キーンランドCは秋の大一番を目指す実績馬より、洋芝適性が高い伏兵2頭の一発に期待
サマースプリントシリーズ第5戦のGIIIキーンランドC(札幌・芝1200m)が8月28日に行なわれる。
今年の夏競馬は今春のGI同様、1番人気が不振。ここまでで勝っているのは、GIII函館スプリントSのナムラクレアと、GIII関屋記念のウインカーネリアンの2頭のみだ。
そうした流れからすると、キーンランドCでも1番人気に対してそこまでの信頼は置けないかもしれない。
実際、過去10年の結果を振り返ってみても、1番人気は2勝、2着4回、3着1回。馬券圏内(3着以内)で見れば安定した成績を残しているものの、2勝というのはやや心許ない数字だ。ここ2年、15着、7着と馬群に沈んでいることを考えても、絶対視は禁物だろう。
さらに、スポーツ報知の坂本達洋記者が今年のレースについて次のような見解を示し、波乱ムードを匂わす。
「今年は、重賞勝ち馬が7頭出走。実績馬が顔をそろえたメンバー構成ですが、秋のGIスプリンターズS(10月2日/中山・芝1200m)を見据えた実力馬や上がり馬など、あくまでもこの先が目標の馬もいれば、ここで賞金を加算しておきたい必勝態勢の馬もいて、各陣営の思惑はさまざま。その分、実績だけでは推し量れない一戦、というのが面白いところです」
坂本記者は続けて、昨年の覇者を引き合いに出してこのレースで好走するタイプについて言及する。
「連覇を狙うレイハリア(牝4歳)は、昨年は3歳牝馬で51kgという斤量面で恩恵がありました。そのうえ、3連勝中と勢いもありました。しかしその後は、GIII京阪杯(阪神・芝1200m)で16着、GI高松宮記念(3月27日/中京・芝1200m)で17着と立て続けに惨敗。今年は斤量も55kgとあって、さすがに勝ち負けは厳しいと見られています。
ただ、同馬について見落としてはいけないのは、洋芝適性への高さです。前走の函館SS(6月12日/函館・芝1200m)では、好位から4角先頭という積極的な競馬を見せてコンマ5秒差の4着と奮闘し、復調の兆しを見せました。この中間の動きを見ていても状態面のよさがうかがえますが、それこそ洋芝適性が高いからでしょう。
また、2020年の覇者で、昨年も2着に好走したエイティーンガール(牝6歳)も、北海道巧者の典型的な1頭。今年も要注意です。さらに振り返れば、2017年に9歳馬ながら12番人気での大穴Vを決めたエポワスも洋芝適性がモノをいった印象ですから、キーンランドCではスプリンターズSを見据えた実力馬よりも、洋芝適性の高さを重視すべきではないでしょうか」
そうなると、坂本記者の推奨馬はレイハリアか、エイティーンガールかと思われたが、「今年は混戦ムード。どこからでも狙える」と言って、より人気薄の上がり馬をオススメする。
キーンランドCでの勝ち負けが期待される洋芝巧者のヴァトレニ
「ヴァトレニ(せん4歳)です。昨夏の北海道シリーズでは、未勝利戦から一気に3連勝。そして今夏、前走の青函S(6月25日/函館・芝1200m)で待望のオープン勝ちを飾るなど、札幌、函館では4戦全勝という実績は見逃せません。
加えて、先週からCコースに替わった札幌競馬場は前がとにかく有利。土日の芝レース全14鞍中、9鞍が逃げ切り勝ちでした。となれば、好位から正攻法の競馬で結果を出してきた同馬にとっても、最適な条件です。
実績はもの足りなくても、舞台適性の高さや脚質面でのメリットが同馬にはあります。前、前で起用に立ち回れば、十分にチャンスは巡ってくると踏んでいます。
1週前追い切りでは、今回も手綱をとる横山武史騎手が騎乗。2歳のオープン馬を相手に後方から追走して、直線で強めに追って1馬身先着と上々の動きを見せました。
横山武騎手も、『前走は初めての1200m戦でもよく対応してくれた。従順な馬なので、レースの組み立てをしやすい』と確かな手応えをつかんでいる様子。距離実績などからそこまで評価されていないようですが、一発の匂いがプンプンします」
坂本記者はもう1頭、6歳になった今年、初めて北海道シリーズに挑んでいるサヴォワールエメ(牝6歳)に注目する。
「近年、前哨戦のオープン特別・UHB賞(札幌・芝1200m)組が好走していることを考えると、今年も同レース(8月14日)から臨んでくる馬が馬券圏内に食い込んでくる可能性は大いにあります。前が有利な馬場傾向にあって、唯一追い込んできた勝ち馬ロードマックス(牡4歳)はかなり強いと思いますが、好位2番手から3着に踏ん張ったサヴォワールエメも軽視は禁物だと思っています。
洋芝は前走が初めてでしたが、結果も含めて、内容のあるレースを披露。適性は高いと見ています。さらに、夏場が合うタイプのようで、ここにきての充実ぶりも評価できます。こちらも、前、前で立ち回れるうまさを考えれば、粘り込むシーンがあっても不思議ではありません」
北海道シリーズもいよいよ終盤戦。波乱含みのスプリント戦を制するのは、実績馬か、上がり馬か、はたまた思わぬ人気薄馬か。無論、ここに挙げた2頭であってもおかしくない。