解決すべき教育問題は「教師の労働環境」 - BLOGOS編集部
※この記事は2013年02月16日にBLOGOSで公開されたものです
ニコニコ生放送とBLOGOSがタッグを組んでお送りする「ニコ生×BLOGOS」第16回「体罰・指導死・教師の鬱……どうする日本の教育現場！」の書きおこし後編です。前編はこちら。
教育という仕事がビジネスライクであれば…
佐々野：心の病に侵されている教師が非常に多いと数字に出ています。文部科学省が発表したデータでは、2011年度にうつ病などの精神疾患で休職した公立学校の先生の数が5274人。この数字、前の年よりも133人少なく２年連続の減少だそうですが、調査を始めた1979年度と比較すると、その数はなんと８倍！年代別で見ると、最も多いのが50代以上で、38.6％。そして、40代以上が32.5％。40代以上に、心の病を抱えた先生が多いというのは……？
宮台：これはよくわかります。教育という仕事がビジネスライクであれば、やるべきことが限定されているので背負わなくて済む。だから、空回りする必要がないんです。「俺の仕事はここまで」でいいし、要求された仕事をやってうまくいかない場合は、「自分の仕事じゃない」と。こういう感覚なら空回りして体罰をすることもないし、「うまくいかないのは俺のせいだ！」と思う必要もないんですね。だって、そんな風に思う予備校の先生いますか？いないでしょ？ただ、授業をやればいいだけなんだから。
須田：根底を覆すような言い方になりますが、一般企業と比較しないと。これだけ取り出すと異常性があるけれど、一般企業で社員にどれぐらいの精神疾患が出ているのか。私はこのデータがそんなに多いようにも感じないですが。
宮台：学校の先生は、これまで精神疾患とは遠い存在と思われてきたところがありますよね。不登校って子供のことばっかりでしたけど、今は学校に通えない先生も増えているじゃないですか。
世代別では40・50代の教師が精神疾患になるケースが多いとのことでしたが、この世代は今の学校の加速的な変化についていけない点があるのではないかと思います。モンスターペアレンツと呼ばれるものすごいクレーマーがいたり、学級崩壊が起こったり。このような問題に、かつての牧歌的な、金八的な対応が全然通用しなかったりする。一方で、従来的になんとなく容認されてきた体罰みたいなものが問題になり、メディアがガンガンバッシングする。だから今は、何が一番受け入れられる方法なのかわからず、混乱している時期だと思うんですね。その世代の方々は、正しいかどうかは別にしてある程度信念的なものをもってずっとやってきたのに、それが今、外側から大きく揺さぶられている。したがって、精神的にも不安定になってしまうのではないかという気がします。
学校に期待してはいけない
大谷：昔は“しつけ”は家庭でしていたが、今はそれが学校に持ち込まれるという議論を聞きます。学校に求められる役割が変化していると思いますか？
宮台：それは思いますね。学校を身軽にしていくことが必要です。例えば、モンスターペアレンツのような、クレイジークレーマーだらけになるのは結局、家庭が空洞化していて、もはや学校にしかある種の機能を期待できないと思い込んじゃっている人が多いからでしょ？つまり、ケツ拭きをさせられてしまっているわけ。
その一方で、ヨーロッパやアメリカでは、地域にサッカーやベースボールなどのスポーツクラブがある。つまり、子供たちが学校だけでなく、教会にもボランティア集団にもスポーツクラブにも属するというように多重帰属ができているわけです。ところが日本は丸抱えになってしまっていて、学校自体に対する負担も、非常に重い。こうした背景が、問題を変えにくくしてしまっているのは明らか。多くの人が学校に期待しすぎているし、尻拭いをさせようとしている。この状態をまず変えなければいけないですね。
藤井：教師の問題でいえば、先生の仕事が教育委員会などから押し付けられることが多いのはもちろん、社会的な仕事も増えている。モンスターペアレンツからの苦情の対応もそうだし、小学校の先生が今もっとも大変なのが児童虐待問題。先生は、子供がちゃんとお風呂に入っているか、朝ごはんを食べているか、着替えをしているかを見なければいけない。児童虐待防止法もあるから、何か問題があったら通報したり、病院の先生に見せなければいけないので、ものすごく大変なんですよ。ネグレクト（児童虐待）を発見しても児童相談所はなかなか動いてくれず、親のところへ行っても知らんぷりでパチンコなんかをしている。すると先生は、その子を自分の家でかくまってあげる。そういう先生がたくさんいる。本当に今の先生には同情します。子供が犠牲になっている社会問題の一端まで、先生が引き受けさせられている現実がある。
体罰は確かに問題だけど、多くの先生は体罰容認じゃないですよ。暴力に依存している先生は一部で、全体的にはそれほど多いという印象はありません。過去20年間、教職員組合を通じて何万人という先生に講演で会ってきましたけど、基本的にはみなさん体罰は否定します。それは子供の権利上やってはいけないとか、教育上やってはいけないとか、一応共通前提はあるんですね。だけど、一部の先生がそういう形で力を持ってしまっていて、その他の無関心派やリベラル派の先生が、体罰容認派の先生に何も言えない状態にあるので、こういう問題が起きてしまっている。こういうことはちゃんと抑えておかなきゃと思います。
クレームを真に受けないことが大事
大谷：今、教師に過剰に押し付けられている役割を外すために、具体的にはどうすればいいでしょうか？
宮台：親あるいは子供が行政や学校に色々なクレームをつけてきますが、これを真に受けないことが大事ですね。僕も世田谷区に住んでいて地域行政に関わっていますが、クレイジークレーマーに対応するのは大変なんですよ。クレイジークレーマーって圧倒的に高齢者の独居老人の男性が多くて、こうなってくると彼らが悪いというより、むしろかわいそう。彼らは地域や家族の中で、朝から晩まで一人ぼっちなんです。だから、鬱屈もしている。そんな彼らの状況をきちんとケアしつつ、主張は真に受けない。大変なんですよ。朝から晩まで何十回も担当者を指名して電話をかけてくるので、担当行政官が変になっちゃったりして、理不尽な要求を行政が飲むことが当たり前になっている時がある。実はこれと同じようなことが学校でも起こっているので、モンスターペアレンツ的な存在を、圧力の源泉として機能させないようにするには、親たちの連帯が大事です。
「宮台という親がおかしなことを言っているけど、我々の総意ではないから聞かないでほしい」という言い方が実は必要なんです。そうすると、逆説が生じて、桜宮高校の親たちの総意で「あの先生は悪い先生ではない」という話になる。つまり「これさえあれば解決する」という提案とは違うけれども、極端な議論やクレームによって先生達が執拗に追い詰められていることをよく知る必要があるわけですね。だからこそ緩和して、先生達の過重負担にさらに負担を重ねるような事態を避ける必要があると思います。
藤井：過重負担を減らすなら、部活の顧問を全部変えて地域スポーツの指導者を迎え入れることだと思います。スポーツ界・武道界、すべてが体罰容認と言われているけれど、体罰を否定している指導者はたくさんいる。元々、柔道、剣道といった武道の世界でも、体罰は否定しているんです。だけど、それが日本の中で“因習化”してしまって、体罰をすれば選手が強くなると。体罰は即効性があるからいい成績が出るといった形で、スポーツ業界に染み付いてしまった血脈みたいなものがあるんですね。その体罰容認派の人達が力を持っていることが問題で、その人たちに外れていただくといいと思います。
93年にJリーグが出来た時、そういう問題を解決していくために「学校スポーツ」から「地域スポーツ」、つまり日本型からヨーロッパのクラブ型に変えていこうという大きな動きがありました。地域のスポーツクラブの中で暴力があったら、これはもう存続できないので、親が子供を出しませんし、子供自身も行きません。指導者は学校以外にもたくさんいますから。なおかつ、部活の顧問って正規の労働ではなく、まさに過重労働なんです。顧問手当は数百円とか数千円の世界で、土日も朝から晩まで全部使って部活をやらされている。顧問の活動にちゃんとお金がつかないから、教師の負担になって暴力に走ってしまうケースもあるわけです。
そういう人達にはとりあえず外れていただき、理念として暴力をちゃんと否定し、ビジネスライクに技術を育てて選手たちのやる気を引き出す、科学的な指導をする方々を迎え入れるべき。それに反対する言い分として「お金のある学校だったらそういう先生を招くことができるけれど、今はお金が無いからやっていただいている」という考え方がある。だから暴力先生が自己流でやっちゃって、学校の中で生き残っていけちゃうんです。
エリート校に校則は必要ない
須田：１つくだらない質問ですが、昔は生徒手帳に、やっていいことといけないことが書いてありましたよね。ああいうのって今あるんですか？
宮台：生徒手帳とか校則問題について非常にわかりやすいのは、公立校の場合、ナンバー１の高校は非常に自主自立で制服の無いところが多いんです。ところが、ナンバー２、ナンバー３になると、校則でギチギチに固めているところが多い。これで、校則や生徒手帳が日本でどういう意味を持つのかがわかるでしょう。つまり、ピカピカのエリートは、エリートであることの誇りや威信の代償で「一般人と違って規則は無くていい。しかし、自分で自分を管理しろ」という責任を課せられる。しかし、そうではない高校に入った子供たちは「お前らは一番に入れなかったから、規則に従うのは当たり前」という理屈でやってきている。これは、日本全国大体どこでもそうなので、非常に日本らしい点だと思います。“由らしむべし知らしむべからず”と同じで「お前らバカなんだから」と定義しているのと一緒。当たり前だけど、自分たちで自分たちのことを律していくという行動の規範や作法の中に、自分たちを置かないと、今後日本社会の中で生き残れないですよね。
藤井：70年代後半に色んな学生運動が終わって、その後にルールを作ろうということになった。それで、生徒手帳がドンドン分厚くなった。本当は生徒憲章みたいなもので、「こういう子供になろう」みたいなことが書いてあったのが、こんなことはしちゃいけないという内容が増えていったんですね。80年代前半から後半にかけて、私も「それはおかしい」とガンガンやったので、かなり馬鹿馬鹿しい校則が書かれた生徒手帳は姿を消していると思います。そういう馬鹿馬鹿しいルールを守らせる意義もありませんしね。
「生徒手帳に書いてあることを破ったら、退学処分」とか「学校の言うことになんでも従います」といった誓約書みたいなものもありますが、あれも80年代に入ってから裁判で、実は無効だと明らかになった。なぜなら、二重規範なんですよ。一筆書いちゃったから「ちょっと悪いことをしたら退学になるのは当たり前」と受け入れてきたけど、本当は法律的な効力がなくて、違うということもはっきりしてきました。しかし、それはまだまだ学校の多くに広まっていない。もちろん、なんでも無力化していいというわけではないですが、それは学校独自のルールであって、市民社会のルールとはかけ離れたものだは、まだまだ知られていないですね。
安倍総理の教育再生会議が抱える不安
須田：お話を伺っていると、生活保護問題と学校の問題が非常に似ていると思います。生活保護は自立支援が前提にあるのに、リタイアして年金生活をしている人の中に生活保護を受給している人がいる。あるいは、シングルマザーで子供を預ける先がなく、生活保護を受ける。しかし、これは“待機児童”の問題です。要するに、社会の実現を全部、生活保護に押し付けている。
学校の問題も、ネグレクトやモンスターペアレンツのお話を伺っていくと、子供に関わる全ての問題を、学校や先生に押し付けている状況があるのだろうと思うんですよ。昔は無かった話ですが、現在の社会の変化に対して、仕組みがシステムに全く追いついてないから、結果的に先生もその変化についていけていないという状況になっています。だから、もう１回、誰が対応すべき問題なのか精査して仕組みを作っていかないと、この問題はおさまらないですよね。
藤井：本当は、20、30年前から対応するべきだったんですよ。そのきっかけになるような事件は、私が取材した事件も含めて無数に起きているはずなんですけど、その度に対応されなかった。ちょっと学校が変わったり、学校の名前が変わったり、裁判で学校が負けたりした例で終わっていて、システム改革までは全然行かなかったんですよね。
佐々野：安倍総理が“教育再生”を掲げていますけど、それで教師を取り巻く環境や教育現場が変わる可能性はあるのでしょうか。
宮台：日本の教育は、先進国以外の国も含めて“異常”です。多くの国で教育は、様々な行政の種類の中で、最もユニットを小さくすることを求められる領域。例えば、アメリカだったら自治体ごとに全く額の違う教育税があります。さらに教育だけじゃなくて、様々な問題について行政サービスの質を期待できるということもあり、あえて教育税の高いところに住もうという人もいます。
でも日本の場合は、“教育再生会議”とか言って国が音頭を取っているでしょ？これが非常に歪んでいるんですね。当たり前だけど、地域ごとに街の成り立ちが違えば、労働的な構成も違うし、歴史も違う。宿場町もあれば、農村もあれば、漁村もある。各々の街の実情を踏まえて、自分たちが実地として教育をやっていきたいと。その中で、おかしな教員を許さないとなって、そこに体罰問題が含まれているのが健全ですが、またここでも「国は何やっているんだ！」となるのは、おかしいことですよね。
僕は橋下さんがやったことは、致しかたないと思っています。誠二さんと同じく全面的に“いい”と思わないのは、橋下さんが間違っているということではありません。橋下さんがああ言わないと、国会が前に転がっていかないほどこの状態が腐りきっているんです。そこの問題を隠して、橋下さんのような行政の長がちゃんとすればいいというのもダメな発想ですね。
あと、自治の話になった途端に工夫が出る。例えば、「体罰」と「罰」では、ペナルティが違うでしょ？ヨーロッパやアメリカの学校で激しい部活をやってきた人達に聞くと、体罰はないけど、ペナルティはある。しかしこれも、ある人間に対して集中してなされたら、場合によっては自殺につながるような負担になる可能性があるからルール化するわけですよ。こういうことがあったら、校庭10周ってことになってるよ……とか。イギリスのパブリックスクールは、昔、体罰が当たり前でした。当時は、みんな寮生活でしたが、“寮委員会”みたいな学生たちがいて、生徒が体罰を行うんです。しかし、全部ルール化されていて「○○をした奴は、尻叩き100回！」というようになっている。ちゃんと横でカウントして、私的な感情が紛れ込んでいると解釈されないような工夫をしてきたわけです。もちろん今はそのイギリスのパブリックスクールでも、体罰は認められていないけれど、そういう工夫も実は必要だよね。
藤井：安倍総理は民主党政権になる前からおっしゃっていたんですけど、「何かを愛する心」とか「何かを大事にする気持ち」を育てるのは、理念的で精神的なものが前面に出過ぎていて、一番きつい現場であるとか、辛い問題を抱えている現場に、届いていないことがたくさんありますよね。例えばさっき過重負担の話で、先生が子供の虐待を見つけるだけでも相当な負担になっていることを考えたら、子供の虐待問題を担当するのは、地域の児童相談所や保健士さんなど色んなネットワークがあるけれど、そこも人数も予算も全く増えていないんですね。本当は自治体単位でやらなきゃいけない。そこを国が音頭を取って、もっとお金と人をつぎ込みなさいと、予算をきちっと取ってやらないといけない。
児童虐待の問題でも専門的な児童相談所では、1人で200件か300件も抱えている。そんな状態で子供を虐待で預かって、返したあとに親が殴り殺しちゃっうと、「児童相談所がひどい！」みたいな話になるけど、対応ができない状態なんですよ。ですから、厳しい現場はどこか具体的にわかっているんだから、そうしたところに人とお金を入れるような法律を立法するとかしないと、なかなか目に見えた効果は出てこないと思いますね。
政務官である義家さんが音頭をとるのか？
須田：安倍総理の教育再生は、実際なにをするのかが全然見えてきてないですよね。「世界の標準からすると、日本の子供たちの数学の学力が低いので大変だ！」とか「ゆとり教育はけしからん！」などと、最終的に学力絡みの話に落ち着いていってしまうようで、本質のところを何も埋められていないんじゃないかと思うんです。
藤井：政務官を担当しているヤンキー先生こと義家弘介議員は“体罰の定義を議論する”と言っている。彼はいわゆるヤンキーが集まる学校で先生をやっていて、一番暴力に近いところにいたのだからある程度の空気は分かっていると思うんですが、「何から指導で、何から体罰かという指針を作るべきだ」みたいなお話をされているんです。しかし、これは僕から見れば、曖昧でグレーゾーンな話。議論することは大事だけど、その先を作ってほしいわけですよ。議論を尽くして体罰の定義が仮に再定義されたとすれば、再発を防止するためにどういうシステムを作るのか？例えば、さっき言ったような第三者委員会みたいなものを、国や地方自治体レベルでちゃんと作るように、政務官である義家さんが音頭をとるのか？そこまで含めて言っていただきたいですね。多分に義家さんも精神論に陥り過ぎ。
須田：でも、それは今日お二方が言われていたように「二重規範を認めない！」で良いじゃないですか。
宮台：そう！だから僕は、市民社会の枠組みを逸脱するような自治が行われたら、必ず警察が入る。あるいは当事者が訴訟を起こして、自治の誤ったところを軒並み潰していくことができるようにすることが大事だと思います。
それで自治を成す為には、自治と市民社会に“枠”をはめないと、「自治だから何をやってもいい！」という阿呆が出てくるんですよ。もう一度言いますけども、市民社会を進化して学校を聖域にしないということと、そのことを前提に、ちゃんとした自治が行われるようにする。そのため、体罰について様々な工夫をしていくことが大事なんですよ。義家さんの言うように、行政が「体罰と単なるペナルティの境界線はここです！」って言えばいいの？そういう議論はもう辞めたほうがいいですよ。
須田：かつて日本の社会には、二重規範が存在していたことがあるんですよ。それがいつかと言えば、“戦前”です。軍隊があって軍隊に憲兵がいて、軍法会議があって、独立した法体系が存在していました。そういうところなら、特別に二重規範が認められるけれども、今はそういうものがない。ないなら、やっぱり二重規範を認めるべきじゃないと思いますね。
解決すべき教育問題は「教師の労働環境」
番組の最後に「早急に改善すべき教育問題はどれ？」というテーマで、番組をご覧のみなさまからアンケートを行いました。選択肢は「１：いじめ問題」「２：教師の労働環境」「３：体罰・指導死」「４：不登校」という４択だったのですが、結果は「１：いじめ問題・36.1％」、「２：教師の労働環境・37.4％」、「３：体罰・指導死・22.6％」、「４：不登校・3.9％」でした。このアンケート結果について、スタジオではこんな話になりました。
須田：教師の労働環境が一番高いとは。先生がたくさん見ているんでしょうか？
宮台：これについて、僕はとても本質的な理解をされていると思いますよ。つまり、教師の労働環境には過重負担、あるいは家族の空洞化などによって過重負担をせざるおえない地域や社会が増えているんです。また、マスメディアの学校に対する過剰な期待の煽りも含めた色々な問題が教師に集約されてしまっているんですね。
いつもそうだけど、“学校”にはみんな自分の経験を持っているので、誰もがしゃべりたいことを持ちます。なので、誰でも参加できる議論であるように見えますが、実はこれほど難しい議論はないんです。先ほどから申し上げてきたように、社会がドンドン変わってきた。それにも関わらず、ある世代ごとに思い出を共有しているので、「なんで昔できたことが今できないんだ！」とか」「なんで昔よかったことが今ダメなんだ！」と要求しがちなんです。
また、そういう人間達はお互いかばい合うので、現実を見ようとしない。フィクションの中で慰めあってしまう人が多いんですね。だからこそ、現実を見るということが非常に重要で、そのためには、学校でなにか問題があったならば、第三者が入って、徹底的に事実を調べなければいけないし、市民社会で許されないことが許されているような状況をなんとしても解除しなければいけない。なおかつ、教師は立派な日本の市民を育てていくという責任を負っているので、行政を頼らないとちゃんとできないという状況を最終的には改めて行く必要があると思うんですね。前編はこちら
時代の変化と共に大きく様変わりした教育現場。ネットいじめ、学級崩壊、教師のうつ病、モンスターペアレンツなど、30年前では考えられなかったことが常識となっています。しかし、その急速な変化に、教師と親が対応できていないのも事実。桜宮高校の体罰問題を通じて、日本の将来を担う子供たちが健やかに学べる学校はどうすれば作れるのか？そのために何をすべきなのか？あらためて考えていく必要があるのではないでしょうか。
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