宇野昌磨「ちゃんと成長するシーズンになる」と手応え。新プログラムでは”新たな冒険”へ
フレンズ・オン・アイスに出演した宇野昌磨
7月25日に行なわれたアイスショーの「フレンズ・オン・アイス」の公開リハーサル。宇野昌磨(トヨタ自動車)はエキシビションプログラム『Padam,Padam(パダム パダム)』を披露した。
このオフシーズン、宇野はアイスショーに積極的に出演し、競技用の新プログラムを滑り込んできた。
「あとは大きなリンクで試合をやるだけだなというところまできているので、本当に今シーズンはケガをせずに1年間を過ごせれば、ちゃんと成長するシーズンになるのではないかと思っています」
「この3年間で自分もいろんな経験したので、思い出話をしながら振り付けをしてもらいました。最初はこのプログラムも、ショートプログラム(SP)寄りの感じで作りました。でもショーで披露するなら、もっとアイスショーに寄せたものにしたいということで、先週になって振り付けをし直して。全体的に、ショーというより競技にすぐ使えるようなプログラムになっているので、今後のでき次第では、競技用の候補のひとつとして取り組んでいきたいとも思っています。ショーは楽しんでいただく場ではあるけど、これを滑ることで自分を磨くという場にもしていきたいと思っています」変化してきた体との付き合い方
オフシーズンも忙しく過ごすなかで、宇野は感じたことがあるという。今後、フィギュアスケートを続けていくなかで、しっかり休養する時間も取らなくてはいけない、と。
「1年間ずっと稼働している状態だと、どこかでケガをしたり、さまざまな問題にもつながってしまいます。さらに年齢を重ねていけば、ケガのリスクも多くなり、今までは若さで乗りきれていた部分も絶対に難しくなる」
宇野はそう考えるようになった。そして、続ける。
「以前、僕は『グレート・スピリット』をSPにしましたが、エキシビションプログラムとして演じた時には、まさか競技用のプログラムになるとは思っていませんでした。昨シーズンのSP『オーボエ協奏曲』もその1シーズン前からエキシビションでずっとやっていたので、次はすごくスタートを早くできるなと思って。1年間練習することによって、次のシーズンのスタートがすごくラクになる。
これからどこかで自分を休ませる期間を作らなければいけないことを考えると、それが時間を有効に使える部分ではないかなと思いました。『パダム パダム』は今年のSPのサブプログラムというより、来年の候補のひとつとして......。これをやりたいと決めているというよりも、こういうプログラムをやるために自分がどういう演技をして、試合でやったら面白くなるんじゃないかなというものを探していこうと思っています」
宇野がそんな思いを持つ新プログラムは、今までとはまた違う一面も感じさせるものだった。これまでの宇野の滑りは、流れのなかで瞬間的に動作の"止め"を作ることで、彼らしい力強さを感じさせていた。だが、今回の演技には、"止め"はなく、ずっと流れる動き。それも軽やかというより、粘度の高い液体がゆるやかに流れているような、力強さも感じさせた。シャンソンの曲に乗り、ゆったりとする心地よさを感じさせ、宇野らしさを際立たせる。
最初に4回転フリップを跳ぶと、後半にはアクセルに入りかけて止めたような動きを見せてそのまま3回転ループを跳んだ。
「僕は試合でコンビネーションジャンプを跳べないことが多いので、練習でもコンビネーションの練習をすることが多く、スピードのないところで2本目のジャンプを跳ぶ練習をやっています。見ているみなさんにすれば失敗したかなと思っただろうけど、今回はリハーサルだったので」
先を見据えたうえで演じている新プログラム。かつて、『グレート・スピリット』を最初にアイスショーで見た時は、顔にペイントをして滑る宇野の姿を見て驚くとともに、新たな世界を冒険しようとする気持ちが感じられた。その時と同じような冒険心を感じさせたこのプログラムは今季、競技用のプログラムとともに見逃せないものになってきた。