関連画像

写真拡大

立ち食いそばチェーン「名代富士そば」を運営するダイタングループ(東京都渋谷区)で働く社員16人が11月13日、未払い残業代など計約2億4785万円の支払いを求める労働審判を東京地裁に申し立てた。10月30日にも社員2人が同様の労働審判を申し立てている。

申し立て後に会見を開いた社員によると、残業代が支払われていない背景には「勤務表の改ざん」があるという。

会見には、実際に勤務表の改ざん作業に携わっていた現役社員も参加。「常務取締役からの指示で、やらざるを得なかった。店長に申し訳ない。もう改ざんしたくないという気持ちで、組合を結成した」と話した。

●組合の団体交渉は決裂

今回労働審判を申し立てたのは、今年5月に結成された「富士そば労働組合」に加入する店長ら。

5月から6月にかけて、会社の役員が、店舗を統括する一部の社員に対して、タイムカードを押さずに勤務するようメールで指示した。その際「週2日、特別休暇にあてたい」とし、働いているのに「特別休暇」を取得して休んだことにするよう求めた。

店長からは「不正を丸め込んで納得させることはできません」などという社長宛の嘆願書が出された。

組合は、事業主が支払った休業手当の額に応じて支払われる「雇用調整助成金」の不正取得を指示していると指摘。6月から3度の団体交渉をおこない、未払い残業代の支払いや長時間労働の是正などについても改善を求めたが、10月に交渉は決裂した。

●「店長に申し訳ないと思っていた」

組合委員長で、本社係長として勤務表改ざんに関わったという安部茂人さんは「業務命令とはいえ、たずさわった人間。やってはいけない失態を起こしてしまいました。申し訳ございませんでした」と頭を下げた。

安部さんによると、勤務表の改ざんは本社係長が勤怠締めの15日前後におこなっていた。土日出勤や8時間を超えた分の勤務を削除し、1日の労働時間を8時間、週40時間にし、土日出勤はないように「改ざん」していたという。

安部さんは「店長に申し訳ないと思っていた。新型コロナウイルスの感染リスクを負って、8時間で終わらない現場を体を張って守ってくれている。なんとも言えない気持ちでやるしかなかった」と振り返った。

この会見には、現職の店長や、体を壊し休職中の店長主任なども参加。「今の会社は普通ではない。責任所在を明らかにして、きっちり責任を取ってもらいたい」「会社が正常な体制を作った上での再出発を望んでいる」と訴えた。

●会社側のコメントは

親会社の「ダイタンホールディングス」は弁護士ドットコムニュースの取材に、以下のように回答した。

「これまでの労働組合との団体交渉では、弊社グループとしては正社員の労働時間把握に問題があったことを認めた上、実際の労働時間が確認できればそれに基づく時間外手当を支払う旨伝え、具体的な出退勤時間とその資料の提出を求めてきたところ、労働組合がこれを拒否して交渉決裂になった経緯があり、大変残念に思っております。

労働審判等の裁判所の手続においても適切に対応していき、実際の労働時間が確認できれば、それに基づく時間外手当を支払う方針です」