「よくうそをつく人」の心理状態とは…

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「うそつき」な人、あなたの身近にいませんか。ちょっとしたことですぐうそをついたり、悪びれずに平気でうそを重ねたりする人と接したことがある人は少なくないようで、「息をするようにうそをつく人いるよね」「うそつきな人は嫌い」「信用できない」など、ネガティブな声が多く聞かれます。

 すぐうそをつく人、平気でうそを繰り返す人の心理とは、どのようなものなのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

環境によって「容易にうそをつく人」になり得る

Q.「よくうそをつく」人の心理状態は、どのようなものだと思われますか。

小日向さん「心理は大きく『意図的なうそ』と『意図的でないうそ』の2つに分かれると思います。『意図的なうそ』とは、自身の利益のために明確な意志を持ってつくうそです。詐欺行為がその代表的なものになります。

一方、『意図的ではないうそ』とは、本人にはうそをついているという自覚がない、あったとしても明確な意図はないというものです。全く自覚がないものとしては、記憶障害や精神障害による虚言がこれにあたり、明確な意図がないうそとしては、『話を盛ってしゃべる癖』などがこれにあたります。盛っている部分はうそなのですが、当人は場を盛り上げる小細工程度の認識で話していることが多いのです。

なお、行為による成功体験は、その行為の繰り返し行動につながりますが、これはうそにおいても例外ではありません。また、成功体験を繰り返すたびにその行為を正当化する思考も補強されていくので、どんどん自分に都合よく考えるようになります。例えば、詐欺であれば『こんなうまい話にだまされる方が悪い』、人間関係においては『相手が傷つくから、うそも気遣いだ』といった考え方が正当化されていくということです」

Q.よくうそをつく人(平気でうそをつく人)の特徴はありますか。

小日向さん「特徴としては環境要因が大きいと考えています。つまり、その人の周りにうそをつく人が多いという環境です。

うそをつくことが当たり前の環境は、うそがもたらす犯罪性すら、まひさせてしまいます。さらに、『うそによって利益を得られる』という状況がある場合は、まひだけではなくうそを正当化する思考にもつながりやすいです。

『うそをついてはいけない』ということは、絵本や学校教育などで基本として教えられることです。しかし、日常生活を送る環境というのはそうした幼少期の教育を容易に飛び越えてしまいます。そういった意味では、環境によって、人はいつからでも容易にうそをつく人になる可能性があるといえます」

Q.相手にうそをつかれたとき、ネガティブな気持ちになるのはどのような心理によるものと思われますか。

小日向さん「うそをつくということは、自覚の有無にかかわらず、うそをついた人に必ず得や快楽があります。つかれた方は、それが感覚で分かっています。従って、ネガティブな気持ちになる理由の一つとしては、相手の得や快楽の代わりに『自分が損をした』という気持ちになることが大きいのだと思います。得や快楽を求める欲望には個人差がありますが、誰もが『損はしたくない』のです。

そういった意味では、損得勘定が強い人というのはうそに敏感なので、うそをつく側にとっては『うそをつきづらい相手』となり、損得勘定が少ない人は『うそをつきやすい相手』になってしまう可能性が高いと考えます」

Q.よくうそをつく人に対して、どのような接し方をするとよいでしょうか。

小日向さん「基本的には離れることが一番です。先述したように、うそをつき慣れている人の周囲もうそつきが多いです。従って、うそをつく人から人脈が広がっても人間不信に陥るか、自分もまたうそつきになるだけです。

しかし、長期的に関係を持ちたい相手であれば指摘してあげてください。『盛る』うそなどは、たいした自覚なくやってしまっている人が多いものです。『自分の経歴やエピソードを盛っても、周囲は盛り上がるどころか冷めた目で見ている』ことを、信頼関係ができている人から指摘されることで、認知が大きく修正されることも期待できると思います」

Q.うそつきな性質を改善する方法や、そのために望まれる意識・行動は。

小日向さん「環境を変えることが非常に大切です。『偽りのない自分ではいられない』という環境が、うそをつくことを当たり前にさせているのです。その環境につかっている本人は、それこそ息を吐くのと同じようにうそをついています。そのため、働きかけとしては、周囲がその環境から離すことが有効になると思います。

また、精神障害やパーソナリティー障害が背景にあるケースもあるので、環境から離れても改善が見られない場合は、医療などの専門家とつなげることも必要だと考えてください」