ごみから大量の紙幣…持ち主が見つからない場合、どうなる? 謝礼金の支払い義務は? 弁護士に聞く
1月30日に札幌市内の資源ごみ回収施設で現金1000万円が見つかり、話題となっています。このように、ごみの中から大量の紙幣が見つかるケースがあります。持ち主が名乗り出ないケースもあるようですが、もし持ち主が見つからなかった場合、紙幣はどうなるのでしょうか。また、紙幣の持ち主は、発見者に対して謝礼金を支払わなければならないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
遺失物の保管期間は3カ月
Q.ごみから大量の紙幣が見つかることがあります。警察に届けられた後、持ち主が見つからなかった場合、紙幣はどうなるのでしょうか。
牧野さん「2007年に改正遺失物法が施行され、落とし主からの連絡を待つべき保管期間は6カ月から3カ月になりました(7条4項)。民法240条(遺失物の拾得)では、『遺失物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後3カ月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する』とあります。
さらに、遺失物法36条(拾得者等の所有権の喪失)では、『民法第240条(中略)の規定により物件の所有権を取得した者は、当該取得の日から2カ月以内に当該物件を警察署長または特例施設占有者から引き取らないときは、その所有権を失う』とあります。
つまり、遺失物の公告後3カ月経過すれば、拾った人はお金の所有権を取得しますが、その所有権取得の日から2カ月以内にお金を引き取らなければ、所有権を失うことになります。その場合、紙幣は国庫に納められます」
Q.紙幣の持ち主が見つかったとします。持ち主は、発見者に対して謝礼金を支払う義務があるのでしょうか。
牧野さん「遺失物法28条(報労金)の規定により、持ち主は、発見者に対して一定額の謝礼金を支払わなければならない義務があります。
同条の規定では、『物件(誤って占有した他人の物を除く)の返還を受ける遺失者は、当該物件の価格(第9条第1項もしくは第2項または第20条第1項もしくは第2項の規定により売却された物件にあっては、当該売却による代金の額)の100分の5以上100分の20以下に相当する額の報労金を拾得者に支払わなければならない』とあります。
つまり、持ち主は原則として、当該物件(紙幣)の価格の5%から20%の報労金を拾った人に支払わなければなりません」
Q.ごみの中から大量の紙幣を見つけたときに、警察に届け出ず持ち去ったとします。この場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。また、大量の紙幣のうち、一部を持ち去った場合はいかがでしょうか。
牧野さん「ごみの中から見つかった紙幣は、もともと遺失者が捨てる意思がなかったと解釈されるため、『遺失物』として扱われます。そのため、遺失物法では遺失物を拾った人はすぐに警察に届け出る義務があり、届け出を怠り、そのまま取得すると『遺失物横領罪』(1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料)に問われる可能性があります。
大量の紙幣のうち、一部を持ち去った場合も遺失物横領罪と解釈されるので、刑事責任に大きな違いはありません。ただし、『報労金の5%を先にもらっておこうと掠(かす)めた』などの事情がある場合、刑事責任が軽減される可能性があります」