親や祖父母が亡くなって、悲しみのなかで対応を迫られるケースが多い相続の問題。生前にきちんと話し合いの時間が持てずにトラブルへと発展してしまうことも。今回はESSE読者に実体験を取材し、詳しく聞いてみました。


だれもが納得できる相続とは…(※写真はイメージです)

親族間で裁判。絶縁の引き金にもなる相続問題。孤独になった老人は…



「祖父が亡くなったときに、叔母が今後の祖母のことではなく自分の権利ばかりを主張して祖母を泣かせていました」(神奈川県・主婦・40歳)

だれかの死亡と同時に発生する相続。亡くなった人との関わりが強かった人ほど、精神的なダメージを負っているなかで対応をせざるを得ないのがつらいところ。

●自分の主張ばかり通そうとする強引な親戚たち

「小学生の頃にひいおじいさん、ひいおばあさんが立て続けに亡くなりました。毎週お見舞いに行き会っていたため、当時ものすごいショックでした。子どもながらに悲しくてずっと泣いていたのですが、その目の前でお金の話が。率先して話すのは、見舞いも介護も一切しなかった、独身のどら息子でした。親に教えられた訳でもなく、私は義理の大切さやお金の汚さを感じ取ったのを覚えています」(岡山県・派遣・32歳)

「私の父親が亡くなり、私と(父の)再婚相手が相続することになりました。すると、父親の両親(私にとっての祖父母)に、相続人に自分たちが入っていないのはおかしいと責められました。退職金なども自分たちがもらうべきだと主張してきて、怖かったです。もしかしたら認知症もあったのかもしれませんが、お金を前に人は変わってしまうなと思いました」(広島県・主婦・33歳)

高齢者の親族がいたり、独断でさまざまな判断をして進めてしまう人がいる場合、騙されてしまったり、後悔するような結果に陥ってしまうケースも発生しているようです。

●親や祖父母が相続を後回しにした結果…

不動産は相続登記が大変だったという声も目立ちました。

「先代の相続のときに不動産の名義変更をしていなくて、父親が亡くなったときの不動産の名義変更の際に相続人が増えてしまい、署名捺印をもらうのに一苦労したそうです」(東京都・自営業・37歳)

親族が遠方に住んでいる場合は、書類をリレーしなければならないような面倒に直面した人も。一方で、相続すべき人がなにも対応をしなくて困っているケースも。

「祖父が死去し、残された祖母は施設に入所しましたが、自宅は祖父の名義のまま。祖母が家屋の修繕費を出したり、嫁いできた母や孫の私が面倒をみるはめになっています。祖父の長男、私からすれば叔父が一切関与しないので困っています」(長崎県・アルバイト・31歳)

不動産の管理をまかされてしまったり、押しつけられてしまった場合、固定資産税や火災保険の支払いなど、負担が重くのしかかります。売却する権利もないので苦しい立場に。

●相続放棄するにも手続きに苦労


相続によって残された家族が苦労するケースも(※写真はイメージです)

「夫の父が亡くなる一年前に多額の借金が発覚。亡くなってからも、相続放棄の手続きが大変でした」(愛知県・パート・46歳)

相続放棄にはタイムリミットもあり、万が一、ミスをするとマイナスの遺産を引き継ぐ事態にもなりかねないので、専門家にお金を出してお願いする場合も多いようです。

●相続するときに、いきなり知らない人が登場…

「家族のほかに相続人がいました。父親の前妻の娘で、前妻がいたこと自体聞いていませんでした」(神奈川県・アルバイト・37歳)

ほかにも、近づいてきた人に「なにかあれば助けてあげる」などと甘い言葉をかけられた孤独な老人が、親族に黙って不動産の持分を贈与していたという状況に出くわした人もいました。

少子高齢化や核家族化が進み、親族との関係性が薄くなりつつある現代、離婚や親族間のトラブルを抱え、孤独になまま年をとってしまった人は、強欲な人たちに狙われやすい立場ともいえます。

お金を使い込まれても死ぬまで何もできないことがある



資産をもっている老人を一部の親族が囲い込んでしまうケースもあります。自分たちの都合で本人の意向を無視し、勝手に金銭を独り占めしているという実態もあるようです。


亡くなった後に使い込みが発覚することもあります(※写真はイメージです)

●金目のものを根こそぎ持っていかれた

「母方の祖父が、葬式代などしっかり貯金して管理していたのですが、叔母(母の妹)がその通帳を見たあとに突然、祖父を自分の家で引き取ると言い出しました。そして一人暮らしでのんびり暮らしていた祖父を無理矢理施設に入れて、通帳の貯金を使い果たしていました。
そのため、祖父が亡くなったあと、私の母と父がお葬式など金銭の負担をしなくてはならない事態に。金目のものはすべて根こそぎ持っていかれてしまいました。私たち家族が折れることでその場は収まりましたが、もう少しきちんと法律を理解しておけばよかったと思っています」(愛知県・主婦・36歳)

●お金が勝手に引き出されていた…

「聞いた話です。遠方に住んでいる祖父母を近くにいる親戚がちょくちょく見に行ってくれていたのですが、少しずつ通帳や自宅からお金を引き出していたのだとか。亡くなったあとにわかった金額は何千万にもなり、裁判に。お金は少しずつ返してもらうことになりましたが、親戚とは疎遠になってしまったそうです」(神奈川県・主婦・41歳)

「介護」などの事情を建前に囲い込んでしまう場合、赤の他人なら誘拐になりますが、親族の場合は、対応策がないのが実情です。
相続するときにも、使い込みの実態や証拠を見つけ出す作業からはじめねばならず、多大な費用と労力が発生することも。

最後に、相続の裁判の最中に、関係者が次々と不幸に見舞われたというエピソードをご紹介します。

●因果応報ってある?激しい相続争いの結果、悲劇のような展開に…

「父方の親戚が亡くなりましたが、子どもがなく、多額の資産を残していたため親戚で相続することに。話し合いの末、亡くなった親戚が経営していた会社は従業員の1人が継ぐことになったものの、彼がかなりの悪人で使途不明金がものすごい額に…。しかしそのことが発覚した後に、彼は末期がんであることがわかりました。

遺族の1人は勝手に画商に美術品を横流ししたり、遺品整理では金目のものをがめつく取ったり。後日風邪をこじらせた末の医療ミスで植物人間になってしまいました。
ドラマのような展開に残りの親戚は唖然。結局2年以上かかって相続は無事に終えたものの、かなりしこりの残る形となりました」(東京都・会社員・38歳)

人生の終わりに、もめ事が連発し関係者に遺恨が残ってしまうのは、悲しいもの。本人の意思がしっかり尊重される形で、円満に対応できるのが一番ですが、お金のことになるとなかなか一筋縄ではいかないようです。
遺産相続でもめないためには、きちんと遺言書を残したうえで、家族や親戚と良好な関係を保つことが重要です。

<取材・文/烏丸莉也>