“デザートは別腹”のメカニズム 「別腹」が本当にあるのか、医師に聞いた
世の中には、これ以上は食べられない満腹状態であっても、デザートであれば食べられるという人が一定数いますよね。このような人が、よく口にするのが「デザートは別腹」という言葉ではないでしょうか。しかし、満腹になれば食欲がなくなり、デザートであっても食べられなくなるはず。「デザートは別腹」の「別腹」は本当に存在するのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
“別腹”の正体は…
市原さんは、「満腹になった状態」について「満腹かどうかは、脳の奥深くにある『視床下部』の中枢神経の一つ『満腹中枢』の働きによって感じます」と説明しつつ、「食事を開始して胃での消化が始まり、約20分が経過すると、体内の脂肪細胞から、食欲を抑える働きがある『レプチン』というホルモンが分泌されるのですが、これが脳の満腹中枢を刺激して『満腹になった』と脳が判断するのです。もちろん、物理的に胃の中が食べ物でいっぱいになったときにも満腹と感じます」とコメント。
「『デザートは別腹』の『別腹』が本当に存在するのか」と“直球質問”をしてみたところ「『別腹』というものが実際に存在するわけではありません。いったんは満腹と感じても、胃での消化のスピードが速くなって、胃が食べ物を受け付けられる余力ができたことを『別腹』と呼んでいる」ということです。
では、なぜ「満腹でも食べられるようになる」のか。市原さんは「人は、自分の好きな食べ物を見たり、その匂いを嗅いだりすると、『βエンドルフィン』というホルモンや『ドーパミン』という神経伝達物質が脳から分泌されて、食欲が湧きます」と説明。
「そして、胃の活動を活性化させる働きがある『オレキシン』というホルモンも脳から分泌され、胃の中にあった食べ物が普段よりも早く消化されて、小腸へ送り出されます。その結果、胃に余裕ができ、さらに食べることができるというわけです」と解説してくれました。
どうして、「デザートなどの甘いものは『別腹』として食べることができる」のか……。こちらも質問したところ、「人には、目の前にある食べ物が『甘いもの』と認識すると、先述したβエンドルフィンやドーパミンの分泌が、より促進される性質があります。同時にオレキシンも分泌されて、胃の活動が活発化することから、『甘いものは別腹』という考えが広まったのではないでしょうか」と答えてくれました。
ここで、もうひとつの疑問が生じます。「主食やおかずは、『別腹』として食べられないのか」ということ。
市原さんは「主食やおかずは、一般的に『甘いもの』として認識されていません。そのため、甘いものを食べたときのように、βエンドルフィンやドーパミンの分泌が活発にならず、『別腹』として食べられないでしょう。主食やおかずで、よほど好きな食べ物でなければ、別腹の状態にはならないと思います」と丁寧に教えてくれました。
続けて、「『別腹』の過信は危険」ともコメント。「デザートなど好きな食べ物をたくさん食べられ、幸せと感じる人もいるかもしれませんが、別腹とは単に、“プラスで食べ物を摂取しているだけ”なのです。カロリーや糖質、脂質、塩分などを過剰に摂取する可能性があります。決して過信しないでください」と語ってくれました。
「デザートは別腹」の正体は、「オレキシン」が分泌され、胃に余裕ができた状態のこと。しかし、市原さんが言うように、過信すると危険なので、過剰摂取には気を付けましょう。