北海道へ渡った“寝台特急電車”すぐ廃車のナゼ 国鉄581・583系の一部がたどった数奇な運命
国鉄末期からJR初期にかけて、JR北海道に581・583系のサハネ581形が7両在籍していましたが、活用されることなく廃車となっています。かつて本州・九州を駆け抜けた寝台特急電車は、どういう理由で北海道へと渡ったのでしょうか。
台車は一部活用されたものの、ほぼ廃車
581・583系は国鉄が製造した交直両用の特急形寝台電車で、北は津軽線の蟹田から南は西鹿児島(現・鹿児島中央)までの本州・九州エリアを走行した車両として多くの鉄道ファンに知られています(581系の電動車モハネ581形とモハネ580形は直流区間と交流60Hz区間のみ走行)。
奥羽本線を走行する583系の「わくわくドリーム号」(1993年、伊藤真悟撮影)。
そんな581・583系ですが、実は一部が津軽海峡を渡り、JR北海道に「サハネ581形」7両が在籍していました。この7両は、サハ581-14、-15、-16、-17、-18、-19、-36で、国鉄末期の1987(昭和62)年3月25日から29日かけて青森運転所(現・JR東日本青森車両センター)から札幌運転所へ転属したものです。
しかし、先頭車や電動車は転属していません。なぜ付随車の「サハネ581形」だけが札幌運転所に転属となったのでしょうか。
これは改造を行う目的で転属したのだそうです。1987年3月31日時点では、サハネ581形と同様に、485系特急形電車のサシ481-50とサロ481-37、-41、-47、-60、-63、-94の計7両も札幌運転所に配置されています。ちなみに、485系は1974(昭和49)年から1980(昭和55)年まで特急「いしかり」用として1500番台が札幌運転所に配置されていたため、485系が配置されるのはこれが初めてではありません。
ただ、それらの多くは、転属の目的を果たせませんでした。
サシ481-50は1989(平成元)年に寝台特急「北斗星」用の食堂車「スシ24 508」に改造されたものの、サハネ581形とサロ481形は改造されることなく、1990(平成2)年6月に廃車となっています。一説には車体の老朽化が問題であったとも言われています。
廃車となったサハネ581形のうち、サハネ581-16と-17を除く5両は民間に払い下げられました。そのうちサハネ581-15の台車だけは「クリスタルエクスプレス トマム&サホロ」の増備車として1990(平成2)年12月に登場した二階建て車両「キサロハ182-5101」の台車として転用されましたが、同車は2019年11月に廃車となっています。
払い下げとなったサハネ581形も、2021年12月現在で残っているのは、サハネ581-18と-19の2両のみ。前者は北海道登別市のゴルフ練習場に、後者は北海道美深町の「トロッコ王国美深」に置かれています。
もしサハネ581形が改造されていたら、いったいどんな車両になっていたのでしょうか。もしかしたら、581系、583系を近郊型電車に改造した715系電車や419系電車のような「食パン」顔になったのかもしれません。