「くる病」は「紫外線を避ける・ビタミンD不足」が原因なの?医師が監修!

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くる病は、ビタミンD不足や何らかの代謝異常で骨の石灰化が妨げられる病気です。

成長期までの子供に発症する病気で、きちんと治療しないと骨格異常や低身長に繋がるおそれがあります。

乳幼児にも発症しやすい病気です。近年は日光浴や紫外線を避けるようなライフスタイルに変わり、ビタミンD不足が原因のくる病は増加傾向にあります。

今回はそんなくる病の原因と治療方法・予防について紹介しましょう

くる病の特徴

くる病とはどんな病気ですか?

骨の石灰化がうまく機能せず、骨が柔らかくなってしまう病気 です。

人は一生同じ骨を使っているのではなく、常にできあがっている骨を壊しながら新しい骨を作っていくことで、硬くて丈夫な骨を維持しています。新しい骨を作る過程には、血液中のカルシウムやリンを使用します。

しかし、これらの成分が足りていないと硬い骨が作れず、骨が柔らかくなってしまうのです。また、カルシウム・リンを体内に吸収する時に役立つのがビタミンDです。

このビタミンDが不足していても正常な骨を作ることができません。

くる病は骨の成長軟骨閉鎖以前である成長期までの子供に発症し、成人が同じ症状を現した場合は骨軟化症と呼んでいます。

骨年齢で数えると、男子は17歳、女子は15歳までにこの病気にかかるおそれがあります。

症状について教えてください。

骨が柔らかくなることによる骨格異常が主な症状です。特に負担の大きい足に症状が出ることが多く、柔らかい骨が負荷に耐えられず、O脚やX脚などになることがあります。

また足を引きずって歩いているようにみえる、歩き方に違和感があるなど歩行障害を生じることがあります。成長期にみられるのが、身長が伸びない・背骨が曲がってみえるなど発育に関する障害です。

骨格以外には、歯ぐきが腫れたり、ひどいむし歯になったりするなど歯に関する症状が出やすいです。

くる病が重症の場合は、骨塩(骨密度)が不十分な弱い骨のために骨が曲がりやすい症状や足のしびれ、けいれんなどを伴う場合もあります。

原因は何ですか?

くる病には以下の3種類があります。

ビタミンD欠乏性くる病

ビタミンD依存症くる病

低リン血症性くる病

ビタミンD欠乏性くる病は、ビタミンD不足が原因で引き起こされます。ビタミンDは食事のほか、日光に当たることで身体の皮膚近くで作られています。

このビタミンが足りないと、骨を作るのに必要な成分であるカルシウム・リンがうまく血液中に取り込まれず、硬く丈夫な骨が形成されません。

またビタミンD依存性くる病はビタミンDが体内に充分あるにも関わらず、腎臓などの機能の問題でうまく働いていないのが原因です。

低リン血症性くる病はリンが足りていないことによって引き起こされるものですが、こちらもリン自体の摂取が不足しているケースと、臓器などの問題でリンがうまく機能していないケースに分かれます。

この病気の原因としては、ほとんどがビタミンDの欠乏によるものです。

どのような人に多い病気ですか?

ビタミンDの摂取不足に起因するくる病の場合は、偏った食生活や日光浴不足でビタミンD不足に陥っている人に多いです。

過度に日焼け対策をしている人、日照時間が少ない雪国などに住んでいる人はビタミンD不足に陥りやすいです。

また母乳にはビタミンDが含まれていませんので、完全母乳で育っている赤ちゃんにも注意が必要でしょう。

最近は母子ともにビタミンD不足というケースも増えてきています

くる病の検査と治療方法

どのような検査を行いますか?

まずは全身の骨の形状をチェックし、X脚やO脚などの症状がないかを確認しましょう。赤ちゃんの場合は、触診で後頭部の骨が柔らかいかどうかなどを確認する場合があります。

そして血液検査とレントゲン検査を合わせて栄養状態や骨格を検査し、診断項目に従って診断を下します。

診断基準について教えてください。

まずはレントゲン検査でこの病気の症状が認められ、血液検査で高アルカリフォスファターゼ(ALP)血症であるかどうかを確認します。

ALPは骨で多く作られている成分で、骨の病気がある時にこの数値が上昇するものです。

この2つの項目に当てはまったうえ、低リン血症または低カルシウム血症、O脚・X脚などの臨床症状のどちらか1つが当てはまればくる病と診断されます。

血液成分は年齢によって異なりますので、年齢に応じた基準値に従って判断を下しています。

くる病の治療方法を教えてください。

ビタミンDの摂取不足からこの病気に至った場合は、基本的には食事療法や日光浴による治療を行います。

ビタミンDを多く含む食品やサプリを摂り、毎日日光浴を心がけることでビタミンDを体内に取り込み、正常な骨の形成を促します。

ほか内臓機能の異常などがこの病気の原因である場合に必要なのが、専用薬の投薬や注射による治療です。遺伝性の場合は一生薬を服用し続ける場合があります。

くる病の予後と予防方法

くる病は完治する病気でしょうか?

ビタミンDやリン不足が問題の場合は、正しい食生活などでこれらの成分を摂り続けることで、半年以内に症状の改善がみられます

内臓機能など、遺伝性の問題が起因している場合は生涯にわたって薬を服用しなければならないこともあります。

日常生活での予防方法を教えてください。

まずは ビタミンDやカルシウムが不足しないように積極的に摂取することが大切です。このビタミンは食事のほか、日光に当たることで皮膚近くで生成されます。

ところが最近は紫外線の害悪が注目され、直射日光に当たることを過度に避けたり、常日頃から強い日焼け止めを塗る人が増えてきました。

ビタミンDを作る紫外線であるUVBはガラスを通さず、SPF8以上の日焼け止めを塗ると皮膚にも届きません

日光に当たる目安は、夏場なら肘から下で1日約15~20分、冬場は30分。直射日光ではなく木漏れ日でもよいので外に出て浴びるといいでしょう。

食事はどのようなことに気をつければ良いですか

しめじやしいたけなどのキノコ類、カツオやサケなどの魚介類、卵黄にビタミンDが豊富に含まれていますので積極的に食べましょう。

また母乳のみで育てている赤ちゃんに対しては、ビタミンDシロップなどの栄養剤を与えるのも有用です。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします

ビタミンD不足からくるこの病気は、近年増加傾向にあります。

日焼けを嫌って日光を避けたり、無理なダイエットをしたりするなどしてビタミンD不足になりがちな現代の生活では、意識的にビタミンDを摂ることが必要です。

特に妊娠中の女性は、自分の栄養不足が胎児及び生まれた後の新生児に影響します。ビタミンDや鉄、亜鉛など今の生活で不足しがちな栄養素を理解し積極的に補うことが、子供の健やかな発育に繋がるでしょう。

骨の形成不足であるくる病は本人が痛みなどで辛い思いをするほか、身長が伸びないなど発育不足にも発展しかねません。

バランスのよい食生活と適度な日光浴でビタミンDを補うよう心がけてください。

編集部まとめ

くる病は成長期までの子供に起こる、骨の石灰化異常による骨格異常です。

この病気の原因のほとんどがビタミンD不足によるもので、近年はライフスタイルの変化から、病気の発症が増えています。

ビタミンDを補うためには適度な日光浴と、ビタミンDが豊富に含有されている食材を食べることが必要です。

また母乳で育てている赤ちゃんはビタミンD不足になりやすく、お母さんは妊娠中から意識的にビタミンDを摂ったり、赤ちゃんを適度に外気浴させたりする必要があります。

硬く丈夫な骨は子供の健やかな成長にとって欠かせないものです。しっかりとビタミンDを摂って、子供の健康な発育を守りましょう。

参考文献

くる病・骨軟化症とは|くるこつ広場

親も子どもも「ビタミンD不足」が増加中?|いこーよ

くる病の症状|くるこつ広場

くる病・骨軟化症の3つの原因と疾患|くるこつ広場

親も子どもも「ビタミンD不足」が増加中?|いこーよ

くる病|ウィキペディア

くる病|恩師財団済生会

くる病・骨軟化症の治療方法|くるこつ広場

増加する乳幼児の「くる病」|中野区医師会

くる病|一般社団法人 日本内分泌学会