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新型コロナウイルス感染のリスクがある中、社会を支えた物流や小売業などの「エッセンシャルワーカー」らが7月17日、最低賃金のアップを求めて記者会見を開いた。

現在、今年度の最賃が検討されており、7月20日にも目安が確認される見込み。近年は年3%程度の引き上げが続いたが、今年はコロナの影響で慎重論が出ている。

労働者らは「コロナ禍だからこそ、最賃を上げてほしい」と訴えた。

●コロナ禍を支える仕事は時給が低かった

厚生労働省の調査によると、卸売や小売、運輸業など、コロナ禍で活躍した業界は、最賃近傍(100〜115%)で働く労働者数が他の業界よりも多い。

「コロナの最前線」となった医療・福祉業界ですら、最賃近傍の労働者が6.6%おり(2014年)、コロナ禍の社会を支えている仕事の時給の低さが見て取れる。

最賃が上がれば、このように時給が低い業種の時給も上がると考えられる。また、コロナで労働時間そのものが減ったという労働者もおり、最賃のアップは1つの希望と言えるだろう。

病院の調理職員で、岡山医療生活協同組合に所属する岩本千鶴さんは、テレビ通話で参加。看護師が時給1375円、介護士が950円、ヘルパーが930円(岡山の最賃は833円)であることを紹介し、次のように述べた。

「命の危険と常に隣り合わせの職業に見合った賃金を実現しないと、とても将来の医療介護を守る人材に希望を持たせることができません」

「新型コロナ感染症の最後の砦である医療介護を守るためにも、最低賃金の大幅引き上げを訴えます」

●「全国一律1500円は必要」「アップの流れ止めるな」

もちろん、最賃が多少上がったところで労働者の収入が劇的に変わるわけではない。

だが、静岡県立大短期大学部の中澤秀一准教授は、「最低賃金の引き上げの流れをここで止めてはならない」と語る。

中澤准教授は、全労連と協力して、全国の「最低生計費調査」を実施。単身若年層の生活には月22〜24万円が必要として、ここから最賃は全国一律で少なくとも1500円は必要だと試算している。

「一律」なのは、地方は家賃などが安い一方、車の維持費がかかるなど、実は地域ごとの生活費は大きく変わらないからだという。

「1500円というのは必要な数字。本当に短時間で実現しなくてはならないと考えている。最賃が上がらなければ、春闘にも影響が及ぶ可能性が高い」

●コロナ禍でもイギリスは6.2%アップ

先の見えないコロナ禍の中、最賃を上げれば、事業者の負担となり、雇用にも悪影響が及ぶという考え方もある。

一方、世界に目をやれば、イギリスは今年4月から、最賃(NLW)を6.2%引き上げた。アメリカでもカリフォルニアなど、コロナ禍でも引き上げた州がある。

「企業側からの抑制してくれという圧力が大きいので、日本では上がりづらいが、海外では中長期的な視野で上げた方が経済的に良いという政策がある」

中澤准教授は「日本は企業の『支払い能力』で最賃を決めるが、本当は『労働者の生活を守る』という決め方をしないといけない」と訴えた。