音楽マルチメディア「block.fm」が2021年、開局10周年を迎えた。

2011年11月11日、午後11時11分11秒、日本初のダンスミュージック専門インターネットラジオとして、☆Taku Takahashiが国内外を代表する著名DJらとともに開局したblock.fm。これまで数回に渡るリニューアルを経て、独自視点でキュレーションしたラジオ番組・ニュース配信、ブランドや企業のイベントプロデュース、延べ約250万人を動員したオンライン・フェスティバル「BLOCK.FESTIVAL」など、様々なアプローチで音楽を発信してきた。

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10周年を迎えるにあたり、もう一度音楽メディアとしての本質に立ち返り、ウェブサイトのリニューアル、ラジオ番組の改編を実施。”アーティストの集合体が新しいメディアの形をつくる”をテーマに、シーンを牽引するアーティストによる新番組や既存番組のリニューアルを行った。時代の変化に柔軟に対応しながらも発信していく同メディアの根底にあるのは、音楽やコンテンツへの愛情とリスペクトだ。それらをいかに伝えていくか。そして繋がりを持たせていくのか。情報が溢れる現代、どうやってそれらを線にしていくかの考えを、これまでのblock.fmの歴史を振り返りつつ、☆Taku Takahashiに語ってもらった。

―2011年に、block.fmを立ち上げられた経緯から教えていただけますか?

10年前、世界的におもしろい音楽が日本にたくさんあるのに、専門的に紹介されているラジオ番組がなかったんです。いろいろなラジオ局とお話をしたんですけど、当時のラジオ業界も、そのあたりに力を入れられる状況ではなくて。だったら自分で始めようと思い、名前は明かさずMySpaceで始めたのが、TCY Radio Tokyoという海賊ラジオでした。アーティストの皆さんにもゲストで来てもらったりしていたんですけど、このまま自分たちだけでやっていても広がりがないなと思って、ちゃんとメディアにしようと始めたのがきっかけです。

―block.fmという名前にした由来は?

個性あるアーティストやDJ たちが集まる場所を作って、積み木みたいにみんなでお城を作れたらいいなと思ったんです。最初は「tsumiki fm」にしようと思っていたんですけど、ちょっと違う響きがいいなと思っていたとき、VERBALから「block.fmにすれば?」と言われて、それいいね!ってなったんです。ブロックを積み上げていくという意味や、New Kids on The Blockっていう「近所からすげえ面白いやつが出てきたきた」って言葉があったり、ブロックパーティーとかブロックバスターって言葉もある。ニッチなものでも、いろんな個性を持った人たちが集まることによって、一つのムーブメントになりうる体験を自分が何度かしていたので、そういった部分を名前にも出したいなと思って決めたんです。

―影響を受けたり、モデルケースにしているラジオ局や番組はあったんでしょうか。

BBCです。イギリスの国営放送の放送局ですけど、同時にインターネット放送もしている。海外って日本と違って、普通に局のホームページに行ったら番組が聞けちゃうんですね。しかもリージョンとか関係なく。例えば、現場のDJたちが曲を紹介する「ダンスミュージックマラソン」って番組をやっていて、英語がわかる人は楽しめるし、音楽自体を楽しむことはできる。ただ、日本語で説明する番組だったり報道局があっていいなと思って。BBCの影響はめちゃくちゃ大きいです。

―block.fmで流す音楽は基本ダンスミュージックであるところから始まったんですね。

海外の人たちって、週末にクラブに行って楽しむのがライフスタイルなんです。逆に月曜から金曜までは、ラジオでクラブでかかってる音楽がいっぱい流れている。日本でも毎日そういった音楽が聞ける状況を作りたいと思っていたんです。平日は音楽を家で楽しんで、週末はクラブで楽しむ。それが当初のコンセプトでした。それを前提に、自分たちがかけたいものしかかけないルールをずっと保っていて。アーティストが一番かけたい、聞きたい、知ってもらいたい音楽を新旧問わずかけるというルールでやっていました。ただ、いまはクラブサウンドがポップスに入ってきているのも多いし、懐メロを聞きたいとか、今ハマっているものは、アニソンだろうがなんだろうが、かけたいものを発信してもらうことにすごくこだわっています。

―その想いを持ちながら10年続けてこられたのはすごいことだと思います。特に苦労したことがあるとしたらなんでしょう?

一番苦労しているところは、お金です。何度か破産寸前って体験もしてきました。ニッチなものを発信するのって簡単なことじゃなくて。その中でずっと続けるってすごく大変なんですけど、クリエイター、DJ、ミュージシャン、そういった人たちが自由にやってくれていて、彼らの発信する力やコンテンツにすごく助けられてきたと思っています。

ー場所があることで、出会いが生まれたり、新しい繋がりも生まれていくわけですもんね。

それをもっと強くしたい。それが今後の課題なんです。今回のリニューアルは、番組と番組やクリエイターとの繋がりを大事にしようというのが大きくて。編成もそうした形に変えたんです。曜日によってジャンルを分けたり、番組と番組の間のクロストークだったりも作ったんですけど、それはコラボレーションが生まれて欲しかったんです。もちろん曜日が違ってもみんなが繋がるようにしたくて。そこで何か新しいものが生まれてほしいなっていうのが今の課題で、そういうきっかけを作れるメディアになりたいなと思っているんです。

ー繋がりを強めたいと思ったきっかけがあったんでしょうか?

10年前にリリースされたクラブアンセムで「ロンドンは夜8時」という曲があって。これは元々ロンドン・エレクトリシティの「METEORITES」という楽曲にカワムラユキさんが日本語詞をつけて生まれた曲なんです。日本語の歌詞がついたことで全国のクラブでプレイされると大合唱が起きるくらいみんなに愛されるようになった曲なんですが、さらにそこから四つ打ちやハードスタイル、別ヴァージョンのドラムンベースなどいろんなリミックスが生まれて、そのリミックスそれぞれもリスナーに愛される作品になったという出来事があるんです。クリエイターが集まると、みんなで何かを作ることができて、また違ったワクワクを感じるものが出来上がる。だからblock.fmは、そのきっかけを作れるプラットフォームでありたいと思っているんです。

ー「BLOCK.FESTIVAL」はその場所を作る一環として、始めたところもあるんでしょうか?

そのときは、ちょうどコロナでライブができなくなり始めた時期で。「BLOCK.FESTIVAL」をやろうと思ったのが、perfumeのライヴが中止になった日だったんですよ。今、すごく音楽シーンが面白くなってるのに、ライブができなくなって面白い状況が止まってしまう危険性を感じて、その翌日か翌々日に「オンラインでフェスをやります」と言っちゃったんですよ(笑)。それをblock.fmの記事にして、いろんな人たちに相談してみたら、自分らでもやろうと考えてる人たちだったり賛同してくれる人も多くて。だったら一緒にやりましょうよって始めたのがきっかけですね。

ーその先のフェスがどうなるかわからなかった時期に立ち上げた、音楽フェスだったんですね。

メジャーアーティストが集まって演奏や表現した最初のオンラインフェスかもしれないです。いろんなアーティストたちが何とかしなきゃと思って参加してくれたからできたことで、多分当時最多の5回やったのかな。BLOCK.FESTIVALを始めたとき、コロナがひと段落したらリアルでみんなで集まれるイベントをしようねって約束をしていて。いろいろと準備はしているんですけど、リアルでやりつつもオンラインも大切にしたいと考えていて。コロナって嫌なことがいっぱいあったんですけど、いい発見もあって。オンラインフェスだったりオンラインイベントをやることによって、普段フェスとかライブに行けない人、例えば子供ができて遊びに行けないとか、逆に元々行ったことのない人たちが楽しんでることを知ることができたのは大きくて。だからこそ、ここからリアルのイベントを開催していきたいと考えつつも、オンラインへのこだわりは捨てたくないと考えていますね。

ーあくまでコンテンツファーストで、メディアは伝える手段として総合的に考えてらっしゃるんですね。

体験を元に感動してもらいたい。それが根底にあるんです。何かを感じてもらうのがすごく重要なことで。その人の感情に少しでも大きく刺さるようにするのが、ずっと変わらない目標なんです。

ー2020年代に入って再びレイヴカルチャーが盛り上がりを見せています。block.fmを10年やられてきて、ダンスシーンの変遷をどのように捉えられていらっしゃいますか?

block.fmを始めたときは、エレクトロの盛り上がりが大きくなってきた時期だったんです。そこから EDM が盛り上がり、ディスコ箱は強いけど大きい音箱が苦しくなっていった。その後、ようやくまた小箱が面白くなってきたんです。音楽だけじゃなくて、アートディレクターやフォトグラファーとか、若い世代の子たちが先輩たちの目を気にしなくていい環境で面白い空間を作り始めてきた。その動きが大きい箱に繋がっていくタイミングでコロナになったんですよね。大変な時期が続いたところから、再び新しい回帰としてレイヴとかがまた上がり始めてるんじゃないかな。ただ、エンタメ全体が細分化され、リリースの数もすごく増えてるし、遊ぶ場所もいっぱいある。そういう状況の中で、どうやって発信していくかがすごく重要なところなのかなと思います。

ーPodcastやYouTubeなど、個人で音声配信をする敷居も下がってきていると思います。そういう中でblock.fm としての強みをどういうところに感じてらっしゃいますか?

やっぱり集合体である、という部分ですよね。個人がどんどんコンテンツを出せたりするんですけど、やっぱり膨大なデータの中では点になっちゃうんですよ。どうやって線にするかが大切で。コンテンツがたくさんあるんだけど、点になっていて、繋がりづらい状況の中で、block.fmはそういう線になれるようになりたいと考えています。

ーラジオってリスナーとの交流が生まれやすいメディアだと思うんです。block.fm のリスナーとの間にそうした交流や共犯関係みたいなものが生まれている実感はありますか?

block.fmに参加した人たちって、根底は音楽好きの人たちが多いんですよ。音楽好きイコール、他のアーティストの曲も聴きたいって人たちが多い。そういう人たちが別の番組を聴いてくれて繋がったりすることが多いんです。リニューアルして3週間経つんですけど、そうした別の番組へと繋がりをさらに感じ始めている実感はありますね。ここからさらに、情報を知ってることによって音楽がもっと楽しくなるとか、曲の聴こえ方が変わるとかってことを、いかにもっと体験してもらえるかが重要なことで。今ある状況をしっかりとより良くして、もっと強くするっていうことが、今、重要項目かなと考えています。

ーblock.fmが、ラジオだけでなく活字メディアも始められた理由は何なんでしょう?

これ(スマートフォン)です。スマホって、電話でもあり、テレビでもあり、ラジオでもあり、プレイヤーでもあり、新聞でもあり、雑誌でもある。1個の端末でいろいろできるようになった。その人のライフスタイルの中で、今は文字を見たい、今音聞きたい、今映像で見たいって、状況によって同じ情報でも選択したいものが変わってきている。それを体験させられる状況を作らなきゃいけないなと思ったのが大きいです。あと音声メディアにできることと、活字メディアができることって違うじゃないですか? 活字メディアって、編集されているから面白いと思うんですね。いい文章でも編集力がないと伝わらなかったりする。大事な部分の展開を作っていって伝わるが大事だと思うんです。同じ情報でも、それぞれの特性があって、伝え方が変わってくる。TPO にあったメディアの発信があって、それでラジオも記事も両方あっていいんじゃないかなっていうところから始めたんです。

ー情報を伝えていくことを立体的に考えてらっしゃるんですね。

block.fm のラジオで面白い放送があったら、それを文字起こしして記事にすることもあります。音を出せないときは文字で読んで、その後ラジオを聞いてみようってことができるし、そういう使い方をするのが当たり前になってきてるんじゃないかなって思いますね。

ー今回10周年を迎えられ、20周年、30周年に向けて続けられていくと思うんですけど、現状の時点で、未来に向けてどんなことを考えてらっしゃいますか。

これは最初から変わっていないんですけど、クリエイターが作った面白い作品を少しでも多くの人に知ってもらいたい。それをやり続けているんですよね。もちろん運営していくためには、常に収入がないと続かないからお金は大事なんですけど、block.fmをやってお金持ちになりたいという感覚ではなくて。常に刺激的な音楽だったり、音楽の情報だったり、アーティストの感じていることだったりを発信して、新しい発見をいろんな人たちにしてもらいたい。それ以外ないんですよね。その体験の一つを増やしたいと思ってるのは、さっき言っていたフェスです。

―繋がりを、より立体的に考えているんですね。

めちゃくちゃ生々しい話になっちゃうんですけど、何十年前と今の音楽の制作予算って全然違うんですよ。例えば、サブスクで何千万再生されたらリクープできるし、ラッパーの人がめちゃくちゃ高い車買っているみたいな夢のある話もあるんですけど、それは一部の人たちだけで、メジャーレーベルのアーティストもアルバム制作費や楽曲制作費が昔と比べて大幅に下がってる中でやっている。その範囲内でやることも大切だけど、たくさんのミュージシャンを呼んで大編成で音楽作ってみたり、もっとお金をかけることによって、聴く側にも大きな夢を見せられる可能性があると思っているんです。そういう部分で、クリエイティビティをサポートするのがレコードレーベルだけじゃなくて、企業という可能性もあると思うんです。今お話させていただいている企業さんでも、体験をブーストさせるって考えを持っていて。音楽と親和性があるよねって感じてくださっていて、アーティストが発信するものをよりブーストできるものにしたいと言ってくれている人たちもいるんです 。

ーこれまでの座組に囚われないクリエイティブのあり方が生まれるかもしれない、と。

日本って、お金の話がタブーになりがちなんですけど、誰だって仕事をしている理由はお金がないと暮らしていけないからで。それはアーティストも一緒。アルバムを作るにも、ライブをするにも、メディアを続けるにもお金がかかる。自分が楽しみたいものを持続させるためにはお金が必要だし、パーティーは大きい方が楽しいですよねっていうシンプルな考えなんです。そもそもの話、日本にある才能って全世界と戦えるレベルにあると思うんです。あとはそれをどうやって積み重ねていくか。ここ20年くらいの韓国の積み重ねが、BTSに繋がっていると思うんですよね。ちゃんと積み重ねていくっていうことが僕はすごく大事なんじゃないかなと思います。

ーコロナとの付き合い方が少しずつ見えてきた中で、再び海外のアーティストやリスナーが日本に来たりすることで繋がりも生まれていくんじゃないかと思います。そのあたりはどのように考えてらっしゃいますか?

海外のフェスがパッケージごと日本に来ると、ヘッドライナーが海外のアーティストのみでってことが結構あるんですけど、僕はあまり好きじゃなくて。日本のDJたちとかをちょっと入り込ませることがすごく大事だと思うんです。それがクラブカルチャーに繋がる。日本の若手でもめちゃくちゃ面白いアーティストがいるし、ベテランでも素晴らしいアーティストがいるから、ちゃんと繋がりを作らないと刹那的なものにしかならないんですよね。もし自分が外国のアーティストたちも呼んだフェスをするのであれば、同じ舞台に日本のアーティストも立てるような状況を作っていきたいなと強く思っています。同時に、素晴らしいアーティストがいる中、自分もアーティストとして頑張らねばならないと思っています。

<イベント情報>



「glo™️ × block.fm「NEX STAGE」Launch party」

配信日時:2021年12月6日(月)18:30〜23:00
視聴方法:
@glo.japan Instagramアカウント
※20歳以上、Instagramアカウント登録している方のみ
URL:
https://www.instagram.com/glo.japan/
イベント詳細
https://block.fm/news/nexstage

”満足感をブースト”をメッセージに掲げる「glo™️」と10周年を迎えた新世代の音楽マルチメディア「block.fm」が、 2021年12月6日、アーティストとともに音楽のネクストレベルを創造する新プロジェクト「NEX STAGE」を発表する。
2020年、2021年と音楽業界は厳しい状況に追い込まれ、変革を迫られてきた一方、オンラインライブの台頭やステージ演出の躍進など、新たな取り組みも生まれた。まもなく迎える2022年は音楽業界・アーティストにとって大きな転換期となる中、glo™️とblock.fmは音楽とアーティストのチャレンジを応援していきたいという想いから、音楽の新しいソーシャルプラットフォームとして、アーティストと共にネクストレベルを創造する新プロジェクトが誕生する。

「NEX STAGE」発表では、本プロジェクトのプロデューサーである☆Taku Takahashi(m-flo, block.fm)よりローンチ宣言を行うとともに、豪華アーティストからプロジェクトへの賛同コメントをお披露目する。また、本プロジェクトのオープニングムービーではMAGGYがプレゼンテーターを務める。MAGGYはblock.fm開局時のオープニングムービーに出演、block.fm10周年を機に再びタッグを組み「NEX STAGE」の魅力を伝えることになった。

続いて、アーティスト達によるミュージックカンファレンスを開催。”About Your NEX STAGE”をテーマに、 ☆Taku Takahashi、SKY-HIが「世界に通用するアーティスト育成とは」、大沢伸一、ぷにぷに電機、AAAMYYYが「音楽とSDGs」について語る予定だ。(登壇者は追加・変更の可能性あり)。「NEX STAGE」でしか実現できない豪華アーティストの共演と、アーティスト自身が考えるネクストステージについて熱いトークを繰り広げる。

イベント後半には、最新テクノロジーを駆使した未来を感じる、まさに「NEX STAGE」をイメージしたステージ空間の中でのアーティストライブも開催。ライブには、石野卓球、板橋兄弟(PUNPEE & 原島”ど真ん中”宙芳)、ビッケブランカ、80KIDZ(LIVE SET | AAAMYYY, YonYon, ぷにぷに電機がボーカルで参加)、JP THE WAVYが決定。今年の想いと未来へのチャレンジに向けた力強いパフォーマンスが展開される。