8月7日、Twitterで「多頭飼育崩壊」のワードがトレンド入りした。注目を集めたのは、同日付の神奈川新聞「ウサギ 住宅 “占拠” 県西地域で多頭飼育崩壊」という記事だ。

 記事によれば、神奈川県の30代夫婦が飼っていたウサギが、2年足らずのうちに200匹以上に繁殖、自宅を “占拠” される状態となり、「多頭数飼育崩壊」が起きたという。

「メスのウサギは、一般的には生後4〜12カ月で発情が始まります。早い個体では、生後3カ月で発情を迎えることもあります」

 こう説明するのは、「まねき猫ホスピタル(大阪・守口市)」の石井万寿美院長。

「たとえば、イヌの場合は発情は半年に1回ですが、ウサギは1年中発情します。交尾は10〜30秒で、ほぼ100%妊娠します。妊娠期間は約30日で、一度に1〜10匹の子ウサギを出産するんです。

 このようにすごいスピードで繁殖するので、不妊去勢手術をしていなければ、あっという間に多頭数飼育崩壊に陥るのです」

 この夫婦は県外から引っ越してきて、知り合いもいない寂しさを紛らわすため、ぺットショップでまず1匹を購入。さらに「ウサギが寂しくならないように」と、もう1匹購入したという。

「ウサギが1匹でかわいそうだと思うなら、オスメスのつがいではなく、オス同士かメス同士にするか、不妊去勢手術をするべきです」(石井院長)

 SNSには、

《なぜこんなにもひどい状態になるまで放置する?きちんとした知識と深い愛情、最後まで大切に飼う責任感のある人にしかお迎え出来ない決まりにして欲しい》

《多頭飼育崩壊はただ引き取ります保護しますだけじゃなくて 飼い主に罰則罰金と免許制度にしないとだめだ》

《店側も繁殖については注意喚起するけど「一匹じゃ可哀想」って聞かない人多いし、そもそも何年も一緒に暮らす事になるんだから、飼う生き物について最低限の勉強くらいしてきて欲しい》

 などと、憤る声があふれている。ウサギは、県の動物愛護センターと動物愛護活動団体に引き取られたという。

 ところで、この記事を読んでいくと、動物愛護団体のこんなコメントが。

「ウサギの場合は数が増えすぎると共食いを始めるのでここまで増えるケースは聞いたことがない」

 え、共食い? ウサギって草食動物じゃないの!? ウサギの診療実績では国内トップクラスの「斉藤動物病院」(さいたま市)の斎藤将之院長に聞いた。

「親ウサギが子ウサギを食べてしまうことはあります。多頭飼いだけでなく、生まれた子ウサギをたくさん触って人間のニオイがついてしまうと、自分の子ではないと認識して、食べないまでも齧って殺してしまうケースもあります。

 そういったことを防ぐためには、出産場所をしっかり確保するなど、ちゃんとケアしてあげることが大事です」

 ペットを飼うには、最低限の知識は必要なのだ。