マウスの胚が臓器へと変化する様子を映像化することに成功
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ES細胞やIPS細胞などの発見から、細胞から臓器を作る研究が盛んになっています。そんな中、受精後に細胞が分化して胚から臓器へと変化する様子を映像化する「Adaptive light-sheet microscopy」という技術が現れました。
In Toto Imaging and Reconstruction of Post-Implantation Mouse Development at the Single-Cell Level: Cell
New Microscope Offers 4-D Look at Embryonic Development in Living Mice | Janelia Research Campus
https://www.janelia.org/news/new-microscope-offers-4-d-look-at-embryonic-development-in-living-mice
受精後に初期の細胞がどのように分化していくのかを理解することは、幹細胞を使って特定の臓器を生み出す再生医療などへの応用が期待されるため重要です。そこで、細胞が分化していく様子をイメージ化する技術が長らく研究されてきました。Howard Hughes Medical Instituteのジャネリア・ケラー博士のチームは、すでに2008年にゼブラフィッシュについて、2014年にハエについてそれぞれ胚が分化する様子を撮影することには成功していました。しかし、これらの生物の胚は単純で外から観察しやすいこともあったのに対して、哺乳類の細胞分化を撮影することは困難だったとのこと。
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マウスの胚の場合、そもそも実験室の条件下で胚を死なせることなく成長させること自体が難しいだけでなく、受精から48時間で初期の器官形成が始まるなど、ハエに比べると成長の速度が速いため、成長の様子を撮影するのは困難でした。また、胚は成長に伴って絶えず動き位置が変わるので、手動で胚にフォーカスを合わせ続けることは不可能でした。
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この難問をクリアするために開発されたのが「Adaptive light-sheet microscopy」と呼ばれる特別な顕微鏡です。マウスの胚が光に敏感なため光をシャットアウトでき、気圧や温度を正確に制御しつつ、滅菌処理が可能だとのこと。
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さらに、動き続ける胚を細胞レベルで追い続けるために、機械学習による画像認識技術を取り込んだ成長予想アルゴリズムが採用されているという大きな特長があります。
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Adaptive light-sheet microscopyによって、細胞が臓器になるまでの様子を映像化する様子は以下のムービーで確認できます。
New Microscope Offers 4-D Look at Embryonic Development in Living Mice on Vimeo
これがAdaptive light-sheet microscopyで映像化したマウスの胚。まだ単一の細胞の状態で、これから分化し続け臓器へと変化していきます。
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Adaptive light-sheet microscopyで作成された映像は、細胞が分裂し続け成長していく胚の様子が完全にキャプチャされています。なお、マウスの胚は1週間足らずで6万個の細胞へと分かれるとのこと
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初期の心臓が鼓動を打ち始める様子をとらえるのにも成功。
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Adaptive light-sheet microscopyによって、受精して6日半から8日半から始まる、細胞分化にとって最も重要な48時間を映像によって知ることが可能になりました。
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Adaptive light-sheet microscopyでは2枚のlight-sheetが胚を照らして2台のカメラで10ミリ秒ごとに1つの画像を記録します。ケラー博士の研究チームは、胚の大きさと位置を正確に追跡するために、「TARDIS」と呼ばれる計算方法を開発したとのこと。約100万枚の画像から作成した計算ツールキットであるTARDISでは、4つの胚を時空間で整列させて個々の胚の発生データの差異を定量化することで、「平均的な胚」を仮想的に作り出したとのこと。「TARDISがなければすべての細胞を追跡するのに2〜3年かかるでしょう」とケラー博士は述べるとおり、Adaptive light-sheet microscopyの重要な技術要素になっているようです。
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Howard Hughes Medical Instituteは、Adaptive light-sheet microscopyを他の科学者の利用も許可する方針だとのこと。Adaptive light-sheet microscopyによって、細胞がどのように臓器へと進化していくのかのメカニズムの研究がさらに進歩することが期待できます。