機会学習をしたAIは様々な画像を自動で生成できるようになりました。その精度はビックリしてしまうほど高度で、存在しない人物画像を生成するウェブサイト「This Person Does Not Exist」がその画像のリアルさと、実際には存在しない人間の顔という不気味さでインターネットで大きな話題になったのを覚えている人も多いでしょう。

 

そんななか、AIが作った「存在しない人間の画像」をデザイン分野で使えるようにするサービスが始まりました。それが、デザイン素材を無料で使えるサイト・Icons8による「Generated Photos」です。AIによって生成された10万人の顔写真が無料で公開されているんですね。同サイトには次のメッセージがあります。「これらの人たちは本物ではありません! 著作権や配布権、権利侵害といった問題は過去のものとなるでしょう」

この10万人の画像はプレゼンテーションやウェブデザイン、アプリデザインなどでの使用を念頭に置かれています。ウェブサイトやアプリを人物画像を使ってデザインする際、写真選びは大切な仕事。デザイナーが自分で写真を撮影するスキルや装備があれば良いですが、それがないのが普通でしょう。となるとストック写真などを購入して使うことになるわけですが、写真によってはかなり高額であったり、使用頻度や量に応じた支払いが必要だったり、使用期限があったり。また、どれだけ探しても自分のデザインに必要なタイプの人間の写真が見つからないということもあります。

 

Generated Photosの写真は高画質で、プロの撮影のような照明で統一されているのが特徴のひとつ。もちろんモデルが10万人もいるわけですから、人種・年齢・性別・髪型・表情と幅広い選択肢が用意されているわけです。米テクノロジー系ニュースサイトのVergeによると、Generated Photosの開発者たちは69人のモデルを使って2万9000枚の画像を撮影し、それらを用いながら3年かけてAIにアルゴリズムを学習させたとのこと。

Image by Generated Photos

 

Generated Photosの画像は誰でも手軽に無料で使用することができますが、条件が1つだけあります。それはキャプションに「Generated Photos」とリンクを付けること。これにより、写真を見た人が画像に疑問を持てばGenerated Photosについて知ることができます。一部の画像には歪んでいるものや目の焦点が合っていないものも存在します(下の画像)。これらはパッと見ただけで人工生成されたものだと分かるでしょう。

Image by Generated Photos

 

現在、Generated Photosの画像を使うためには、まだGoogle ドライブで共有する方法しかありませんが、年齢や人種、性別などを選んで写真をピックアップしてくれるインターフェースも開発中とのこと。これが完成すれば多くのデザイナーにとってありがたいツールとなるでしょう。

ソーシャルメディアでは「3Dモデリングのレファレンスに便利かも」「ビデオゲームの開発にいいかも」と、このサービスを喜んでいるデザイナーの声も多く見つかります。しかし、そのリアルさに対して「不気味だ」というコメントもたくさんあり、そのなかにはAIによるリアルな画像生成が今後ますます発展し、簡単に応用できるようになることで、この技術が悪用されてしまうことを危惧する人たちもいます。海外メディアの論調の多くも「こういったソフトウェアは悪用される可能性がある」と警戒気味。

 

最近では偽の顔を検出するAIツールも開発されていますが、Generated Photosのことを考えると、どの程度フェイク画像は許されるべきなのだろうかと考えてしまいます。このようなAI技術によってデザイナーやクリエイターの創造性や芸術性が高まるだけならいいのですが……。

 

99%バレる! Adobeが「偽の顔」を検出するAIツールを開発