KDDIが5Gで目指すのは、超リアルな「遠隔」世界! 低遅延で実現する遠隔作業が世界に与えるインパクトとは

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いよいよ5Gのプレサービス開始まで1カ月余りと迫ってきた。

KDDIでは2019年9月、時期的には「ラグビーワールドカップ2019」の開催にあわせる形で、5Gのプレサービスを開始する予定だ。

5G(ファイブジー:5th Generation)とは、移動体通信における第5世代の通信システムのこと。
・高速かつ大容量
・低遅延
・多接続
が大きな特徴とされている。

5Gは、実際に、我々の生活をどのように変えていくのだろうか?

・5Gで目指す世界
・5G時代に向けた取り組み
サービス開始前の各社に迫ってみたい。

第2回はKDDIでビジネスIoT(Internet of Things)を担当する
・ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部長 原田圭悟氏
・ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 サービス企画3グループリーダー 武内康知氏

お二方に、KDDIの5Gへの取り組みや、5Gで注目する点などの話を聞き、5Gのビジネス用途やIoTソリューションの世界に迫っていきたい。


■回線だけのビジネスモデルからの脱却へ
前回のNTTドコモ編では、一般的な携帯電話の利用や、我々の身近な生活の変化について、アナログ通信(1G)から現行の4Gについて説明したが、ビジネスの分野においては、どのような進化を遂げてきたのだろうか。

KDDI内の「ビジネスIoT推進本部」は、2016年4月から活動を開始したという。

当初はM2M(Machine to Machine)の時代で、回線ビジネスが中心だった。
モノにモジュールを付けて販売はしていたものの、あくまでも回線販売が中心のビジネスモデルだ。
当然、クラウドサービスや分析などはやっていなかったそうだ。

次のステップとして「KDDI IoT通信サービス LPWA」という低価格で省電力が特徴のサービスをスタートした。

しかし、ビジネスIoT推進本部内では「危機感」を抱いていたという。


ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部長 原田圭悟氏


原田圭悟氏
「回線以外にもデバイス、モジュールからクラウド、分析までを一括して提供していかないと。回線ビジネスだけでは儲からないので、事業が立ち行かなくなるのではないかっていう大きな危機感からスタートしています。」

回線を売るだけのビジネスモデルではなく、
収集したデータを活かし「新しい価値」の提供。
これを成し遂げなければいけないという強い思いがあったそう。

原田圭悟氏
「2016年4月からクラウドなり、分析なり、デバイスだったり、パッケージだったりっていうサービスを拡販させていただいた。

我々は、その延長に5Gを捉えています。
そういったモノにつけるIoTの超高速版ってどんなことができるのだろう。

これを改めて考えたときに、回線以外のビジネスが中心になるのではないか?
という読みがあり、そこでトータルでできることをずっと進めてきている状況です。」

なお、KDDIのビジネスIoT推進本部では、
・駅のトイレの空室状況が分かる「トイレIoT」
・防災分野におけるドローンを活用した「スマートドローン」
これらをはじめとした、IoT分野での活用事例、検証事例を公開している。

IoT分野の事例も、現在は、あくまでも4G回線を使ったサービスだ。
そのため、今後「5G環境でどう変化、提供できるのか?」
このことを検討し、準備を進めている段階だという。


■5G技術における低遅延は、世の中を変える
法人向けビジネスを展開するビジネスIoT推進本部では、5Gのどこに注目しているのだろうか。

原田圭悟氏
「非常に世の中を変えそうだなっていう意味では『低遅延』のところに着目しています。これまでの携帯電話は、
最初に電話ができようになって、
その後、離れたところでメールができるようになって、
そして、画像が送れるといった進化をしてきました。

けれど、いよいよ低遅延になってきますと、
離れたところで『作業ができる』
このようになってくるという点に注目しています。」

今までの通信は、離れた場所にいる人が、
携帯電話、スマートフォン、パソコンなどの機器を使って、
「コミュニケーション」=「連絡」ができるものだった。

逆に言えば、離れた場所からでも
コミュニケーション=連絡はできるが、
「離れたところの作業ができる」
こういった物理的な距離を克服することはできていなかった。

しかし、「低遅延」かつ「大容量」の5G通信が実現すると
「離れたところの作業ができる」ようになるという。

つまり、「リアルタイムな遠隔操作」である。
現在の我々がイメージしている遠隔操作よりも、はるかに繊細かつ正確で、リアルタイムな遠隔操作が実現できるようになるのだ。

原田圭悟氏
「センサーの技術を使うことで、遠隔でニオイや振動も伝達できます。このような技術の組み合わせで、低遅延による遠隔の操作が実現できるのではないかと思います。

日本の問題でいうと、今後少子化になっていって、ベテランの作業員の人が大きく減っていって、わずかな人で全国の色んな作業をやらなくてはいけなくなる。

そんな風な世の中になってくると思うのですが、そのときに『5Gの低遅延』というのは、離れた場所での作業や問題を解決してくれる可能性があります。
少ない人数で大きな生産性を生み出していくのに、大きな効果があるのではないかと考えています。」

実際に今、製造業からの声が強いのが、製造業の課題である「無人化」だという。
現在、製造業の多くが全国に工場を配置している。そのオペレーションのため何人かの人材を配置している。この人材をいかに「ゼロ」に近づけて、オペレーションをしていくかというのが課題なのだ。

原田圭悟氏
「現場の人材をほぼゼロにできたとしても、現場ではやはり色々なことが起こるので、リモートでロボットを操作してカバーしたりとか、なにか起こってしまった異常を応急処置したりとかしないといけなくなる。

そういった際、遠隔で低遅延でリアルタイムに現場の様子が分かり、わずかなレスポンスもリアルに感じながら正確な作業ができるというのは、重要なことであり、非常に日本の世の中にインパクトを与えるのではないかとみています。」

ロボットを利用した遠隔操作や自動運転といった分野は、KDDIだけでなく、ほかのキャリアやベンダーも取り組んでいる。
スマートフォンやパソコンを利用した通信に比べると、身近には感じないかもしれない。しかし産業の基盤を支える分野の変革は、間違いなく我々の生活を大きく変える。
5G時代における遠隔操作、遠隔サービスは、我々の生活においても必須のサービスやソリューションとなりえる可能性は大きいといえるだろう。

原田圭悟氏
「5Gになると、よりリアルに現場で起こったことが見えますので、現場での変化を伝えていくことができます。

例えば、踏切で詰まってしまった電車とか、カメラで映像を見て、AIで分析するなんていう利用シーンですが、今までは、AIを備えたカメラを現場に置くなんてことはよくある事例です。

しかし、5Gになると、クラウドにひとつAIを置いて、現場は安いカメラを置くだけでいいのです。そういった、あらゆる現場で起こっている異常な事態をクラウド上のAIで分析することができてくる。

5Gによって、より動画像の変化まで捉えられてくるのは、注目する利用シーンかと思います。」


■5G時代は手元にモノが必要ない! そんな世界になる?
KDDIの5Gのプレサービスは9月から開始する。
まずは、パートナー企業と共に「東大阪市花園ラグビー場」(大阪府東大阪市)や「豊田スタジアム」(愛知県豊田市)で、
・高精細な映像の伝送
・警備ソリューション
こうしたスタジアムソリューションも展開する予定だ。

では、個人向けには、どのような5Gのサービスや世界が広がっていくのだろうか。

原田圭悟氏
「今まで、一般の方が例えばサッカーの試合であったり、ラグビーの試合であったりを見るときって、どうしてもテレビカメラが映せる決められた映像しか見られなかった。

それが、5Gの力を使うと、タイムスケールもそうですし、角度もそうですし、見られる画像が目の前で好きなタイミングで再生ができてきます。」

これまでは、放送局が見せる一方的なシーンや選手の映像しか見ることができなかった。
しかし5Gの世界では、自分が見たい、好きなシーン、好きな選手、好きな角度、好きな場所から見ることができる世界になるという。

これが本当に実現すれば、自宅でスポーツやライブ中継を見る世界が、スタジアムやライブ会場で見る以上の臨場感とリアリティを体験できる世界に変わる。


原田圭悟氏
「ほんとにエンターテインメントが、個々のかたの望まれるようなものが見られる、そんな時代がやってくるのではないかと思います。

やはりこれまでは、大容量のデータを一度に多くの人がダウンロードしたりとか、もの凄い勢いでもの凄い数の編集をどんどんしていったりっていうのは、技術的に難しかった。

でも、5Gを開始するタイミングで、色々な技術の準備が整ってきましたので、個人のかたの好きなもの、好きな場面、好きな角度からというのが、本当に見られるようになっていくのではないかと思っています。

コンシューマーのかたにも様々な利用シーンが想定されますが、このあたりは目に見えて分かりやすい利用シーンかなと思います。」

5Gの時代には、
通信と技術の双方が進歩したことにより、これまで想像でしかなかった体験ができるようになるかもしれない。

さらに常識を覆す、もうひとつのキーワードが、
「手元にモノがなくなっていく世界」
これが広がっていくかもしれないという。


ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 サービス企画3グループリーダー 武内康知氏


武内康知氏
「5Gは、アプリケーション的にはxR(ARやVRの総称)や、ゲームなどの相性がいいと思っています。

『手元にモノがなくなる』
これが、どんどん進むと思っていまして。今までだとレンダリングや高速な計算などを、手元にタワー型のPCを置いて実現しているケースもありました。
そうした個人のみなさんも、今後は、手元にはなんらかのディスプレイ(表示機能)とコントローラ(操作機能)だけで、クラウド上のGPUを動かして、というゲームの世界とか実現できるのではないかと思います。」


■3Gや4Gの常識や思考は通用しない? 5G普及への課題
5Gを普及させるための課題は、
・サービスエリア
・料金
・端末
これらのそれぞれにあり、ひとつずつ解決していっているのだとか。

武内康知氏
「エリアも3G、4Gとやってきた感じで、人口密度にあわせて基地局をどんどん打っていくものじゃないところもあるのです。」

5Gは、これまでのように、単純に通信速度が速くなるといった世界ではない。
IoTのような使い方が増えていくなか、適材適所でビジネスを作っていかなくてはならないケースも増えてくるのだという。

武内康知氏
「5Gでは、丁寧なエリアの作り方をしていかなくちゃいけない。
特に法人ユースだと、人口密度は低いけど、地元には大企業の大きな工場があるとか、そういうケースもたくさん出てくると思います。

今までの規定路線のところもあると思うのですが、考え方を変えたほうがいいところがあるというのは、多分に痛感しています。

スマホやタブレットのための、電話のための通信だけじゃ、もうなくなる。
そう思っています。

様々なデバイスに通信させるってことになると、
やはり利用シーンもそうですけど、エリア展開も変わっていきます。」

5G時代は、法人向けビジネスのビジネスモデルをしっかりと組み立てていかないといけないという課題もある。

原田圭悟氏
「現場のオペレーションや悩みごと、お客様からは本当に困っている内容をお伺いして、一緒に知恵をあわせながら、お客様自身のビジネスを大きく伸ばす方法を組み立てていくのが凄く重要です。

これは今までと変わらず5G時代になっても、やっていかなくてはいけないと思っています。

ニーズと、あるべき姿、お客様のビジネスが伸びていく姿を、早い段階で青写真が作れると良いかと思います。」

なお、料金については、現行の4G向けにおいて、既に7月26日から「auデータMAXプラン」という、通信制限を設けていないプランを提供している。

原田圭悟氏
「料金についても今、コンシューマーや法人も含めて検討しているところです。
細かい設定までは申し上げられないですけど、安心してぜひお使いいただければなと思います。」


■5GにおけるKDDIの強みとは?
実は個人向けのサービスの詳細は、まだまだ検討段階だという。
5Gに対応した端末などを含め、今後、本格サービス開始までに様々な発表がされていくという。

では、現時点で、
KDDIならではの強み、他社との違いとは、どういったものがあるのだろうか。

原田圭悟氏
「他社との違いで大きいところは、トータルでソリューションを出していくというところで、デバイスから分析までを一括で提供するといった点は特徴かと思っています。」

武内康知氏
「KDDIの法人部門では、固定もモバイルもアカウント営業が、すべてワンストップで提供してきた歴史があります。

5Gをただのモバイルの延長だと捉えていません。
例えばWi-Fiの置き換え、固定回線の置き換え、このような発想もできるのが強みだと思っています。

KDDIの法人営業は、固定もモバイルも知っているという強み、さらに最近はIoTも知っているという強みがある。」


武内康知氏


KDDIでは、5G時代はネットワークレイヤーからプラットフォームレイヤーに競争軸がシフトすると考えている。

パートナーとの協創基盤を始動させて、新しい価値とリカーリングモデルを創出していくという。3年後には約1800万のIoT回線契約を見込み、ビジネスセグメントの売上を1兆円規模にする目標を掲げている。

一方、コンシューマー向けには、今後もスポーツ×5G、ドローン×5Gなどエンターテインメントの領域においても様々なイベントを準備していく。


■秒読み段階にはいった5Gの世界
技術的に5Gで実現できる世界観とは、どういうものだろうか。

原田圭悟氏
「遠隔旅行といったものも恐らく始まるのではないかと言われています。
あたかも自分が遠隔地で旅行しているかのような体験ができる。そんな世の中がやってくるのではないかと思っています。

今までは、双方の状態を伝え合うことまでが限界でしたけど、遠隔にあるものの状態を変えることができるという世界が、本当に目の前までやってきている。

遠隔での作業は世界的にも注目されています。目に見えて我々にインパクトを与えるのではないだろうかと思っています。」


原田圭悟氏


現時点では、KDDIのコンシューマー向け5Gサービスは、詳細未定のものが多いが、お二方の話しぶりからは、5G時代のサービスや技術の開発は着実に進んでいる確信と自信が伺えた。

今後、5Gになると、どのようなサービスや技術が世の中に出てくるのか注目していきたい。


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執筆:2106bpm