「HPVワクチン」安全性についての正しい理解のために
来年度から、子宮頸がんを予防するHPVワクチンの積極的勧奨が再開されることになりました。HPVワクチンの接種に関しては、2013年に大きく報じられた「副反応」のニュースが記憶に残っているという方も多いと思います。今回の積極的勧奨の再開に際し、気になるのは「その副反応は、大丈夫なのか?」ということではないでしょうか。ワクチンの安全性とあわせて副反応の症状について、産婦人科医の稲葉先生に詳しく伺いました。
監修医師:
稲葉 可奈子(予防医療普及協会)
医師・医学博士・日本産科婦人科学会専門医。予防医療普及協会 顧問。2008年京都大学医学部卒業、京都大学医学部附属病院での初期研修ののち、産婦人科へ進路を決め、東京大学医学部附属病院、三井記念病院を経て、東京大学大学院にて医学博士号を取得。現在、関東中央病院産婦人科に勤務。
編集部
HPVワクチンは副反応がおきやすいのでしょうか?
稲葉先生
日本では2013年にHPVワクチンによる副反応ではないかと疑われる症状がマスメディアによって大きく報じられたため、副反応が起きやすいワクチンというイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかしその後、HPVワクチンを接種した人と接種していない人、いずれのグループにおいても諸症状の発生頻度に差はなく、それらの諸症状とHPVワクチンとの間に因果関係は確認されないということが日本だけではなく、世界中の研究からも明らかになっています。したがって、それらの副反応は、HPVワクチンの接種が原因で起こる症状とはいえないのです。
編集部
HPVワクチンによる副反応にはどのような症状があるのでしょうか?
稲葉先生
最も多い症状は接種部位の痛みで、約6割以上で認められています。その他には、接種部位の腫れや赤みがでることもあります。しかし、それらの症状は数日でおさまることがほとんどです。
編集部
ワクチンの種類(2価、4価、9価)で副反応の発生率は違うのでしょうか?
稲葉先生
多少の発生頻度の差はありますが、報告されている副反応や有害事象の発生率に大きな差はありません。いずれのHPVワクチンも安全性は確認された上で承認されており、世界中で使用されています。
編集部
HPVワクチンを接種した後に、気になる症状がでたらどうしたらいいのでしょうか?
稲葉先生
それがHPVワクチンの接種によるものなのか分からなくても、気になる症状がある場合は接種した病院を受診して下さい。ワクチンとの因果関係はすぐには分からないことが多いですが、それが副反応によるものなのかどうか、専門家からなる国の審査会で審議されます。一方で、ワクチンとの因果関係にかかわらず、症状改善のための治療が行われます。必要に応じて、全国の協力医療機関と連携することもあります。
編集部
重症化したり、後遺症が残ったりすることはあるのでしょうか?
稲葉先生
失神も含めた重篤な有害事象は1万人あたり5人と言われていますが、その後約9割の人は回復しています。未回復の症状としては、倦怠感、関節痛、めまい、頭痛などが報告されていますが、HPVワクチンを接種していない人においてもこれらの発生頻度は変わりません。したがって、これらの症状はHPVワクチンが原因とはいえず、あくまで有害事象なのです。
編集部
HPVワクチンを接種する際に、注意するポイントはありますか?
稲葉先生
注射や採血が苦手であったり、以前に倒れたことがあったりする場合は、問診の際に伝えていただければ横になった状態で接種することが可能です。血管迷走神経反射といって、HPVワクチンに限らず、痛みや緊張が原因で気分が悪くなったり、失神したりすることがありますので注意が必要です。
編集部
HPVワクチンを接種した後に、注意するポイントはありますか?
稲葉先生
接種後は院内でしばらく様子をみて、気分不良などないことを確認してから帰宅しましょう。また、帰宅後になにか気になる症状があれば、まずは接種した病院に連絡をして、受診してください。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
稲葉先生
HPVワクチンの副反応については、誰もが気になるところだと思います。しかし、安全性や有効性が確認され承認されているワクチンなので、安心して接種していただいて大丈夫です。それでも不安な場合は、不安なまま接種するのではなく、かかりつけの先生や接種する病院の先生に相談して、HPVワクチンの意義と副反応についてよく理解してから接種をするようにして下さいね。
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