前に直接病院へ問い合わせるとよいでしょう。

どのように診断されますか?

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、世界保健機関(WHO)が定めるICDやアメリカ精神医学会が定めるDSMの診断基準に則って診断されます。障害の程度は軽度・中等度・重度に分かれ、症状の期間・程度・日常生活への影響などから判断します。
また、注意欠陥・多動性障害(ADHD)は自閉スペクトラム症など他の障害と特性が似ている部分があるため、それらの疾患との鑑別も行う必要があるのです。加えて、年代によって症状の表れ方が異なるため、注意欠陥・多動性障害(ADHD)は専門医による検査やヒアリングを重ねて慎重に診断を下します。

治療方法を教えてください。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)には療育心理療法薬物療法などの治療があります。療育では日常生活や学習面などのスキルアップを目的とし、カウンセリングや教育相談に基づき、困りごとに対する生活動作訓練(リハビリ)が行われるケースもあります。
不安や興奮など感情の高ぶりが目立つ場合には、心理療法でアプローチすると効果が期待できるでしょう。感情や行動を上手くコントロールできるよう、家族の関わり方や物事の受け止め方を改善するのです。
また、注意力や運動のコントロールを改善するために、薬物療法が行われる場合もあります。注意欠陥・多動性障害(ADHD)は病気ではなく生まれ持った特性であるため、治療は根治ではなく、困りごとを軽減し自信を持って社会生活を送れるようサポートするためのものです。そのため、治療は長期間にわたり継続することが重要となります。

どのような薬が使用されますか?

注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療に用いられる薬には、主にコンサータやストラテラなど神経伝達物質を増やすための薬と、インチュニブなどアドレナリンの受容体を抑制する薬の2種類があります。神経伝達物質を増やすことで運動や注意力のコントロールを改善し、アドレナリンを抑制することで過剰な感情の高ぶりなどを落ち着かせるのです。
特性の程度に合わせてこれらの薬を組み合わせたり量を調整したりしながら困りごとの軽減を目指します。薬物療法だけで注意欠陥・多動性障害(ADHD)を根治させることは難しいため、心理療法や療育を組み合わせることが一般的です。

注意欠陥・多動性障害(AHDH)の接し方や注意点

注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子供への接し方で注意することは?

注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子供への接し方で大切なことは、理解評価支援指導の4つを意識することです。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子供をもつ養育者は、子供の育てにくさから疲弊していることも少なくありません。しかし、一番苦しんでいるのは本人であり、困りごとを改善しようと悩んでいるのです。そのため、まずは子供の障害や日々悩んでいることを理解してあげましょう。
また、失敗の多さから自己評価が低くなっている場合があるため、努力していることや得意なことなどを積極的に評価することで自分に自信を持つ手助けになります。そのうえで、家庭・学校・病院などとも連携して注意力や運動のコントロールができるように指導し、治療を支援することが大切です。

大人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)はどこで診断してもらえますか?

大人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)は主に精神科専門の病院やクリニックで診断してもらえます。通常の精神科で診断や治療を行う場合もありますが、注意欠陥・多動性障害(ADHD)は発達障害に関する専門的な知識が必要なため注意が必要です。
また、大人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)は子供に比べて診断が難しいこともあり、専門医に診察してもらうことが望ましいでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

周りに理解され辛く、本人でも気づかない場合がある注意欠陥・多動性障害(ADHD)では、困りごとの悩みから不安やうつなどの心理的問題を抱える人も少なくありません。
そのため、早期発見・早期治療によって生活の質の向上を目指すことが大切です。治療を行うことで学校や職場での成績向上・人間関係におけるトラブルの減少・自己評価の向上が期待できるでしょう。治療は長期にわたりますが、継続することで日常の困りごとを軽減する手助けになります。注意欠陥・多動性障害(ADHD)が疑われる場合には、放置せずに医療機関などで相談するようにしましょう。

編集部まとめ


子供から大人まで幅広い年代にみられる注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、注意力や運動のコントロールの難しさから、学校・職場・人間関係など日常生活に支障をきたします。

時にはそれらの困りごとが原因で、自己評価が低くなり不安やうつなど心理的な問題を引き起こすケースもあるのです。

療育・心理療法・薬物療法などを継続的に取り入れながら、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の特性をコントロールし、生活の質の向上を目指すことが大切です。

日常での困りごとから生き辛さを感じる場合には、我慢せずに専門のクリニックや病院などで相談しましょう。

参考文献

今村明先生に「ADHD」を訊く(日本精神神経学会)