「名古屋の下のほう」には何があるのか?「ずらし旅」で実際に行ってみた
愛知県名古屋市。その下(南)のほうには中部国際空港や臨海工業地帯などがありますが、観光的な視点では何があるでしょうか。名古屋都市圏以外の人には意外と未知のエリアかもしれないその場所へ、行ってみました。
意外と未知のエリア?
「名古屋の下(南)のほうには、何があるのか?」
名古屋市の南側には、中部国際空港や臨海工業地帯などがありますが、観光的な視点だと、その都市圏以外で暮らす人には、あまりピンとこないかもしれません。
愛知県の県庁所在地である名古屋市(画像:写真AC)。
しかし、この「名古屋の下のほう」は、その都市圏では定番の観光地だったりします。
ただ、その都市圏外からの観光客は少ないそうで、全国的な知名度は高いとはいいがたいかもしれません(海のない長野県から臨海学校などで来る例はあるそうですが)。
観光的な視点で「名古屋の下のほう」には何があるのか、2021年12月、取材してきました。
名鉄河和駅(2021年12月、恵 知仁撮影)。
まず名古屋駅で、東海道新幹線「のぞみ」から名鉄(名古屋鉄道)の特急(料金不要)に乗り換え、南下。そして約45分で、名古屋市の南側で海にのびている知多半島の観光拠点のひとつ、河和駅に到着します。
ここで、高速船に乗り換えです。
愛知県にある「伊勢神宮」
途中でスナメリの歓迎を受けるなか、河和港から約35分で篠島に到着。
愛知県には41の離島があり、うち3つが有人島です。そのひとつである篠島は、伊勢神宮とのつながりが深い島でした。
この島でとれた鯛を塩漬けにした「おんべ鯛」が毎年、伊勢神宮へ奉納されており、島内にはその加工をする伊勢神宮が所有、管理するエリア(中手島)も存在。この「おんべ鯛」の奉納は、1000年以上の歴史があるそうです。
伊勢神宮の古材で造られている神明神社(2021年12月、恵 知仁撮影)。
篠島には、伊勢神宮の古材で建てられている神社もあります。
伊勢神宮で式年遷宮が行われると、下賜されたその古材を使って、篠島の神明神社の社殿が建て替えられます。そして、そこで発生した神明神社の古材――伊勢神宮の古材を使って、同じく篠島にある八王子社の社殿が建て替えられます。「おんべ鯛」奉納の縁で、伊勢神宮から古材が下賜されているとのこと。
篠島は、海を隔てて伊勢神宮を望む位置に存在し、直線距離では約35kmしかありません。名古屋駅より伊勢神宮のほうが、直線距離では近いです(名古屋駅までは約55km)。
海の向こうに伊勢が見える「太一岬 キラキラ展望台」(2021年12月、恵 知仁撮影)。
この距離を、篠島の「太一岬 キラキラ展望台」から一望することが可能。そうした位置関係のなか、長いあいだ積み重ねられてきた歴史ロマンに思いをはせることができます。
ちなみに篠島は、海の幸に思いをはせることも可能。なかでもシラスは、漁獲量が漁港単位では日本一ともされます。
「&しらす食堂2929」のしらす丼(2021年12月、恵 知仁撮影)。
今回、シラスと合わせて生ヒジキ、牡蠣寿司も味覚で取材したのですが、いただいた「&しらす食堂2929」では天然の旬のものを提供していて、だから美味しい、とのこと。味わっている最中に行われたその話には、説得力がありました。
日間賀島のタコとフグとキツネ
再び高速船に乗って、篠島から約10分の日間賀島へ移動します。こちらも愛知県にある3つの有人島のひとつです。
タコのモニュメントが出迎える日間賀島(2021年12月、恵 知仁撮影)。
この日間賀島はフグ、タコで知られる島。港でタコのモニュメントが出迎えるほか、駐在所もタコのデザインです。またかつて下関で不漁だったとき、日間賀島のフグを求める業者が殺到したといいます。
日間賀島では宿(大海老)に泊まり、フグとタコを味覚で取材したのですが、噛むほどにうま味が広がった「茹でだこ」が特に絶品でした。付近が栄養豊富でエサに恵まれた海であるため、日間賀島のタコは美味しいそうです。また愛知県は、日本有数のトラフグ漁獲量を誇ります。
日間賀島名物の「茹でだこ」(2021年12月、恵 知仁撮影)。
さて、話を最初に戻して「名古屋の下のほう」の観光は、名鉄グループがさまざまな展開を行っていますが、2021年12月から3月まで、JR東海もこのエリアへ特に注目。「あいちフグタコ」キャンペーンを展開しています。
コロナ禍を受けてJR東海が提案している、旅を定番からずらすことで、混雑を避けつつ、新しい発見などを楽しもうという「ずらし旅」のひとつです。
愛知県でフグやタコを味わえる旅行商品の発売、「ずらし旅 選べる体験コンテンツ」へ「干しタコ体験」などが楽しめる「日間賀島満喫パス」の追加、「EX 旅のコンテンツポータル」でクーポンがついた観光プラン「愛知の離島めぐり」の販売、などを行っています。
日間賀島の「干しタコ体験」(2021年12月、恵 知仁撮影)。
地域では有名な観光地でも、全国的に有名とは言えないかもしれない「名古屋の下のほう」。実際に行って待っていたのは、全国的に有名な伊勢神宮と深い縁がある篠島、そして絶品のフグ、タコをはじめとする海産物などとの出会い。「ずらし旅」の楽しさがつまったエリアでした。
ちなみに日間賀島は、橋でつながっていない離島では人口密度が日本一といい、クルマの通行が困難な路地が入り組んだ、絵に描いたような島の風景が待っていました。大都会の名古屋駅から1時間半程度で着く場所だと思うと、狐につままれたようでもありました。