TEAM NACS の急先鋒として活躍する大泉洋 (写真:橋本龍二)

写真拡大

 3月26日より公開される映画『騙し絵の牙』でやり手の雑誌編集長を演じる俳優の大泉洋。コロナ禍の中、昨年は映画『新解釈・三國志』などで人々に笑いを届け、今年に入ってからも、本作など主演作が続き、まさに快進撃が止まらない。彼が所属する演劇ユニット・TEAM NACS(森崎博之、安田顕、戸次重幸、音尾琢真、大泉)でも突出した存在となっているが、メンバーとの関係に変化はないのか? さらには主演俳優としてソロ活動が目覚ましい彼にとってチームの存在とは? 大泉の心の“現在地”を聞いた。

 ドラマ「ハケンの品格」(2007)で知名度をさらに上げ、映画『探偵はBARにいる』シリーズなどで主演俳優としての道を切り拓いてきた大泉。その一方で TEAM NACS の活動も継続し、4月より舞台「マスターピース〜傑作を君に〜」(TEAM NACS 第17回公演)への出演も予定されている。メンバーそれぞれが活躍の場を広げている中、その急先鋒として活躍する大泉とって現在、チームはどのような存在となっているのか。「昔、同郷の北島三郎さんと対談したときに、『北海道は、自分を支えてくれる背もたれみたいなもの。安心して座っていられる』とおっしゃっていましたが、素晴らしい言葉だなと。TEAM NACS もそういう存在かもしれませんね」と言葉をかみ締める。

 さらに、ソロ活動が忙しくなっても、「僕は1人じゃない、あのメンバーがいるからこそ強くいられるんだ」という思いが、心の支えになっているという大泉。だが、決してベタベタした関係ではないとも強調する。「確かに仲間ではあるけれど、だからといって、全てをさらけ出して語り合うわけでもないし、また、しゃべるメンバーと、そんなにしゃべらないメンバーもいる。それに、一番身近なライバルでもあるので、メンバーがいい仕事すると、うらやましいし、悔しいって思いもあります。でもメンバーの扱いが悪かったりすると、それはそれで腹が立つ。ホント、不思議な関係」と赤裸々に思いを明かす。

 ただ、そうは言っても、「心のどこかで、『TEAM NACS の一員として知名度を上げたい』『TEAM NACS の価値をもっと上げたい』という気持ちも強いんです」と思いがあふれる大泉。「先ほど、ライバル心が燃えると言いましたが、メンバーがいい仕事をすると、その反面、『また皆さんに知ってもらえた!』といううれしさも実はあったりするんですよ。安田顕が演じた『HK/変態仮面』シリーズの役(変態数学教師や変態仙人)、僕、できませんからね(笑)。あれは凄い! と素直に認めてしまう。つまり、そういうことなんです。できる、できない、ということも含めて、メンバー同士で認め合い、そして高め合っていく、それが TEAM NACS なんです」と力を込めた。

 そんな大泉が主演する映画『騙し絵の牙』は、「罪の声」で知られる塩田武士の小説を『桐島、部活やめるってよ』などの吉田大八監督が映画化。出版界の光と闇を描く本作で大泉は、廃刊の危機に瀕した雑誌「トリニティ」を存続させるために奔走する風変わりな編集長・速水を熱演する。そのほか、松岡茉優、宮沢氷魚、池田エライザ、斎藤工、中村倫也、佐野史郎、リリー・フランキー、塚本晋也、國村隼、木村佳乃、小林聡美、佐藤浩市ら豪華キャスト陣が名を連ねる。

 塩田によって当て書きされた大泉演じる主人公・速水は、誰にでも愛される“人たらし”ながら、その笑顔の裏に牙を持つ“騙し絵”のような男。「当て書きなので役づくりはいらないと思っていましたが、いつも以上に難しかった」と語る大泉は、緻密な演出で知られる吉田監督から、演じることの厳しさを改めて教えられたという。「大八さんの場合、素の僕が出てくるとNG。監督の中でイメージする速水像というのがしっかりあって、そこにどれだけ僕が寄せられるかがポイントだった」と述懐。骨太なエンタメ作品の中で、俳優・大泉洋が新境地を見せる。(取材・文:坂田正樹)