「粗大ごみ」を盗むのは犯罪? ごみを転売した場合は? 弁護士に聞く
春に引っ越しを予定しており、不要になった物や故障品などを処分する人も多いのではないでしょうか。基本的に一辺の長さが30センチメートルを超える物を処分する際は、粗大ごみとして自治体に回収を依頼する必要があり、費用がかかります。ところが、粗大ごみの回収依頼後、ごみ捨て場に置いている間に盗まれた事例もあるようです。
粗大ごみを盗んだ場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
窃盗罪などに該当する可能性
Q.そもそも、粗大ごみなどをごみ捨て場から持ち去った場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。
牧野さん「民法239条1項によると、捨てられている物は所有権が放棄されているため、持ち帰った人が所有権を持つことになります。ごみを持ち帰っても、法的責任を問われません。
ただし、ごみ集積所がマンションの敷地内などにあり『関係者以外立ち入り禁止』とされている場合、そこに勝手に入ってごみを持ち去ると軽犯罪法違反(1条32号。入ることを禁じた場所に正当な理由がなく入った罪)に問われる可能性があります。
また、自治体の財源にされている『資源ごみ』に該当する場合、ごみ集積所に出されると、自治体に所有権が移転したものと解釈されます。それを無断で持ち去ると、窃盗罪(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)や条例違反に問われる可能性があるので注意が必要です」
Q.自治体に粗大ごみの回収を依頼した人がその後、ごみを盗まれた場合、盗んだ相手に対して損害賠償を請求できるのでしょうか。
牧野さん「粗大ごみの所有権が自治体にあるとして、何らかの損害が生じていれば、盗んだ相手に損害賠償を請求できる可能性があると思われます」
Q.盗んだごみを転売した場合、より重い法的責任を問われる可能性はありますか。
牧野さん「資源ごみのように、財産的な価値があるごみを転売した場合、窃盗罪に加えて、古物営業法違反(3年以下の懲役または100万円以下の罰金もしくは併科)に問われる可能性があります」
Q.ところで、「不用品を無料で回収する」とうたう業者がいます。そもそも、許可なく他人から不用品を回収してもよいのでしょうか。
牧野さん「不用品回収業を始める際は、『古物商許可』の取得が必須です。古物商許可はリサイクル品を買い取るときはもちろん、それを中古品として販売したり、別のリサイクルショップなどに卸したりする際に必要となる許可です」
Q.では、そうした業者に粗大ごみに該当するような不用品を渡した場合、渡した人が法的責任を問われる可能性はありますか。また、業者から高額請求された場合、支払いに応じなければならないのでしょうか。
牧野さん「一般的に、業者は粗大ごみの所有権を譲り受けたことになるので、業者自身が処分すべきと解釈されるでしょう。その場合、不用品を渡した人は法的責任を問われません。
業者が粗大ごみを引き取る際に処分のための手数料を請求した場合、ごみを渡した人は、基本的にはそれを支払わざるを得ないと考えられます。ただし、費用があまりに高額な場合は、引き取りの依頼を撤回できる可能性があります」