京漬物の名店に聞く!新米ご飯に合う5つのお漬物【お米の魅力、ご飯の味力vol.12】

新米と一緒に食べたい!京漬物のおいしい5品

100余年ののれんを誇る西利漬物店からのれん分けを受け、1940年に誕生した京漬物の名店「京つけもの西利」。その本社は、JR京都駅から歩いて約15分、洛中・七条堀川の西本願寺前にあります。

「旬・おいしく、やさしく。」をテーマに製造から販売まで徹底した一貫体制で品質管理に注力している同社。本社1階の本店店舗には、千枚漬をはじめ、色とりどりのお漬物が並んでいました。

本記事では、そんな西利の販売部門を担っている杉山栄一さんに、新米を存分に楽しみたいこの時期に、ぴったりのお漬物をさっそく教えてもらいました。

1. やっぱりこれは外せない!京漬物の代名詞「千枚漬」

京の伝統野菜「聖護院かぶら」を専用のかんなで薄く削り、1枚ずつ丁寧に漬け込んで作られたお漬物。京漬物の代名詞とされ、進物にも使われる人気商品です。

「聖護院かぶらのさわやかな食感と千枚漬ならではの上品な甘みが、新米のおいしさを引き立てます。ぜひご飯と千枚漬を同時に食べてみてください。白米と千枚漬、白と白の絶妙なマッチングがお口の中で魅惑のハーモニーを奏で、京漬物の真髄を楽しませてくれます」

2. 秋茄子の旨味がうれしい「京のあっさり漬・茄子」

浅漬ブームの火付け役となった西利の「京のあっさり漬」。みずみずしい茄子本来の旨味をオリジナルの漬汁がしっかり受けとめています。

「鮮やかな紺色の茄子が食欲をそそります。茄子本来の旨味がご飯の旨味に重なる瞬間をぜひ感じてください。お漬物とご飯の相性の良さとはこのことかと、実感できるはずです」

3. 大根のみずみずしさを堪能!「京のあっさり漬・大根」

昆布床で文字通りあっさりと漬け込んで作られています。同じ大根で作る「たくあん漬」とは好対照のお漬物です。

「フレッシュな大根のシャキシャキ感がしっかり感じられ、ご飯のやわらかい食感との対比が楽しくなります。大根らしい口当たりの良さは、炊き立てのご飯から、おにぎり、お茶漬け、各種の丼物など、どんな米飯にもマッチしてくれる万能派です」

4. 上品な苦味が魅力。これぞ大人のお漬物「みぶ菜」

西利の「みぶ菜」は、京の伝統野菜「壬生菜」がもついぶし銀のような個性を、オリジナルの漬汁で存分に引き出したお漬物です。

「壬生菜独特の上品な苦味が、新米ならではの甘みをしっかり感じさせてくれます。まさに新米にぴったりのお供、大人のためのお漬物です。鮮やかな緑の色味は、千枚漬や大根など白いお漬物とセットで盛り付ければ、お皿に華やかさも演出してくれます」

5. まるで和風サラダ!新感覚のお漬物「たまねぎ」

新鮮なたまねぎを丸ごと昆布とカツオ節に漬け込んで作られている「たまねぎ」。たまねぎらしいシャリシャリとした食感がしっかりキープされています。

「その口当たりはまさに和風サラダ。お漬物の新境地とも言える味わいで、もはや添え物ではなく、立派なおかずとしても楽しめます。オニオン好きな方はぜひ一度試してください。たまねぎの新たな世界が拡がります」

京漬物をおうちで楽しむ3つの秘けつ

新米に合うおすすめの京漬物5品をおうちで楽しむためのポイントも教えてもらいました。

1. 何も加えず、そのままで食べるのが一番!

「お漬物にしょうゆやその他の調味料をつけて食べる方を時折見かけますが、その必要はまったくありません。素材本来の味と漬汁の味がバランス良く引き出されるように仕上げておりますので、ぜひそのままで楽しんでください」

2. 冷蔵庫でしっかり冷やし、食べる直前に食卓に並べる

「京漬物は冷蔵保存が基本です。しっかり冷やしておいたほうが、食感も味もハッキリします。開封後に残ったぶんは、保存容器に入れたり、ラップに包んだりして冷蔵庫で保存しましょう」

3. 漬汁に浸して保存する

「漬汁に浸しておくと良い状態で保存できます。可能な限り、容器に空気が入らないようにして漬汁に浸し、冷蔵庫で保存するのがポイントです。

大根など漬汁をほとんど含まないお漬物は、ラップに包んで保存してください。空気に触れる時間を少なくするのがおいしさを保つ秘けつです」

お漬物の歴史を紐解いてみましょう

新米のおいしさを引き立てる京漬物を教えてくれた杉山さんが、「せっかくなので」とお漬物の歴史について話を聞かせてくれました。

「お漬物が初めて記録に現れたのは奈良時代の頃で、平安時代には種類が増え、宮中の宴や儀式に登場。10世紀半ばに記された『延喜式(えんぎしき)』(927年刊)にて、かぶらや茄子などの野菜から果物、山菜など、約50種類ものお漬物を確認できます。

ただ、当時は塩が貴重で高価なものだったので、朝廷や貴族など限られたごく一部が食していたようです」

庶民に定着した江戸時代。お漬物ブームの到来

「室町時代になると野菜の栽培が盛んになり、お漬物が全国各地に根づいていきます。そして江戸時代には、庶民の食卓に白米がのぼる機会が増え、精米時に残った米ぬかを利用するぬか漬が暮らしに溶け込み、お漬物の普及が加速しました。

江戸中後期にはさまざまな漬物専門書が刊行され、中でも著名な『四季漬物塩嘉言』(1836年刊)には、たくあん漬をはじめ64種類ものお漬物のレシピが載っています。まさにお漬物ブームの到来でした」

幕末に登場した「千枚漬」は宮中料理人が考案

「江戸時代末期になると、京漬物の代名詞、千枚漬が登場。宮中料理人の大藤藤三郎が、聖護院かぶらを薄く切り、塩や酢に漬けるという新しい調理法を考案しました。明治維新とともに、天皇が東京に移った後も、京に残った藤三郎は、その調理法を確立させ、『千枚漬』として売り出しました。

それまでは長期保存食としての位置づけが中心だったお漬物とは異なり、聖護院かぶらの純白で美しい姿と上品な味わいは多くの人を魅了し、『すぐき』『しば漬』とともに京を代表するお漬物として「千枚漬」はその地位を築いていきました」

食文化のひとつとしてのお漬物

「明治以降、西洋化の波は日本の食卓にも訪れましたが、お漬物は変わらず副菜の重要な地位を占め、ご飯の良きパートナーとして今日まで歩んできています。それは千枚漬のように、郷土を代表するお漬物が全国各地にしっかりと根づいていることからも分かります。

北海道の松前漬、岩手の金婚漬、東京のべったら漬、長野の野沢菜漬、奈良の奈良漬、広島の広島菜漬、福岡の高菜漬など、日本の食文化を支える重要な役割を担うお漬物が数多くあります。

さらに2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、「飯・汁・菜・香の物(お漬物)」の組み合わせとして、お漬物が世界からも注目される存在になっています」

新米と京漬物でおいしい秋をさらに満喫

炊き立てのご飯に京漬物。シンプルに新米を楽しむにはベストの組み合わせですね。教えてもらった「千枚漬」「茄子」「大根」「みぶ菜」「たまねぎ」のどれもがご飯の風味を際立たせ、かつそれぞれの味が食べる喜びをふくらませます。

おいしい秋、京漬物とともに、新米のおいしさを存分に満喫してくださいね。