カタールW杯(11月〜12月)開催の影響で、通常よりも早くスタートしている2022−23シーズンの欧州各国リーグ。国内リーグの優勝と、チャンピオンズリーグでの躍進を狙う強豪の、今季の顔ぶれが気になるところだ。ここでは注目の10チームをフォーメーションと共にチェックする。

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マンチェスター・シティ(イングランド)

【4−1−2−3】
FW:グリーリッシュ、ハーランド(アルバレス)、フォーデン(マフレズ)
MF:デ・ブライネ(パーマー)、ギュンドアン(ベルナルド・シウバ)
MF:ロドリ(K・フィリップス)
DF:カンセロ、アケー(ラポルト)、ルベン・ディアス(ストーンズ)、ウォーカー
GK:エデルソン(オルテガ)

 悲願のチャンピオンズリーグ優勝に向けて、22歳にして世界最高のストライカーの呼び声も高いアーリング・ハーランドを迎え入れた。また冬に契約を結んでいたこちらも22歳のリバープレートのエース、フリアン・アルバレスが満を持して加入し、リーズのマルセロ・ビエルサ前監督の下で劇的に成長したMFカルバン・フィリップスも参戦。

 逆にラヒーム・スターリング、ガブリエウ・ジェズス、オレクサンドル・ジンチェンコ、フェルナンジーニョらを放出したが、ケビン・デブライネやフィル・フォーデン、ルベン・ディアス、エデルソンら、既存の主力も健在で、クオリティーは高まったと言えそうだ。ジョアン・カンセロのほかに適任者のいないレフトバックの選手層は、やや心もとないか。

リバプール(イングランド)

【4−1−2−3】
FW:ディアス(ジョタ)、ヌニェス(フィルミーノ)、サラー(エリオット)
MF:チアゴ・アルカンタラ(カルバーリョ)、ヘンダーソン(ケイタ)
MF:ファビーニョ(ミルナー)
DF:ロバートソン(ツィミカス)、ファン・ダイク(コナテ)、マティプ(N・フィリップス)、アレクサンダー=アーノルド(ゴメス)
GK:アリソン(アドリアン)

 近年の成功に大きく貢献したサディオ・マネが去ったものの、ダルウィン・ヌニェスはその穴を補って余りある能力の持ち主だ。この23歳のウルグアイ代表ストライカーは、爆発的なスピードという点ではマネに劣るが、決定力では負けておらず、高さも伸びしろもある。

 1月に加わって即座にフィットしたルイス・ディアス、新契約を結んだモハメド・サラーとディオゴ・ジョタ、万能型のロベルト・フィルミーノ、昨季序盤戦の大ケガから完全に復帰したハービー・エリオットも揃う前線は、新天地を求めた南野拓実とディボック・オリギの不在を感じさせないだろう。

 主戦の多くが30代の中盤には、昨季のチャンピオンシップ(2部リーグ)を制してベスト11にも選出された19歳の新戦力、ファビオ・カルバーリョで血の循環を図る。

チェルシー(イングランド)

【3―4−2−1】
FW:スターリング(ブロヤ)
MF:マウント(プリシッチ)、ハフェルツ(ツィエク)
MF:ククレジャ(チルウェル)、ジョルジーニョ(ギャラガー)、カンテ(コバチッチ)、ジェームス(ロスタフ=チーク)
DF:クリバリ、チアゴ・シウバ(チャロバー)、アスピリクエタ
GK:E・メンディ(ケパ)

 ロシア軍のウクライナ侵攻が始まったことによりオーナーが交代し、その影響もあってアントニオ・リュディガー、アンドレアス・クリステンセンというセンターバック(CB)の主力が2人抜けた。カリドゥ・クリバリでひとり分は補填できたが、ベースが3バックだとすれば、ベテランの多い最終ラインの選手層は気にかかるところ。

 一方、チームにフィットしなかったロメル・ルカクとティモ・ヴェルナーの放出は人員整理と捉えられ、トーマス・トゥヘル監督はより機動力のあるラヒーム・スターリングを加え、プレッシングフットボールを突き詰めていくだろう。

 シティとの争奪戦を制して獲得したマルク・ククレジャ、ローン先で逞しくなって帰ってきたコナー・ギャラガーとアルマンド・ブロヤの若手も楽しみだ。

レアル・マドリード(スペイン)

【4−1−2−3】
FW:ヴィニシウス(アザール)、ベンゼマ(マリアーノ)、バルベルデ(ロドリゴ)(アセンシオ)
MF:クロース(セバージョス)、モドリッチ
MF:カマビンガ(チュアメニ)
DF:F・メンディ(リュディガー)、アラバ(バジェホ)、ミリトン(ナチョ)、カルバハル(ルーカス・バスケス)
GK:クルトワ(ルニン)

 欧州制覇の回数を史上最多の14(次点はミランの7)に更新した"白い巨人"は、昨オフに迎えたエドゥアルド・カマビンガに続き、若きフランス代表MFオーレリアン・チュアメニを獲得。この流れは長年中盤に君臨してきた3人のベテラン、ルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カゼミーロの次の時代を見据えたものだろう。実際、ここにきてカゼミーロのマンチェスター・ユナイテッド移籍が発表された。

 欧州屈指の若手MFの2人が彼ら超一流から学ぶものは計り知れず、いずれ迎える世代交代もスムーズに進められるはずだ。昨季優勝したラ・リーガで2番目に失点の少なかったチームは、最終ラインにアントニオ・リュディガーを迎えてさらに充実。数少ない懸念材料は、エースのカリム・ベンゼマの控えくらい。

バルセロナ(スペイン)

【4−1−2−3】
FW:ラフィーニャ(アンス・ファティ)、レバンドフスキ(オーバメヤン)(デパイ)、デンベレ(フェラン・トーレス)
MF:ペドリ(ピャニッチ)、ガビ(デ・ヨング)(コジャード)
MF:ブスケツ(ケシエ)
DF:ジョルディ・アルバ(バルデ)、エリック・ガルシア(ピケ)、アラウホ(クンデ)(クリステンセン)、デスト(セルジ・ロベルト)
GK:テア・シュテーゲン(イニャキ・ペーニャ)

 昨オフに資金難からリオネル・メッシと涙ながらに別れたクラブ(負債総額は約1300億円以上とも)が、なぜか一年後の移籍市場では大型補強を敢行している。

 未来のテレビ放映権を売却して資金を確保しているようだが、ラフィーニャ、ロベルト・レバンドフスキ、ジュール・クンデと移籍金50億円超の契約を3つも締結。さらにフランク・ケシエとアンドレアス・クリステンセンをフリーで迎えた。

 ただし現状では、ラ・リーガのファイナンシャル・フェアプレーに抵触するため、登録を認められていない選手がいる。既存選手のサラリーを減額するなどして、なんとか新戦力をすべて起用できるように画策していると伝わるが、なんとも奇妙な成り行きだ。

バイエルン(ドイツ)

【4−4−2】
FW:マネ(サネ)、ニャブリ(ジルクゼー)
MF:ムシアラ(コマン)、ミュラー(テル)
MF:ザビツァー(ゴレツカ)、キミッヒ(フラーフェンベルフ)
DF:デイビス(スタニシッチ)、リュカ・エルナンデス(デ・リフト)、ウパメカノ(ニャンズ)、パバール(マズラウィ)
GK:ノイアー(ウルライヒ)

 ブンデスリーガを10連覇中の絶対王者では、8シーズンにわたってエースストライカーを務めていたロベルト・レバンドフスキが去った一方、サディオ・マネを迎えて2トップ気味のシステムに変更。

 昨季は主に3バックで、時には両ウイングバックに攻撃的なウイングを置いて4トップのような布陣も採用していた若き策士ユリアン・ナーゲルスマン監督は、2年目の今季はこれまでのところ4−4−2を採用している。

 CBマタイス・デ・リフト、MFライアン・フラーフェンベルフ、右サイドバックのヌサイル・マズラウィとアヤックス育ちの新戦力で中盤と守備陣を強化し、17歳の超新星アタッカー、マティス・テルも釣り上げた。同じく10代のジャマル・ムシアラらと共に成長する姿が見込まれる。

パリ・サンジェルマン(フランス)

【3−4−1−2】
FW:ネイマール(エキティケ)、エムバペ(サラビア)
MF:メッシ(レナト・サンチェス)
MF:ヌーノ・メンデス(ベルナト)、ヴィティーニャ(パレデス)、ベッラッティ(ゲイエ)、ハキミ(ムキエレ)
DF:キンペンベ(ディアロ)、マルキーニョス(ダニーロ・ペレイラ)、セルヒオ・ラモス
GK:ドンナルンマ(ナバス)

 カタールの国家ファンドが買収してから11年が過ぎても欧州の頂点に立てておらず、今オフに方針を転換。スター選手の乱獲は控え、新アドバイザーの母国ポルトガルからヴィティーニャ、レナト・サンチェスという伸び代のある若手を迎え、期限付きで加入していたメンデスとも正式を結んだ。

 ノルディ・ムキエレやウーゴ・エキティケといった20代前半のフランス人を加えたのは、アイデンティティの確立のためだろう。ネイマール、キリアン・エムバペ、リオネル・メッシを前線に並べると、国内では面白いようにゴールを奪えるかもしれないが、国外の強豪との対戦時にはバランスを重視するか。まことしやかに囁かれるネイマールとエムバペの不仲説も、気になるところだ。

ミラン(イタリア)

【4−2−3−1】
FW:ジルー(レビッチ)(イブラヒモビッチ)
MF:レオン(オリギ)、ブラヒム・ディアス(デ・ケテラーレ)、メシアス(サーレマーケルス)
MF:ベンナセル(クルニッチ)、トナーリ(ポベガ)
DF:テオ・エルナンデス(バロ=トゥーレ)、トモリ(ガッビア)、カルル(ケア)、カラブリア(フロレンツィ)
GK:メニャン(タタルシャヌ)

 11年ぶりにスクデットを掲げたチームから抜けた主力はフランク・ケシエくらい。中盤に君臨したこのタフガイの穴は小さくないが、イスマイル・ベンナセルやローン帰りのトンマーゾ・ポベガらにとっては独り立ちの好機となるか。

 10月に41歳になる御大ズラタン・イブラヒモビッチはヒザの手術を終え、年明けに復帰する予定だ。それまで1トップはオリビエ・ジルーやアンテ・レビッチ、新加入のディボック・オリギらで回すことになる。

 補強の目玉はベルギー新世代の象徴、シャルル・デ・ケテラーレだ。前所属先のクラブ・ブルージュでは21歳にして"キング"と呼ばれていた攻撃的MFは、長身ながら柔らかいスキルと高い決定力を備え、一味違うアクセントになりそう。

インテル(イタリア)

【3―5−2】
FW:マルティネス(コレア)、ルカク(ジェコ)
MF:チャルハノール(ムヒタリアン)、バレッラ(ガリアルディーニ)
MF:ゴセンス(バストーニ)、ブロゾビッチ(アスラニ)、ドゥムフリース(ダルミアン)
DF:ディマルコ、デ・フライ(ダンブロージオ)、シュクリニアル(ベッラノーバ)
GK:ハンダノビッチ(オナナ)

 勝ち点2差でセリエA連覇を逃したチームにとって、ロメル・ルカクの(ローンでの)復帰はこれ以上ない朗報だ。一昨季にリーグMVPとなり、チームに11年ぶりのスクデットをもたらしたベルギー代表FWは、相性抜群のラウタロ・マルティネスの隣で昨季のプレミアリーグで味わった悔しさを晴らすだろう。

 新天地を求めた昨季のレギュラーはイバン・ペリシッチくらいで、左ウイングバックにはロビン・ゴセンスがいるので問題にはならないはず。ニコロ・バレッラやマルセロ・ブロゾビッチ、ステファン・デフライといった主軸に動きはなく、実力者のMFヘンリク・ムヒタリアンやGKアンドレ・オナナを加えたチームは、昨季よりも強くなっている印象だ。

ユベントス(イタリア)

【4−4−2】
FW:ブラホビッチ(キエーザ)、ディ・マリア(ケーン)
MF:マッケニー(コスティッチ)、クアドラード(スーレ)
MF:ロカテッリ(ロベッラ)、ザカリア(ミレッティ)
DF:アレックス・サンドロ(デシーリオ)、ブレメル(ガッティ)、ボヌッチ(ルガーニ)、ダニーロ
GK:シュチェスニー(ペリン)

 10年ぶりに無冠に終わり、イタリア随一の名門が転換期を迎えている。

 重鎮ジョルジョ・キエッリーニをはじめ、パウロ・ディバラ、マタイス・デ・リフト、フェデリコ・ベルナルデスキらを放出し、反対にポール・ポグバ、アンヘル・ディ・マリア、ブレメル、フィリップ・コスティッチといった面々を加えた。

 ポグバこそ復帰後、早くも負傷して離脱したが、ディ・マリアは開幕戦で1得点1アシストの活躍。前線でパートナーを組んだドゥシャン・ブラホビッチは2ゴールと幸先のいいスタートを切った──このエースの出来がチームの浮沈を左右するはずだ。

 フランクフルトで鎌田と好連携を見せていたコスティッチの初のセリエA挑戦にも注目したい。