今季最終戦を戦った渋野日向子【写真:荒川祐史】

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前週Vで成長、渋野を指導する青木翔コーチ「一つ大人になれた」

 女子ゴルフのツアー最終戦・LPGAツアー選手権リコー杯は1日、宮崎CC(6535ヤード、パー72)で最終日が行われ、首位と2打差の3位で出た賞金ランク3位の渋野日向子(RSK山陽放送)は通算7アンダーで2位タイ。逆転賞金女王へ単独2位以上の最低条件をクリアできず、5アンダーの5位で終えた賞金ランクトップの鈴木愛(セールスフォース)が女王争いを制した。渋野が逆転での史上最年少女王を逃した直後、青木翔コーチは1年を振り返りながら、5つの海外メジャー全制覇という壮大な目標を明かした。

 重圧の中で戦った1週間。最終日は2つ伸ばして7アンダーの2位タイだった。念頭に置いた優勝には届かず、青木コーチは「もうちょっと落ち着いてできれば、もっと自分らしさを出せたと思う」と振り返った。

 激動の1年を終えた。ツアー本格参戦1年目の21歳。5月に国内メジャーのサロンパスカップでツアー初優勝すると、8月には全英女子オープンで日本人42年ぶりの海外メジャー制覇を果たした。“しぶこフィーバー”で社会現象を巻き起こし、一躍時の人に。それでも出場できる試合にはエントリーを続け、国内4勝で賞金ランク2位に入った。

 青木コーチは、大きなケガのない愛弟子に「体の強さは非常に感じます。回復力も凄いですし、トレーニングはみんな好きではないけど、やらなきゃいけないことはやる」と渋野の努力を語る。「ハートが強いというより、思い切りがいいですね」と精神面の強さの一端を明かした。

 無名の存在から女子ゴルフ界の顔に。しかし、ターニングポイントは全英女子オープンの快挙ではないという。「一番はプロギア(PRGRレディス)ですね。ボロボロに負けたやつです」と同コーチ。3月の開幕2戦目、最終日に鈴木と同組だった。鈴木が68で回って優勝した一方で、渋野は73で6位。国内トップゴルファーとの差を見せつけられた。快進撃への“スタート地点”だった。

 今大会前週の大王製紙エリエールレディスは、定由早織キャディーとのコンビでは初優勝。渋野は涙を流して喜んだ。青木コーチは「チーム内でもあのコンビで勝ってほしいというのがあったし、あれで2人とも肩の荷が下りた。一つ大人になれたのかな」と目を細め、「全英は(キャディーを務めた)僕とふざけていただけですから。あそこで人生は変わったけど、彼女のゴルフ人生を考えるとプロギアですね」と強調した。

海外メジャー全制覇へ、青木コーチ「前人未踏のものならチームで上を見てやれる」

 渋野はこの日の会見で感謝したい人を問われ、いつもの笑顔を浮かべながらこう答えた。

「多すぎる(笑)。私は『チームしぶこ』と呼んでいるんですけど、家族とか、応援団、コーチ、マネージャーさん、1年間担いでくれたキャディーさん、スポンサーさんもそう。地元の応援してくれる人たちもそう。そういう人たちがいなかったら全英以降やって来られなかった。感謝の気持ちでいっぱいです。

 ここまでの私になれたのは青木さんに出会ったから。たくさんのことを教えてもらったので、青木さんがいてくれたから今の自分がいる。ありがとうございます」

 チームしぶこの次なる目標は東京五輪。しかし、その先には壮大な“野望”があった。青木コーチは宣言する。

「次は五輪。もちろん、それは金メダルを目指す。獲ることをチームの目標に掲げた。まずは出場権を獲ること。あとは(海外の)“メジャー全獲り”。それは今後10年ですね。近い目標にして燃え尽きてもしょうがないですし、前人未踏のものの方がチームとして上を見てやれる。そのために小さな目標を少しずつクリアしていきます」

 来年はメジャーを中心に海外ツアーにもスポット参戦する。海の向こうでも、再び輝きを放つのか。シンデレラストーリーは、長く続きそうだ。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)