CLで硬くなり、チャンスを逃した古橋

 セルティックとそこでプレーする日本人選手にとって、飛躍の場となるはずだったチャンピオンズリーグ(CL)だが、結果的に失望ばかりを残すことになった。


国内リーグでは2試合連続ゴールも、CLでは振るわなかった前田大然 photo by Getty Images

 目立ったのは、決定力の欠如と逸した好機の数々──セルティックはここまでの5試合で68本のシュートを打ちながら、たったの3ゴールしか記録していない。確率にすると4.4%だ。むろん、これを個人のせいにすることはできないが、日本代表の前田大然と古橋亨梧が複数の決定機を逃したのも事実である。

 筆者がグループステージの前にUEFA公式のインタビューでふたりと話した時、どちらもその至高の舞台に立つことに胸を膨らませ、きらきらと目を輝かせていた。最近、引退を発表した中村俊輔のように、セルティックを次のレベルに押し上げることを自らに期待しているようだった。

 2006年11月、中村は本拠地セルティック・パークでマンチェスター・ユナイテッドを相手に見事な直接FKを決め、チームを(大会がチャンピオンズリーグに改称されてから)初の決勝トーナメントに導いている。前田も古橋もその先達のように、欧州のトップコンペティションで厳然たる足跡を残そうと意気込んでいたわけだ。

 ところが、現実は甘くなかった。どちらもゴール前のチャンスをふいにし、直近のホームでの第5節のシャフタール戦でもそれは繰り返された。1−1で迎えた63分、ギオルゴス・ギアクマキスからの完璧なスルーパスに反応した古橋は、GKアナトリー・トルビンを破るだけだったが、力のない左足のシュートは GKに易々とセーブされてしまった。

 ここで古橋がCLにおける初ゴールを決めていれば、チームは今季初勝利を収めたかもしれない。そうなれば、最終節にヨーロッパリーグ出場権をかけて戦うことができた。

 リーグ戦ではこうしたチャンスを苦もなくゴールに収めてきた古橋だが、CLというハイレベルな舞台では緊張して硬くなり、チャンスを逃して自信を失い、また次の好機を外す、という負の連鎖に陥ってしまったのだろうか。

前田は国内リーグでようやく2ゴール

「せっかくすばらしい動きでチャンスを迎えたのだから、キョウゴはゴールを決めるべきだった」とBBCスコットランドで解説を務める元セルティックのジョン・コリンズは話した。「しかもあれは勝利に繋がる好機だった。だがセルティックの攻撃陣は、このレベルで何度も同じような機会を逃している」。

 おそらくこの元スコットランド代表MFは、前田のことも暗に示している。彼もまた、古橋と同様に、今季のCLで決めるべきシュートを外してきた。こちらは国内リーグでも最近になってようやく2ゴールを記録したばかりだ。

 献身的なスプリントを生かした守備面の貢献は確かに大きいが、アタッカーならば、やはり目に見える結果が欲しい。

「彼がこのレベルでプレーを続けるつもりなら、守備面の働きだけではなく、フィニッシュを磨く必要がある」とアンジェ・ポステコグルー監督は第4節のライプツィヒ戦(0−2の敗北)後に指摘した。「いいポジションに入っていけるのに、得点に繋がらない。とはいえ、彼はまだ成長中の選手だから、見捨てるわけにはいかない。信じ続けよう」。

 解説者のコリンズはしかし、ポステコグルーが我慢し続けるだけで十分なのかと疑っている。

「指揮官が彼らの能力をこれ以上、引き出すことは可能なのだろうか」とコリンズは言う。「私の目には、もうすでにすべてを絞りきっているように見える。そうだとしたら、次の移籍市場で新戦力を物色するほかない」。

 日本の同業者から、前田と古橋はカタールW杯に臨む日本代表の最終メンバーに入りそうだと聞いている。ただし客観的に言って、現在のセルティック──今季のCLを含む──で、もっとも目立っている日本人選手は旗手怜央だ。

CLで決められないアタッカーたちがW杯で決めらるのか

 それぞれのチームにはそれぞれの理由がある。とはいえ、CLで絶好機を逃し続けるアタッカーたちが、同じくトップレベルのW杯でネットを揺らすことは可能だろうか。しかも相手は、ドイツ、コスタリカ、スペインだ。日本代表の森保一監督も熟考を強いられていることだろう。

 日本代表のW杯メンバーの発表は11月1日だと聞いている。CLのグループステージ最終節、敵地でのレアル・マドリード戦はその翌日に予定されているので、その選考とは無関係だ(いずれにせよセルティックはすでにグループ最下位が決定している)。

 代表監督にアピールする機会としては、週末のリビングストンとの国内リーグだけとなる。そして日本代表に選ばれたなら、残る数試合で自信を回復させ、とにかくフィニッシュの精度を高めなければならない。